2009年1月29日木曜日

政治のニュースにうんざり

医療は景気に左右されない、ということが言われていましたが、さすがに最近は皆さん受診控えをしているような雰囲気があり、誰に聞いても患者さんが減ったと言います。

もちろん、正直にいいますが、クリニック経営者としては大変困る。もちろん、自分も含めて世の中に病気が嬉しい人はいないわけで、医者という職業は、ある意味他人の不幸で生活しているという側面があることは否定できません。

このところの診療報酬(健康保険で病院にかかるときの国が決めた定価)の連続的な引き下げは、多くの病院・診療所に大きな打撃を与えているわけで、余裕のない切羽詰まった診療が、いろいろな問題につながっていることは周知の事実。

高齢化社会が迫ってきて、このままでは自民党が世界に自慢する国民皆保険制度が崩れてしまうと言われ、1999年に強引に介護部分を医療保険から切り離し、見かけ上の医療費の抑制を実現しました。

ある意味では、そのような背景のもと根本的な改革が必要とされていたことは事実です。そこで、小泉氏の登場です。小泉改革はみんなに我慢を要求していましたが、郵政問題の例を出すまでもなく、意見を2極化することからはじめました。賛成か反対か。反対の者は切り捨て。確かに、そのくらいの強引さがないと仕事は進まないのかもしれません。

今だから言うわけではありませんが、自分はこれには大きな疑問を持っていました。白か黒か、善か悪か、その時代の価値観の中でその両者が存在することは間違いない。しかし、どっちつかずの中途半端な灰色は別として、白っぽい青、とか黒っぽい黄色のようないろいろなパターンが存在することを忘れてはいけない。

いろいろな価値観が存在する以上、白といってもいろいろな白があるはずなのです。民主主義であるからには当然の話。まさに、すべての集団の価値観が一つしかなくすべてが白に統一される、その究極的な状態が独裁国家ではないかと思います。

医療に関していえば、根本的に破綻しかけている保険制度を維持してとにかく予算の枠だけを下げるだけという、まさに見かけだけの改革の結果は、今や国民全体に大きなつけをまわしたと言える。今言われている多くの医療問題のかなりの部分は、小泉改革により始まったり、あるいは悪化したと言うと言い過ぎでしょうか。

この物事を2極化する見方は、前アメリカ大統領のブッシュ氏がおそらく先輩なんでしょう。アメリカの世界統一路線の片棒を担いだ小泉氏は、ミニ・ブッシュと言えなくもありません。

オバマ新大統領の就任演説で、物事の多様性、様々な価値観を認めた上で困難に立ち向かっていこうという主旨が出ていました。これはブッシュ氏の否定であり、アメリカが変わるのではないかという期待感をアメリカ国民だけでなく、世界中の人々に抱かせるに十分だったように思います。

それに比べて、今の日本の現状はあまりにお粗末。政権与党は小泉改革の悪かったところを整理して、次のステップへ前進するかと思えば、単に時間を元に元に戻しているだけ。野党も、このチャンスに、いつあるかもわからない選挙に向けての与党批判に終始している。自分たちが政権を取れば、どんな日本にしたいというアピールが伝わってこない。

首相が漢字を読めるかなんてことを、国会でうだうだやっている場合じゃない。内閣の中から、首相はやる気がないなんて意見が漏れてしまう現状をよく考えないといけません。自分のこどもたちの時代、さらにその下の時代と問題を大きくしないためにも。