2007年10月28日日曜日

5分でわかる医療費の仕組み

今日は、わかっているようでよくわからない診療報酬の話。

政府は国民皆保険制度は世界に誇れる素晴らしい仕組みで、なんとしても維持していかねばならない、という方針のようですが、先進国の中でもっとも医療に財源を使わない国が日本なのです。さらに、毎年医療費を現場の声とは関係なく削減し続けているわけです。もともと年金制度も含めて、高齢者人口が数%の時代に考えられた方法ですから、現代ではとうてい維持できるはずがないやり方なので、そのために私たち医療機関はあたふたしているというわけです。

健康保険は、行った医療行為に対してのみお金が支払われますので、病気ではないもの、つまり予防的な医療は保険適応にはなりません。インフルエンザの予防接種が自費なのはそのような理由によります。しかし、病気の治療費よりも病気にならないようにする方が医療費は少なくすむという考え方から、最近はメタボリック症候群をやたらと宣伝して、病気にならないようにしようという作戦が目立ってきています。

また、自費診療と合わせてすることを混合診療と云って、一部のものを除いて禁止しています。しかし、今の医療行政では自費を認めていった方が財源的には助かるというジレンマも抱えているのです。美容のような病気の治療ではないものは別として、保険適応がない治療法を自費で行うところがしばしばあります。何故、保険適応がないのか? 学問的に有効性が認められていない、あるいは意見がわかれている。新しい先端医療のため審議中。まったくのインチキ医療。その中のどれかは、なかなか一般の方にはわかりづらい。特に命にかかわる治療は、患者さんの藁をも掴む思いに付け込むようなものも、ないわけではないのでよく考えてください。

自営業の人は自治体の国民健康保険、会社勤めの方は社会保険に必ず加入します。何か病気になって医療機関に受診すると、大多数の方は3割の自己負担をします。つまり7割を保険組合が払ってくれるというのが基本的な図式です。医療機関は7割分を毎月保険組合に請求するのですが、これを支払基金というところでチェックして、問題があると却下されてしまいます。OKになると2ヵ月後に、支払ってもらえます。請求書は支払基金から保険組合にまわりますが、ここでももう一度チェックが入り、忘れた頃に、やっぱり払わないといわれてしまうこともあります。

例えば、初めて受診すると診療所では、初診料2700円とうちの場合電子カルテ加算30円がつきます。再診の場合は710円と外来管理加算の520円。この中に基本的な診察料金、血圧測定などの簡単な検査、そして判断をして治療方針を説明することなどの料金が含まれているわけです。偉い教授でも、研修医でも値段は一緒。医者としての技術や経験は、まったく反映されません。電話で質問をしてきた場合も電話再診という料金が発生しますが、あとであの時電話したでしょう、といってお金を貰うわけにもいかないのでうちではいちいちつけてはいません。一ヶ月以上再診がないと、次のときは再初診といって初診と同じ扱いになります。ただし、リウマチや痛風のような慢性疾患は、よほど間があかない限りは毎回再診です。

整形外科では初診ではたいていレントゲンの検査をします。少なくても2枚、多いと6枚くらいの撮影をします。これが2000円~5000円くらい。リウマチの方ですと、場合によっては10000円くらいになることも珍しくはありません。血液検査をすると、やはり2000円~5000円程度かかります。

骨折の場合、レントゲンの透視をしながらずれを直したり、ギブスを巻いたりします。これは数万円かかることになります。切り傷などを縫うことになると2万円程度、という具合にいろいろなパターンに対してこまかく値段が決められています。

ですから、例えば関節リウマチの方が初診でくると、初診料+レントゲン+検査でだいたい1万円から1万5千円くらいかかり、自己負担は3割の方で3000円くらいから5000円くらいとなるわけです。

これを全部書いていたらきりがありません。要するに、医療費は確かに金がかかるということ。それでも、今の料金では医療機関は良心的にすればするほど黒字から遠のくといのが現実なのです。だから、高いから削減するのではなく、もっと予算をかけて安心して皆さんが受診できるようにしてもらいたいと考えてしまいます。マスゾエさんもタケシにいじられていた頃からすると、たいそう出世して国民の期待も大きいのですが、ニュースとして目立つ話題のことばかりに力を使わないで、こういう医療制度の根本的な部分を何とかしてもらえないかと切に思います。