2007年10月5日金曜日

Art Pepper Meets the Rhythm Section


ジャズはドラッグ無しでは成長していなかったわけで、暗いクラブとタバコの煙と酒とともに、多くの音楽家を高揚し、そして死に追いやった。Charlie Parkerはドラッグのためなら平気で友人を裏切った。Bill Evansは黒人中心の社会の中で白人として仲間に入れてもらえるためにドラックに手を出し、そして死ぬまで共にした。

Art Pepperも、ストレートで爽快なアルトサックスでWest Caost Jazzの人気スターにのし上がり、そしてドラッグで潰れてしまった一人だ。しかし、幸い友人たちの協力のもと復活。往年のファンを楽しませ、幸せな晩年をすごすことができた、数少ないミュージシャンである。

Meets te Rhythm Sectionは、1957年に当時最強といわれたMiles Davisのoriginal quinteのリズム・セクションほそのまま使って吹き込まれ、名盤紹介ではずれることのないペッパーの代表作である。
最初の You'd Be So Nice to Come Home to は数々のボーカルで有名なミドル・テンポの曲だが、マイナーな曲にもかかわらず、ペッパーのアルトはとても楽しそうである。続いてRed Garlandのシングル・トーンをころがすようなアドリブは、ボスのマイルスがいないことから大変リラックスしており、そのままPaul Chambersの安定したベースソロへ渡していく。そしてPhilly Joe Jonesとの軽い挨拶代わりのブリッジを経てテーマに帰ってくる。全編リラックスしたムードが漂い、全員が演奏を楽しんでいることがよくわかる。
それは真ん中のペッパーの十八番であるStraight Lifeで頂点に達し、走る走る。ペッパーの本領である、流れるようなフレーズがとどまることを知らずにあふれ出すのだ。それにしても名人チェンバースのアルコ・ソロはやはりいらない。最後のThe Man I Loveではアルトとピアノのユニゾンがテーマを呈示するところは、即席のグループにしてはよく練られていて面白い。

秋の夜長にかまえずに聞くことが出来て、ジャズの楽しさを伝えてくれるアルト・サックスのアルバムを1枚あげろと云われたら、文句無くお勧めするのはこれだ。