2009年12月6日日曜日

A.S.Schic / Villa-Lobos Complete Piano Works

クラシック音楽を楽しむときの悩みは、過去の作品ですから作曲者の数や曲目の数には限界があるということです。

基本的には新しいものはないわけで、このあたりは落語の場合と似ていますね。古典落語と言われているものは無限ではなく、落語家の数にも限界があれますから、次から次へと新しい噺を楽しむわけにはいかない。

そういう場合は、幅が広がらずにどんどん深みにはまっていくしかないわけで、これがいわゆる「マニア」とか「おたく」と言えるファンを増やす原因になっているんでしょう。

でもって、クラシックの話に戻りますが、どうあがいてもベートーヴェンが作曲したソナタは32曲。世紀の発見があれば別ですが、どうがんばっても33曲目はないわけです。そうすると、いろいろな演奏者の演奏を聴いて、演奏解釈の違い、使用するピアノの音色の違いなどで楽しみ続けるしかないわけです。

もっとも、世間ではあまり評判になっていない作曲家は山ほどいるわけで、誰でも知っている作曲家以外の曲を掘り起こし始めたら、そうとう長い間楽しめるはずです。

ただ知られていない作曲家というのは、正直言って大多数は箸にも棒にもかからないような人が多いわけで、わざわざ一生懸命探してみてもがっかりすることが多い。

特に20世紀の作曲家については、挑戦してもたいていめげることが多いので、基本的にはあまり手を出さないようにしています。

自分にとってはクラシックは主にヨーロッパのバロック~古典~ロマンの期間の中でだいたい収まっているわけで、現代のやや抽象的な部分はどうしてもなじめないわけです。

それで、ヴィラロボスですが、20世紀の、さらにブラジルの作曲家という、自分にとってはかなり異色の存在。前に代表曲の「ブラジル風バッハ」を取り上げましたが、弦楽四重奏も楽しんでいます。

そして、今回紹介するのはピアノ独奏曲全集。演奏しているのはヴィラロボスと直接親交があった女性ピアニストで、数種類存在する全集の中でも一番評価が高そうです。

さすがに、いかにも現代作曲家らしいやや抽象的な曲想もありますが、多くはロマンティックな作品で聴きやすい。とろこどころにいかにも南米っぽい雰囲気もちりばめられ、けっこう楽しめました。

ヴィラロボスの作曲した曲数は膨大で、ここにはまりだしたら相当長い間楽しめる。時に、ヨーロッパの伝統の鎧を脱ぎ捨てて、肩の力を抜いて「こんな音楽もあるんだ。世界は広い」というのも悪くありません。