2010年12月6日月曜日

新薬・旧薬

関節リウマチ治療では、生物学的製剤と呼ばれる薬剤がいまや話題の中心にあって、これなくしては何も始まらないかのような様相を呈しています。

しかし、日本でも1999年からリウマチに使われるようになったメソトレキセートという内服薬は、アンカードラッグ(すべての基本として使用される薬剤)としての地位を固め、忘れてはいけないものとして重要性を増しているのです。

メソトレキセートは、もともと抗がん剤として使用されてきた薬です。葉酸という核酸合成に必要なビタミンと似た構造をしているため、メソトレキセートを取り込んだ細胞は核酸合成作ることができなくなります。

核酸は細胞が増えていく課程で必要な遺伝子 - つまりDNAに必要な物で、核酸を作れないと細胞分裂ができなくなります。がんのような活発な細胞分裂を起こしている組織では、その発育が抑制されるという理屈です。

リウマチでも、自分に対してアレルギーを起こす自己免疫という活発な反応が起こっているため、効果がでるもので、免疫調節をすることがその薬理作用と考えられています。

これは、リウマチの病態を考えるとより上流での作用ですから、原因治療に近いものと考えることができます。生物学的製剤は、関節内で直接障害を起こしているサイトカインをターゲットにしているものが多いので、どちらかというと究極の対症治療とも言えなくはありません。

もっとも、そんな単純に割り切って説明できるわけではありませんし、現実に最新の生物学的製剤はより免疫そのものを起こしている細胞をターゲットにしています。

いずれにしても、生物学的製剤を使う場合でも、メソトレキセートは上手に併用することが、いろいろな問題を起こしにくくして、さらに治療効果をあげることがわかってきていますので、重要性は減じることはありません。

日本リウマチ学会は、日本の保険医療の中で制約の多いメソトレキセートの使用に対して、もっと適切な量が使えるように働きかけをしています。確かに重篤な副作用が出現する可能性がある薬なので、簡単に増量するというわけにはいきません。

しかし、より高価な生物学的製剤に頼るよりも、メソトレキセートをうまく使用すれば、それだけでも多くのリウマチ患者さんはコントロールが可能と考えられています。リウマチを専門にしている立場では、基本となるメソトレキセートをうまく使えることは必須条件と言えるでしょう。

ついつい新しい物に目がいってしまうことが多いのですが、メソトレキセートもまだリウマチ診療の舞台に登場して10年ちょっとしかたっていない薬なのです。この薬についても、十分な情報を収集・整理して、より効果的な使い方ができるように勉強していかなければなりません。