2012年1月16日月曜日

口コミ

口コミ、くちこみ・・・つまり口で伝える(コミニュケーション)というのは、様々な宣伝媒体の中でも、最強に近い存在かもしれません。

自分もクリニックを開業してみて、どんな宣伝よりも口コミがもっとも患者さんを増やすことに効果的か実感しました。そのためには、一人一人の患者さんに受診したことを満足してもらわないといけない。

ネットの口コミについては、単純にはいかない問題があります。最近、飲食店の口コミを書き込むインターネットのサイトに、お金を貰って書き込みをする業者の問題が話題になりました。

ネットの匿名性という基本姿勢がある限りは、これはなかなかなくなることはありません。逆に言うと、利用する側は、誰かが意図的に書き込みをしているという前提を知った上で利用することが求められているということです。

もともと、人柄を熟知している知人の話ならともかく、まったく知らない相手の話をそのまま信じるということはありません。ところが、自分が期待している話であった場合には、いとも簡単にそういう何の根拠も無いような話をすんなりと受け入れてしまうというのが人間です。

例えば、欲しいと思っている新発売の車の値段が「予想よりもずいぶんと安いらしいよ」という書き込みがあったとします。当然、そのほうが嬉しいので、ずいぶんと安いということにわくわくして期待してしまう。

一方、「予想よりも高いらしい」と書かれていた場合には、そんなはずないと思ってその書き込みに対して拒絶の気持ちを持つことでしょう。どちらの書き込みも、なんの根拠もないのにもかかわらずです。

あるケーキ屋さんのショートケーキが評判になっていて、「甘さをひかえているけど、たっぷりと使ったたまごとバターの濃厚な風味によって最高の仕上がりになっています。有名ホテルのパティシエに負けない贅沢な美味しさでした」という口コミがあったとします。

実際に食べてみて、なるほど確かに口コミで言われていたとおり最高の味だと思う人がいることでしょう。でも、実際は「甘さのほとんどない、大量のたまごとバターによって下品なくどさを詰め込んだ最低のケーキ」かもしれません。

でも、いずれにしても、判断は個人の価値観の違いから来るものですから、どちらが正解と言うものでもありません。最終的に自分で食べてみて、判断するための参考にするかもしれない意見の一つにすぎない。

開業してみて驚いたのですが、けっこう有名な雑誌で「名医紹介」みたいな記事を掲載するとか、某有名人(といっても落ち目の芸能人が多い)がクリニックを訪れて院長にインタヴューしたいという電話、ファックスなどがやまほどあるものです。

これらの話はすべて、こちらに掲載料を請求されるもの。つまり、お金をはらってやる広告の一形態にすぎないのです。××ランキングみたいなものは、ほぼ掲載されている側がお金を払っていると言っても過言ではありません。

ネットの口コミの大多数は、そのようにして操作されていると考えて利用することが大切。まさにステルスマーケティングです。やり過ぎると、いわゆる「やらせ」となるわけですが、その境界は不鮮明。

良い意見と悪い意見の両方を、あくまでも自分の判断の参考にする材料と思っていないと、がっかりするかもしれません。