2010年10月17日日曜日

Il Giardino Armonico BOX

これまでにもクラシック音楽の中で古楽というジャンル、あるいはピリオド楽器による演奏(作曲された時代の楽器を使用する)は、自分の場合は否定もしないし肯定もしないという、まぁ言ってみればこだわっていないということを書いてきました。

作曲者の意図をできるだけ正確に演奏に反映させるというのは、ある意味正しい演奏解釈なのでしょうが、それを突き詰めてしまうと「演奏不能」ということになりかねない。

数百年前の楽器だけでオーケストラを編成することは不可能。そのほとんどは復元楽器です。演奏会場も、今のようなコンサートホールとはまったく違う響きをもっていたでしょう。

最大の問題は、演奏する側と聴く側の人々の意識がまったく違う。今は楽譜以外にも録音・録画の資料が豊富にあり、聴きたいときに何度でも聴き直すことができます。もっとも、それが本当の生きている音楽ではないという考え方もありますけどね。

ですから、自分の場合は音楽として気に入るか入らないかのことだけになってしまうのです。ただし、歴史的背景というのは無視はできないことで、例えばベートーヴェンのピアノ・ソナタにしても、32曲を作っているあいだにピアノの著しい進歩があったわけで、それに伴い音域の拡大や技術的な革新という変遷があるわけです。

エリー・ナイアルバムにベートーヴェンが使用したフォルテピアノを使った録音が残されていますが、正直言うと歴史的な価値は認める物の、ほとんど残響もなくポコポコした壊れたピアノの音のような感じで、聴いていて気持ちはよくありません。

現代ではいとも簡単に演奏できるようなものもあれば、今となっては演奏のしようがないような場合もあるでしょぅから、楽器・楽典の歴史というのは知っていた方が何かと楽しみを広げてくれることに役に立つはずです。

ちょっと生意気な中学生の頃の自分はバッハを中心としたバロック音楽が好きだったのですが、これは楽器としてのチェンバロとパイプオルガンの音が気に入っていたからです。

ですから、あまり知識もなく初めてグレン・グールドのアルバムを買ったときは失敗したと思いました。バッハをピアノで演奏するなんてありえない、という気持ちだったんですね。特にグールドのノン・レガート奏法で、ペダルをほとんど使用しないので、よけいにピアノらしくもない音がダメで完全お蔵入り。

5年くらい前に、たまたまあらためて聴いたとき、なんか新鮮な新たな感動がありました。ジャズとかロックとかを聴いたあとで、感性がだいぶ変わってきたのだろうと思いますが、これはこれでグールドというジャンルの音楽として完成されたものと思えるわけです。

ピアノ以外に好きな楽器の音はチェロ。これはフルニエのバッハ/無伴奏組曲から始まるのですが、落ち着いた低音が心を癒してくれるのです。名手クイケンによる復元古楽器による演奏も悪くはない。

ヴァイオリンでも、最近はムローバやポッジャーのような古楽器奏者が注目を集めるようになっていますが、今のところ狙っているのはポッジャーのモーツァルトのソナタ全集。CD8枚で分売されたので、ボックス化されて廉価になるのを待ちわびているというわけです。

そんな古楽器関連の所有CDで、とりあえずお奨めなのがイル・ジャルディーノ・アルモニコの廉価版セット。イタリアの古楽器楽団としては、はずせないグループです。11枚のCDに代表録音がぎっしり詰まっていて、かなりお得な感じ。

ヴィバルディの四季やバッハのブランデンブルグ協奏曲などの有名曲は、イムジチの定番の演奏と比べて、かなりのスピードで過激な演奏と言えると思いますが、これがなかなか刺激的で楽しい。ある意味ロックに通じるところがあるかもしれません。

とりあえず古楽というのがどういうものを知るのには大変便利なセットで、是非一家に1セット。損はありません。