2008年10月25日土曜日

医療問題の断片

またもや、周産期医療の問題点がメディアを賑わせることになりました。

救急医療の現場を少しは知っている立場からは、急患搬送依頼を断った病院を頭から非難することはできません。

もちろん、産科救急に限らず、限られた人員ですべての救急に対応することは不可能です。どこの病院でも、理想と現実のギャップ、あるいは医師としての使命と患者さんからの要望の板挟みの中で、必死に踏ん張っているんだと思います。

今回の報道の中で、不思議なのは最終的に何とか搬送を受け入れた病院が、矢面に立って非難されているという点であり、大変象徴的ではないかと思います。

その病院にもいろいろ問題はあるのでしょうが、まったく断ったきりの病院が6カ所あるのに、それらの病院に対してはほとんど問題にあげられていません。中には、日本でももっとも幅をきかせている大学病院も含まれています。

結局、努力をしても最終的に最良の結果を出せなかったことで、またもや医療批判が一つの病院に集中していく流れが見て取れるのです。

医療には100%はあり得ないわけですが、いつでも100%が期待さているという厳しい社会状況はますますエスカレートしていくように思います。

もう一点、疑問に思ったことがあります。東京は特に大病院が集中し、今回のような産科救急に対してもネットワークが完成しており、どこで受けることができるかすぐにわかるシステムが完成していると報道されていました。

しかし、今回はそれが機能していないことが判明したわけですが、このようなシステムはすでに40年近く前にも、自分の内科開業医だった父親の時にもあったんです。

Captainシステムという名前だったと思いますが、特殊な電話端末に患者紹介情報を表示するようなものでしたが、父はまったく情報が出てこないので使えないといっていました。

情報伝達媒体がいろいろ変わっても、結局結果は同じようです。東京の産科救急のシステムは各病院の医師が日に最低2回情報を更新するというものだそうです。

しかし、ただでさえ仕事が膨大化している医師に情報管理をさせていては形骸化してしまうのは当たり前です。一定の時間にいつでも閑を作ることはできないからです。専門に情報を一局的に管理するところがないと実働的なシステムにはならないのではないかと思います。

もしかしたら、今回の事例も医師不足という言葉で片付けられてしまうかもしれませんが、もちろんそんな簡単な話ではありません。あまりにさまざまな問題を含んでいることを、医療に携わるものとして深刻に受け止めたいと思うわけです。