2010年10月19日火曜日

天国から来たチャンビオン

1978年、アメリカ映画。監督と主演はウォーレン・ビーティ。

スーパーボールでの活躍が期待されていたアメフトのクォーターバック(司令塔ですね)が、交通事故で死亡。彼は天国に行くと、天使長(名優ジェームズ・メイスンが演じていました)から、死んだのは間違いと言われる。

下界に戻ってみると肉体は荼毘に付され、仕方がなく奥さんに殺された大金持ちの体に期限付きではいることに。そこで、お金を物をいわせて、ロサンゼルス・ラムズ(実在のチーム)を買い取って、自分がクォーターバックをすることにしちゃうという荒唐無稽な話です。

もとからのコーチにだけは事情を説明し協力をしてもらう。金持ちの企業が公害を発生させていると知ると、そこから撤退。抗議活動をしていた美しい学校教師(ジュリー・クリスティ)と恋に落ちる。

ここにさらに奥さんと不倫に関係にある自分の部下がからんで、どたばたコメディ的要素が加わって、もうにぎやかな映画になっています。

スーパーボールを目前して、そろそろ金持ちの体が使えなくなる期限がせまり、主人公は恋人にいうせりふ。

「心配はないよ。怖いことなんてないさ」

そして、分かれた直後に奥さんの陰謀で再び金持ちは殺される。スーパーボールがはじまり、試合の途中でラムズの正クォーターバックがタックルを受けて死亡。主人公は、彼の体に入ってチームを優勝に導くのです。

試合が終わって、スタジアムの通路を歩いていると、向こうから恋人がもとの金持ちのクォーターバックを探して歩いてくる。すると、通路の灯りが消され真っ暗になってしまいます。主人公にはもう、以前の記憶は消えています。彼は通路の出口の扉を開けながら、

「心配はないよ。怖いことなんてないさ」と、言うのです。

彼女は何かをかじるのでした。そして、肩を並べてスタジアムを後にするのでした。

・・・って、なんかロマンチックでしょう。単なるラブコメディではありませんよ。アメフトのアクション的なところもあり、いくつもの要素が絡み合って、なかなかのテンポで進んでいくのです。そして、最後のしんみりした感じがまた最高です。

このバックで効果的な音楽を作ったのが、フュージョン音楽で有名なデイブ・グルーシン。18世紀の管楽器の合奏風の、風格はあるけど堅すぎない音楽が随所にちりばめられてムードを盛り上げます。

このあとウォーレン・ビーティはロシア革命の中に飛び込んだアメリカ人を題材にしたREDSという映画をつくります。ここでも、ダイアン・キートンとの絶妙な夫婦愛を描いて見せます。終盤、駅での再会シーンは映画史に残る隠れた名場面だと思います。

60年代終わりから始まる、アメリカ・ニューシネマといわれる映画の中で、ウォーレン・ビーティは「俺たちに明日はない」からのまぎれもないスターの一人であったことは間違いありません。