2012年12月16日日曜日

K-20 怪人二十面相・伝 (2008)

日本人、特に昭和を生きてきた者にとって、江戸川乱歩の数々の探偵小説はこどもの頃の原点みたいなもの。今のこどもがポケモンで育っているように、名探偵明智小五郎と怪人二十面相の冒険譚に心わくわくさせられたはず。

明智と二十面相の対決に新しい解釈を加え、もう一つの答えを見せてくれるストーリーは魅力的だ。もちろん、絶対的な原典主義で考えれば、邪道な設定ということになるかもしれないが、全体のお伽噺的な映画作りがそういう堅苦しさを封印した。

当然、舞台は日本で、ここは東京なんだろうが、今の日本を知っていると、完全に別世界の話と思えてくる。なにしろ、第2次世界大戦が無かった場合の1949年という発想が目新しい。

特権階級と庶民の貧富の格差がどんどん広がり、軍はさらに力をもつようになる。確かに、戦争が無ければこういう世界はありなのかもしれない。「ブレードランナー」と「バットマン」のゴッサムシティをまぜこぜにしたみたいな世界。

ハリウッドの大作と比べれば、こどもだましみたいな特殊効果が満載だが、それも許される。役者の体をはったアクションが、なかなかスピード感があって爽快だからだ。主演は金城武で、相変わらずしゃべりはイマイチだが勘弁しよう。

まわりを固める俳優がいい。思いきりお嬢様の松たか子、明智役の仲村トオル、主人公をメカでサポートする國村隼などがうまい具合にかみ合っていて、脚本がなかなか上出来みたい。

その脚本と監督を兼任したのが、佐藤嗣麻子。この映画が第一回監督作品だが、脚本家としては、けっこう話題になった映画やテレビの仕事をしている人。最近ではキムタクの宇宙戦艦ヤマトの脚本も手がけている。

監督としては、プライベートでもパートナーで、もともと特殊効果を専門にしていた映画監督山崎貴(Always 三丁目の夕日で有名)がかなりバックアップしていると思われる。

それなりの、あっと言わせるどんでん返しが用意されているので(ただし最後の対決の前までにだいたいわかってしまうけど)、ストーリーについては書かないでおく。

もちろん、名作映画として未来にずっと記憶されるようなものではないかもしれない。あえて、細かいことは気にせずに、頭をバカにして映画はこうして楽しもうというような作品だ。