2012年12月23日日曜日

続・リウマチ気質

タイトルに「続」とつけたものの、前回この話題は4年前。もう、だいぶ前のことです。

なんで、また「リウマチ気質」かというと、以前このブログへのアクセスで使用される検索キーワードの上位にあるから。開業して、丸7年が過ぎて、気がつくと開業医初心者から多少なりとも中級者になったでしょうか、うちのクリニックが関節リウマチを専門にしていることもだいぶ周知されてきたと思います。

毎日、せっせとやや時代遅れになってきた感があるブログを更新するのも、元はと言えば無料の宣伝ツールとしての活用からでした。さすがに、ここまで続くと、もう日課みたいなもの。毎日書くのも義務感というより習慣となり、自分の記録としてけっこう重宝したりします。

さて、リウマチ気質ですけど、最近NHKテレビの「ためしてガッテン」で関節リウマチが取り上げられ、来院する方の中にもご覧になった方がけっこういたりします。

以前から、この番組に限らず、テレビで医療関連の情報を話題にする場合にはセンセーショナルな一面を強調するばかりで、病気を心配している人の不安をあおるような番組作りが気になっていました(NHKと言えども視聴率は重要ですからね)。

今回は、東京女子医科大学膠原病リウマチ痛風センターの所長である山中寿先生が出演していて、なかなか的を得た解説をしていました。なんて書くと、贔屓の引き倒しみたいな話で恐縮ですが、なにしろ自分もセンターの非常勤講師という立場ですからね。

山中先生は、話が整然としていてわかりやすい。会話もてきぱきしていて、頭の良さがほとばしるタイプの先生です。でも、にこやかな態度が(丸っこい顔つきや体型のせいか?)、全体的な雰囲気を和らげている。いずれにしても、現在の日本の関節リウマチ診療を牽引する人物としては、5本の指に入るような方です。

今回のテレビの中でも、関節リウマチは「治る」ようになってきたことが話題になっていました。早期に見つけて、早期に治療を開始すること、しかも(高額ですが)生物学的製剤を早くに導入することが寛解(かんかい)と呼ぶ治癒に近い状態への近道です。

リウマチ気質というのは、 療養が長期化してしだいに「神経質」になってくるような状況で使うことが多いと思います。そりゃそうでしょう。以前は、一生治りません、しだいに手足が変形して出来ないことが増えます、死ぬかもしれない薬を使い続けます、などなど不安になるような話しばかりをしていたんです。

誰だって、だんだん病気に対して神経質になるのは当たり前。しかし、残念なことに医者の間では「リウマチ気質」という言葉はどちらかというと「うるさい患者」という意味をこめて使われることが多い。

リウマチを専門にしていない医者ほど、その傾向は強いと言わざるをえません。少なくとも、治せる可能性が出てきた今の状況では、専門にしている医者にとっては死語です。患者さんと医者が一緒になって、前向きに病気と闘っていく中ではリウマチ気質というのは存在しないと思います。

だいいち、ネットが浸透して、なんでも「検索」の時代ですから、リウマチに限らずどんな病気も事前に患者さんが情報(正誤混在ですが)をいろいろ知っていることが多い。いろいろなことを知れば知るほど、「神経質」な傾向は出てくるものです。

いずれにしても、早期診断・早期治療のためにも、専門にしている医療機関へ受診し相談することが最も大切。リウマチ科という診療科の標榜はあてになりません。極端なことを言えば、うちのクリニックも、患者さんを集めるために産婦人科とか看板に書くことは可能なのです。

専門のクリニックを探す方法は多くはありませんが、ネットなどをうまく利用することは効果的です。自分も、わざわざ得意じゃないところをホームページに掲載しようとは思いません。なんにしても、関節リウマチ診療はどんどん進歩している分野で、「リウマチ気質」はそれに比例して過去のものとなっていることは間違いありません。