2008年3月15日土曜日

関節リウマチ2008

関節リウマチの治療法は21世紀に入って劇的に変化しており、我々のような専門をうたっているものにも、ついて行くのは大変なことです。まして、インターネットの普及により、一般の方も簡単に様々な情報に接することができるため、正しい情報を選択していくことはきわめて重要なこととなっています。

昨年は診断上大変に有意義な抗CCP抗体測定の保健適応がなされ、日本で2番目に登場した生物学的製剤のエンブレル(エタネルセプト)の一般使用が解禁となりました。そして年末のエンブレル副作用報道の騒ぎまで何かと話題に事欠かなかった一年間でした。

しかし今年はさらに大きな話題があります。それは第3、第4の生物学的製剤の登場です。最近の厚生労働省の薬事審議会でアクテムラ(トシリズマブ)が承認され、さらにヒュミラ(アダリムマブ)も続いて承認される見通しとなっています。そうすると、おそらく夏頃に製品として市場に出回ることになる物と考えられます。

生物学的製剤とは、関節リウマチの病気で関節内で実際に骨破壊に強く影響しているサイトカインを攻撃する薬で、直接的な効果が期待できるわけです。2003年に日本で最初に登場した生物学的製剤はレミケード(インフリキシマブ)で、その絶大な効果はそれまでのリウマチ治療では考えられないくらいのものでした。

ただし、マウス型とヒト型の混合であるキメラ型とよばれる性質から薬を無効にしてしまう中和抗体と呼ばれる物を体内に作ってしまう可能性があり、そのために免疫抑制効果のあるメソトレキセート製剤を服用し続ける必要がありました。また、数時間かけての点滴で行うため、患者さんにも医療施設にも負担が大きかったことは否定できません。

ヒュミラはレミケードと同じ抗TNF-α抗体と呼ばれるものですが、完全ヒト型であることと皮下注射による投与が可能であることから、レミケードの欠点を大幅に改善した物といえるでしょう。もう一方のアクテムラはすでに別の自己免疫性疾患の治療薬として使われており、やはり絶大な効果が認められています。こちらは抗インターロイキン6(IL-6)受容体拮抗薬という位置づけにあり、点滴での投与となりますが、ターゲットとなるサイトカインが今までの物とは違う(エンブレルもターゲットはTNF-α)ので、他の薬で無効だった方にも効果が期待できます。

今までながれからすると、いずれも新薬は専門医のいる施設が登録しての限定的な使用から始まり、使用する場合には厚生労働省への全例登録ということが義務づけられることと思います。そして1年間程度の期間を経て、一般使用が許可されるということになると思われますが、この期間に副作用問題を含めた最低限の使用に際してのノウハウが蓄積されていくことになるわけです。

自分のクリニックもリウマチを専門としてやっているからには、これらの新薬も使用できる体制はとっていくつもりですが、この全例登録期間は慎重な対応を求められるので、今後様々な情報を取得していく必要があります。