2009年3月6日金曜日

リウマチ治療の値段

関節リウマチ治療の最新の動向は、生物学的製剤にあるといっても過言ではありません。

リウマチの内服薬は湧き水の出口を必死に押さえて、少しでも川への流出する水量を減らそうとしている薬。実際は、自分の関節に対してアレルギーを起こしてしまう異常な免疫反応を抑制することにあります。しかし、湧き水はあちこちから出ているので、完全に押さえきることはできません。

生物学的製剤は、関節内で実際の病気を進めているサイトカインをブロックする薬。言ってみれば、川をせき止めて、海への流れだしを押さえ込んでいるような感じでしょうか。海への流出量を減らすということを目的とするなら、生物学的製剤のほうがより効果的といえるわけです。

できることなら、ほとんどのリウマチ患者さんに使いたいところですが、まだそういうわけにはいきません。その理由の一つには、保険診療のきまりがあります。現段階では、第一選択で使用することはできません。それより、問題なのは薬の値段。

日本で最初に発売されたインフリキシマブという薬は1本約11万円。通常の体格の方で、2ヶ月に1回点滴で2本使用するので、患者さんの窓口での支払額は3割負担の方で6万円を超えてしまいます。月にかかる医療費は平均すれば、3万数千円となります。

次に使えるようになったエタネルセプトは、皮下注射で1本1万5千円。これを週に2回使いますから、月にかかる金額はだいたい同じくらいになるわけです。去年、発売されたアダリムマブやトシリズマブについても、ほぼ同額の医療費がかかるのです。

高額療養費制度というのがあって、ある一定額を超えると自己負担は打ち止めになるのですが、国民健康保険の場合で月の自己負担額を8万円程度を限度とするものです。これだけの額を外来で使うということは、現実的にほとんどありません。ですから、実質的には意味のない制度といわざるを得ません。

そうは言っても、後発の2つももうじき1年たちますので、そろそろだいぶ情報もそろってきていますので、だんだん広まっていくと思われます。うちのクリニックでは先の2つは積極的に使用する体制をとっていますが、新しい物も機会があれば使用できるように準備しています。

患者さんのニーズに合わせて、これらをうまく使い分けていくことが大切です。特に少しでも少ない量でコントロールをつけることができれば、患者さんの経済的負担を減らすことができますし、また副作用のリスクも引き下げることができるので、医者としてしっかり考えたいところです。