2011年10月3日月曜日

ブレーキのない関節リウマチ診療

関節リウマチの医療については、専門性を最も打ち出しているとこですから、なかなか手を抜くわけにはいきません。今までにも書いていることで、手前味噌的な話で申し訳ないのですが、関節リウマチは山ほど病気があるなかで、最も医学的進歩が急速なジャンルの一つ。

特に治療学については、21世紀に入ってからの新しい薬剤の登場で格段の成果を出せるようになりました。基本的に「治癒」せず、むしろしだいに悪化すると言われていたリウマチで、ほぼ治癒といってよい「寛解」になる患者さんが出るようになったことは素晴らしいことです。

ところが、そのために次から次へと出てくる新しい理論に基づく薬をうまく使っていく知識と経験が必須のものになります。ところが、進歩が早すぎて知識の整理がなかなか追いついていないというのが現状です。

新しい医療が登場すると、ある一定のデータが集まってから学会などで議論を経て、一般の医療機関に広がっていきます。そこから、新技術の結果がフィードバックされ議論した上でより良い物にしていくというのが、ごく普通の流れです。

リウマチ治療薬については、効果がある意味「劇的」であるため、高いハードルを設けた上で、かなり早めに一般に広がっているというところがあり、いまだに各医療機関が手探りで「匙加減」を変えていると言うことは否めません。

さすがに、使えばこれだけの効果が出るという話はもう議論され尽くした感があります。その一方で、寛解患者さんが出てくるようになって、どうやって薬をやめることができるかについてはまだ結論が出ているとはいえません。

患者さんを寛解に導くために重要なことは、いかに早期に発見するかという点がたいへん重要です。したがって、この数年は早期発見という点についても、いろいろな新しい技術が登場し議論されるようになってきました。

血液を採っての検査は、新しい項目が出て診断確定にも大きな進歩があり、世界的に使われる診断のための基準については、2009年に大幅な改訂が行われています。かつての基準では診断確定できない、つまり治療を開始できない患者さんも確信を持つことができるようになったのです。

しかし、時代はさらにその次、つまり超早期の診断確定を求めるようになっています。こうなってくると、血液検査だけではとても難しい。そこで、あらためて見直されているのが画像診断です。

単純レントゲン検査は昔からある一般的な画像検査ですが、単純レントゲン検査で変化がわかるようでは早期、超早期とはいえません。そこで、血液検査にも反映されないようなごく初期の小さな変化をとらえる方法として注目されるのがMRI検査と超音波検査です。

うちのクリニックでは、MRI検査は必要な場合はすぐに近くの画像検査専門施設に依頼して可能です。これまでにも、数人の初期の変化を確認することができて、診断を確定することができました。侵襲性もほとんどない優れた方法の一つといえます。

もう一つの超音波検査についても、方法としては簡便でいいのですが、検査そのものに再現性がないことが問題。デジタル技術の進歩で記録という点については改善されてきていますが、検査をする人の技術によるところが大きいのが問題。

自分も病院勤務の頃には、筋肉や腱の損傷を確認するために超音波検査をちょくちょく使っていた経験があります。しかし、なかなかいつでも同じ検査結果を出しにくいため、最終的には他の検査をした上で治療を始めるということが多かった。

しかし心臓の検査で活躍する手法で血流を確認していく方法で、小さな炎症部位をひろいあげることが可能になり、今後は重要な手法になることは間違いありません。うちのクリニックでも、これからもう一度いろいろと検討をして、なんとか超音波検査についても実施していけるように勉強していきたいと考えているわけです。

最近話題のブレーキのない自転車・・・リウマチ診療も、今のところ止まることがない進歩の中で、ブレーキがない状態で疾走中というところでしょうか。こればかりは、違法でもなく、患者さんにとっては歓迎できる話というところです。