2012年5月3日木曜日

知らないこと・出来ないこと

よく患者さんから出る質問というのは、ある程度共通することが多いものです。ですから、医者の方も答えとしては、ある程度用意していたもので間に合うことが普通です。ところが、医者になってから30年近くたっても、ときどきどうも説明に困るような質問を受けることがあるのです。

自分が医者になった頃は、レントゲン写真を撮ると現像してフィルムを乾燥させるのに数時間かかったりするわけで、数分間で処理が完成する自動現像機がまだ出回り始めた頃でした。ぺーぺーの医者は大学病院では外来は週に1回だけですから、とりあずレントゲン検査をして「結果は来週」となります。

1週間の猶予があるわけですから、その間に教科書などを調べたりして、次回までにある程度説明することを用意しておくことができるわけです。患者さんもそんなものだと思ってくれていましたので、ある意味たいへん楽ちんだったわけです。

自動現像機が普及してからは数十分程度待ってもらうだけで、その日のうちに説明をすることが普通になりました。さらにデジタル画像が登場し、現在では撮影してから数分以内に診察室のパソコンで画像を確認できるようになり、ほとんど患者さんを待たせることもなくなりました。

今時の研修医が我々よりも大変だとすれば、この点が一番ではないでしょぅか。知識が大事とはいえ、やはり経験を必要とする仕事ですから、まだまだ経験の少ない研修医にとっては検査結果を即座に判断し説明するというのは大変なことです。ですから、困ったときに周囲の医者がすぐにフォローできる体制が大切ということです。

それはともかく、現在の自分の場合は、フォローしてくれる医者が隣の診察室にいるわけではありません。ですから、日頃から心がけていることは、知らないことを知らない、出来ないことを出来ないとはっきり言うことだと思っています。

もちろん、そのまま患者さんを突き放して終わりにするわけにはいかないので、そういう意味でも診診(診療所と診療所)連携、あるいは病診(病院と診療所)連携が大切で、すぐにそういう連携を取っている施設へ紹介することをためらってはいけません。

特に自分が専門にしている関節リウマチのように、いろいな合併症や薬の副作用の問題を伴う病気の場合は、自分の限界を超えた場合に患者さんを抱え込んでしまうようなこと慎まなければなりません。もちろん、できるだけ自分のクリニックで解決できるようにする努力は怠ってはいけません。

そんなことを毎日考えながら、日々の診療をしっかり行えるように久しぶりの連休で充電をしておきたいと思います。