2011年5月20日金曜日

開業医ならでは

開業医を始めて、まだ5年とちょっと。開業医とは、なんて偉そうなことを言える立場ではないことはわかっています。でも、開業医としての楽しみというか、哀しさというか、大学病院の勤務医をしていては味わえなかったことがある。

それは、時間がたっているということ。それだけでは、何のことかわからないと思いますが、例えば5年経つと小学生も高校生になっている。小さかったこどもが、身長が伸びて大人っぽくなっていたりするわけです。

一方、お年寄りでかなりよたよたしていた方が、いつのまにか来院しなくなり、正直亡くなったのではないかと思って寂しい気持ちになったりもします。

うちのクリニックが開院して間もないころから、1年位前まで継続的にいらしていた高齢の患者さんがいます。1年前にだいぶ体力が落ちて、歩くのもおぼつかない感じになり、床に伏せることが多くなりました。床ずれができたり、こりゃもう寝たきりになってしまうかと思いました。

先日、その患者さんが1年ぶりに自分で歩いて来院されました。けっこう表情もしっかりしていて、「どう、死んだと思ったでしょう?」と先に聞かれてしまい、びっくりするやら嬉しいやら。

そりゃ、まぁ、人間ですからいつかは死ぬわけですが、ぎりぎりのところまで行って戻ってこれたことには敬服するしかありません。

こういう、患者さんと一緒に喜んだり悲しんだりするというのは、より患者さんの日常に密接に関わる開業医ならではのことなんだろうと思うわけです。

医者としての専門性は大事であることには変わりありませんが、何でも相談してもらえるような役割もおろそかにしてはいけないということでしょうか。