2008年6月22日日曜日

しに方講習会

・・・というものがあってもいいのでは、とふっと思ったことありません?

自分は医者ですから、基本的には患者さんが死んでは困るわけで、たとえば安楽死のような問題を医者が積極的に援助することには疑問を持っているわけです。

まぁ、ここでは安楽死の問題を話したいわけではありません。自殺の問題です。過去に自らの行為で病院に運ばれてきた人を治療する経験を幾度となくしました。でも、その時に思うのは、何で死にたい人を助けなければならないのか、という疑問でした。

もちろん、たいていの場合には、退院する頃には、何て馬鹿なことをしたと後悔している事が多いので、命が助かって、もう一度何かに向かっていくことができることは、大変に意義があることに違いはありません。

しかし、実際に治療に当たる立場では、こちらも人間ですから、生きたい人を治療するのと死にたい人を治療するのではモチベーションに差が出るのはやむを得ない。

だったら、きっちり死ねる方法をきちんと講習してくれる会があってもいいんじゃないの、と思いたくもなります。実際に、自殺マニュアルというのが一時物議をかもしました。しかし、今ではネットでいくらでもその手の情報が手に入ります。今年流行った自殺法しかり。数年前に流行った練炭もそう。さらに、一緒に死にましょうというサイトまである始末です。

実際、手首を切ってもよほど周到な準備をしていなければ死ぬことはまずありません。夜中に整形外科医がぶつぶつ文句を言いながら、切れた血管や神経や筋肉を縫合するだけです。雪山で綺麗に死にたいなんていうと、捜索隊が出て下手すると数千万円とかの費用を請求されるでしょう。

いずれにしても、楽な死に方なんてないし、残された者に迷惑がかからない方法もありません。普通の感覚では、自ら命を絶つことより勇気が必要なことは、きっと無いでしょう。それだけの勇気があれば、何でもできるはずと考えたいものです。

行動を起こせば、周りに迷惑をかけ、助かった場合は肉体的、あるいは精神的に大きな傷を持つわけですから、最初からやらない方がいいに決まってます。ですから、死に方講習会というのは、けっきょく生き方講習会と同じなんでしょうね。