2010年2月6日土曜日

映画は変わったか?

映画とテレビドラマとをまったく別々のものと考えるのはこだわりすぎでしょうが、どうしてもテレビの方が短期間に作り上げ、粗製濫造の雰囲気があることはあながち間違った見方ではないでしょう。

テレビは基本的に決められたスケジュールのもとに制作が進行し、仮にいい題材が無いからと言って来期の月9が中止になったりはしないわけです。特に視聴率を上げると言うことが制作側の至上命題ですから・・・つまり、スポンサーの宣伝というように言い換えてもいいわけです。あくまでも、視聴者が金を出しているわけではありません。

一方映画は、作りたいと思うプロデューサーがいて、資金を集めてスタッフやキャストをそろえて作る。基本的には納得のいくまで撮影や編集が行われ、作品としての完成度を高めるために最大限の努力が払われているわけです。最後に金を払うのは、劇場に足を運ぶ観客ですから、観客の支持を得られなければ失敗作ということになる。

テレビでは「来週に続く」ということが可能ですが、映画はおよそ2時間の中で完結する世界。そのためには、脚本は練りに練って無駄なシーンは大変少なく、時には観客のイマジネーションに委ねられる部分も出てくる。そこから、映画から考えさせられる部分も膨らんでいく物です。

しかし、今やそういう違いが薄れてきています。メディア・ミックスという風潮が一般的になり、テレビドラマの続きを映画にしたり、映画のアウトサイド・ストーリーをテレビのスペシャルで放映したり。作品を作ることよりも、いかに人を動かすかということに意識が変わってしまったように思います。

つまり、映画の世界も粗製濫造になってきて、そのために話題作りに余年がありません。できるだけ話題になった原作、しかも邦画の場合はほとんどがマンガを用いて、今人気のあるタレント(あえて俳優でなくてもいい)を起用して、さらに有名アーティストに主題歌を歌わせる。成功した題材では、矢継ぎ早にシリーズ化して、さらに話題が冷めないうちにあっという間にDVDを発売。

映像作家として信念を持って映画を作り上げていくプロフェッショナルはいなくなったのでしょうか。タレントが映画を作ったと言って、新たな才能みたいに騒ぐだけでいいんでしょうか。これは見る側にも責任があることです。上っ面の話題性だけに引きずられる薄っぺらな見方ばかりをしているのではないでしょうか。

何か違うんじゃないかなぁ、と思わずにはいられない、最近の映画の活況を斜めに見てしまう年寄りの繰り言みたいなものですが、一映画ファンとして、何となく憂いを感じるこの頃なのでした。