2013年2月28日木曜日

スター・ウォーズ (1977)

世の中のデジタル化の恩恵を、最も多く受けている映画はSF物でしょう。何しろコンピュータが描くものは、実際に見れないものでも可能で、その表現可能な世界は無限に広がっている。

ところが、家庭でパソコンが使われだすのは80年代以降ですし、70年代は一部の研究所レベルにものすごく巨大な・・・一部屋を埋め尽くすような機械を設置して、現代のスマホ以下の仕事しかできなかった。

そんな時代ですから、SF映画を作るときの基本的な技術はアナログという頃に作られたのが、全世界的なヒットとなった「スター・ウォーズ」で、その革新的な映像表現にはみんなが度肝を抜かれたわけです。

宇宙船などは、基本的に精巧なミニチュアで作られ、それをなめるように撮影するモーション・コントロール・カメラを開発したことで、本当に巨大な宇宙船があたかも飛んでいるように見えたのです。

今のCG技術からすれば、あらが目立つ合成技術ですが、それでも公開当時としては驚異的な映像の数々により、まるで「どこか銀河の遠く」の世界が目の前に展開する様は本当にびっくりしたものです。

これらの特撮技術で一躍有名になったのが、ジョン・ダイクストラやリチャード・エドランドで、その後の現在に続く映画のほとんどに影響したのです。

もう一つの凄い技術が、メーキャップでした。特に大量の個性的な宇宙生物などへの変装などで威力を発揮、リック・ベーカーは驚異的なメーキャップ技術で後の映画に引っ張りだことなります。

これらの特撮技術はSFXという言葉でまとめられ、映画、特にSF映画ではある意味俳優以上にスターとなったわけですが、その後SFXを見せるためだけの作品も少なくないのは残念なところ。

スター・ウォーズそのものは、今更こんなところで書くまでも無いくらい、語られていますし、おそらくマニアにはまだまだ語りつくせない魅力が詰まっています。

ただ、少なくとも明らかに続きがあり、それを見るために数年間我慢するという映画は過去に無かったのではないでしょぅか。このあたりはプロデューサとしての、ジョージ・ルーカスの見事な見識なのでしょう。

アカデミー賞の主だった賞は取れませんでしたが、少なくとも映画でしかできない映像世界を見せてくれた、映画界が忘れてはいけない名作中の名作という評価はするべきだと思います。

ルーカスは全9話の用意があることは、当時から明言していましたが、最初の6話までで制作は中断していました。しかし、最近、最後の3作の計画を発表しています。それなりに楽しみな話ですね。

2013年2月27日水曜日

エイリアン (1979)

SF映画というと、現在とは違う世界、主として未来を描いたもの。想像の世界を表現するために、いろいろな特殊効果が使用され、映画の製作技術を進歩させる原動力の一つという評価ができる。にもかかわらず、荒唐無稽みたいな評価がされて映画芸術として低めの評価で語られる事が多いものです。

歴史的には「月世界旅行」(1902)で始まり、「メトロポリス」(1927)で確立。50年代に「宇宙戦争」、「タイムマシーン」、「禁断の惑星」 などで人気となり、宇宙物を中心とした娯楽映画としてのジャンルとして認知されたわけです。

60年代にはいり、「ミクロの決死圏」、「猿の惑星」のように時代設定も重要ですが、人間があり得ないものと戦うような話が登場。宇宙物でも、「バーバレラ」のようなエロティック・コメディや、そしていまだにSF映画の金字塔的な「2001年宇宙の旅」のような哲学的内容のものも出てきて、内容は多岐に渡るようになりました。

しかし、なんと言ってもSF映画の絵空事的な世界をリアル化する技術革新が進み、現在まで続く名立たる名作が続々と登場したのが70年代。

「エイリアン」は1979年。当時「宇宙ではあなたの悲鳴は誰にも聞こえない」というキャッチフレーズは、かなりインパクトのあるもので、内容としても監督リドリー・スコットの評価を十二分に高めるものでした。

それまでは、宇宙人は普通に登場し、普通に人間と同じように攻撃してくるわけで、いかに地球を救うかの戦いがテーマだったものです。しかし、この映画では出てくる宇宙人・・・というよりも、宇宙生命体は一人、というか一匹。

彼には単に自分以外を排除する本能しかなく、戦いの理論は原始的。しかも、なかなか登場せず、ちょっと出てきても一瞬。最後の最後まで、その全容が画面に映し出されることはほとんどありません。

見えないものに対して人間は恐怖を感じる、原始的感覚をSFの世界、孤立した宇宙船の中を「お化け屋敷」に見立てて展開。まさにスペース・ホラーと呼ぶにふさわしい作り方が斬新でした。

そもそも、主人公が女性というのも目新しく、何が原因なのか、何が目的なのかなど、見ている側が整然と理解する説明も明示されていないところも面白い。

後にシリーズ化され、第2作では、一作目で出し渋ったエイリアンを大挙して登場させ、「今度は戦争だ」という内容。そこまではよかったのですが、その後の3作目、4作目は世界観を多少引き継ぎながらも内容的には見るに値しない。

とにかく映画芸術として、1作目だけは「これだけは観ておきたい」1本として記憶に残る名作だと思います。それにしても、シリーズ4作詰め込んだブルーレイが4000円以下で買えてしまうのは、かなりお得な感じですね。

2013年2月26日火曜日

Mannheim Quartet / Bruch String Quartet

ブルッフは19世紀後半のドイツの作曲家で、ロマン派のながれを汲み、バイオリン協奏曲が唯一有名。それほど作品も多くなくCDも少ないし、知らなくても困らないクラシック作曲家の一人かもしれません。

でもね、室内楽でいいのがあるんです。弦楽四重奏なんですが、これは是非きいてもらいたい。

何がいいかというと、雰囲気なんです。なんだそりゃ、と言われそうですが、単に甘ったるいだけではなく、なんと言うか、ビートが利いているというか。

誤解を招きそうな表現ですが、言ってみればクラシックのハードロック。クァルテットのなかで、低音パートをきびきびさせて、曲のどっしり感を感じさせます。

このCDではマンハイム四重奏団という方々が演奏しているのですが、うーん、ほぼ無名。世の中には弦楽四重奏団は山ほどありますが、有名どころばかりを聴いていると、だいたい演奏している作曲家も有名どころばかり。

かえって、ちょっとマイナーな人のほうが、マイナーな曲を演奏してくれていたりするので、こういうCDを見つけると、自分だけが知っている掘り出し物のような感じでなんか嬉しくなってしまいます。

2013年2月25日月曜日

パソコンのセッティング

2月はもともと日数が少ない月ですが、早くも最終週で、暦の上では♪もうすぐ春ですねぇ。

もっとも、そんなうかれるほど世の中は楽しくなっているとはいいがたいのですが、何故か現政権の支持率だけは上昇傾向だそうで。

2月はいろいろあって、クリニックで使っているインターネット用のノートパソコンをレントゲン写真のデータバックアップ用に使う事にしました。今まで、レントゲン・サーバーが自動でしていると思っていたのですが、モニター画面が無いので直接確認をする事ができません。

やはり、何かあったときには、直接いじれる状態を確保しておかないと何かと不便。そこで、ノートパソコンで、直接レントゲンのデータを保管するNASを監視し、そして別のHDDへミラーリングする形態をよういすることにしたわけです。

このノートパソコンは、けっこう2年前の購入時にはハイ・スペックだったSonyのVAIO Zで、CPUはCore i7、RAM 8GのSSD 256MB搭載。ただ最近SSDがやや不安定なので、そろそろSSDの交換を考えていたもの。

当直バイトでは必需品なので、これがなくなると自分としてはちとつらい。そこで、新しく用意する事にしたんですが、何しろいろいろとお金の必要な時期だけにあまり贅沢なものは買えそうに無い。

今回は安さ優先。大きさは小さいにこしたことはないのですが、某パソコンショップのBTOノートパソコンで我慢する事にしました。

最低限譲れないスペックはというと、64bitのWindows7を使いたいので画面はフルHD、RAMは8G以上、SSD搭載、今時なのでBlu-Rayドライブ、そしてBluetooth使用可というところでしょぅか。

SSDを128Gで我慢すると、なんとか10万円以内というカスタマイズが可能となりました。パソコンもずいぶんと安くなったものです。

とはいえ、128GだとOSを入れて、ある程度のソフトを入れるとほとんど余裕がありません。これはしばらくしたら交換することにして、当面は我慢。RAMもそのうち16G程度にはアップしたいと思いますが、BTOパソコンのいいところはそのあたりのアップグレードが簡単なところ。

何しろVAIOの場合は、蓋をあけると、もうみっちりとパーツが組み込まれ、ちっとやそっとでパーツ交換はできません。しかも、大事なところにはシールが貼ってあって、これを剥がすと保証は一切しないよなんてことが書いてある。

とにかく、いろいろな設定事項や保存してあるメールなどを移行して、だいたいいつもの作業環境を構築することがでました。パソコン好きにとっては、こういう「破壊と復元」みたいなことも楽しみだったりするんですよね。

2013年2月24日日曜日

Windows8

・・・って、売れてるんですか?

どうも、あまり盛り上がっていないのは自分だけ、という疑問を感じます。現在のパソコン市場を見ていると、Windows7搭載のものが主流で、Windows8は数割程度。

そもそも、機能面で見ると、Windows7 + スタート画面の変更という程度という印象。そのスタート画面のパネルというやつですが、タッチパネル向けの機能で、一般的なデスクトップやノートパソコンでは使いやすいとは言いがたい。

だいいち、タッチパネル・ディスプレイが高額で普及していないし、パソコン・ショップでもほとんど売っていないというのが現状。タッチスクリーンは、パッドタイプに特化した使い勝手で、モバイルを意識しすぎたものかと思います。

他にも、いろいろ機能面のアップグレードはあるのでしょうが、あまりその辺の宣伝効果が出ていないのか、消費者側に伝わってきません。

WindowsはしょせんOSですから、確かにその出来によってアプリケーションの動きが違ってくるものの、パソコンのメインスターではないんです。むしろ、できるだけ隠れていておとなしくしていてくれたほうがいい。

Windows2000で、MS-DOSをなくして現在のWindowsの基本を作ったわけですが、完成したのはその次のWindowsXPでした。XPは数回のマイナーチェンジを経てかなり管制されたOSになっていて、今でも十分に使い勝手のこなれたOSです。

しかし、サポートが終わってしまい消費者はなかば強制的にWindows7へ移行させられました。その間のVistaの出来があまりに悪かったし、Windows7も使いやすいので、それほどこれについては不満はありません。

この分だと、Windows8はブリッジングOSとして短期に終焉を迎えるか、あるいはモバイルOSとしてWindowsCEと統合されて特化していくような気がします。今年は無理でも、来年にはWindows9が登場するんじゃないでしょぅかね。

2013年2月23日土曜日

Samurai Japan

WBC・・・というと、いがくの世界では白血球のことで、White Blood Cellの略。DMもダイレクト・メールだと思ったら糖尿病の略だったりして、アルファベットだけだと本当は何を意味しているかわからないことは多い。

巷でWBCと言うと、今の時期は当然 World Baseball Classic のこと。いろいろと運営方法で疑問があり、世界という言葉を使ってやる大会としてはかなり偏ったものであることは間違いない。

しかし、過去2回とも優勝した日本としては、勝ち逃げは許されない。いざ、参加する事になれば、それなりの結果を残すべくがんばってもらいたいのは、日本人ならみな同じ思いでしょう。

ペナントレース直前だけに、参加する選手の選出にもいろいろな制約がかかっていることはしょぅがない。そもそも本場アメリカの大リーグだって、日本の大相撲と同じで、アメリカ人以外の国籍の選手の活躍が近年は目立っていて、純粋に国籍にこだわるといろいろ厳しいところでしょう。

今年の大型新人の大谷君は最初は頑なに大リーグ入りを口にしていましたが、最終的に日本ハム入りしました。大リーグへの憧れ、別の言い方をすれば、大リーグに対する日本人のコンプレックスみたいなものは今の若者にも根付いている感じがします。

過去のWBCを連覇しているにもかかわらず、そういう雰囲気を払拭できないのは何故なんでしょうか。日本の野球技術の高さは、十分に証明されたかと思っていたのに、何となくさびしい感じがします。それに比べると、日本発症の柔道の世界的主導権の無さもずいぶんとめだちます。

日本のスポーツに対しての考え方が弱いことはあるんでしょうかね。もともと戦争の代替的な要素がある文化で、国境をもたない日本という国では、日常的な侵略の危険に対して鈍感になっているのかもしれません。

とにかく、やるからには日本中を熱くさせてくれる戦いを期待したいものです。山本浩二監督以下の選手の皆さん、今回も陰ながら応援しますんで、がんばってください。

2013年2月22日金曜日

青春

いざ大学に入ってみると、それまで持っていた大学生のイメージとはかなり違っていたんです。大学の場所と医学部の性格上からくることなんでしょうけど、なにしろ一番感じたのはヒマがないこと。

いや、他の学部の学生がヒマ人だと言いたい訳ではありませんが、大学生というと昼間でも繁華街にいけたりして、そもそも真昼間に新宿アルタにいられるってどういう人種かしらと思ってしまう。それに、大学生=バイトみたいなところもあるしね。

自分が通ったのは神奈川県の西側、湘南海岸よりも丹沢、新宿よりも小田原というなんとも若者的に華やいだ場所からはほど遠い。そもそも、都内から通学するので往復の通学時間だけでも4時間弱はかかります。また、ちょっと遊ぼうと考えても、なかなか簡単に出かけられるものではありません。

そもそも、自由選択科目がほとんど無い。ほぼすべてが必修科目で、基礎科目のごく一部に選択が許されましたが、それも選択必修で、1週間みっちり埋まってしまう。さぼると当然単位にひびくわけですし、自由に出来る時間というものがありませんでした。

昔は出欠の確認というのは、教師が出席簿で名前を読んで返事をするというのが普通でした。ですから、代わりに返事をする「代返」というのがありました。先生も知っていてもスルーするようなほのぼのとした時代の話です。

自分の大学では、出席カードというのがあって、細長い紙が配られ、そこに学生番号と氏名を書いて箱にいれるという方式。誰かに頼んで、何とかカードを余分にもらって出しておいてもらうということが可能。

とは言っても、協力者に迷惑をかける可能性があるのと、まじめな学務課のお兄さんがカードを配るときは余分にゲットするのは至難の業になってしまい、確実性はそれほど高くありませんでした。

結局、朝6時に家を出て、始発の急行にのって8時前に到着。テニス部の朝練にちょい遅れで参加。9時から5時までしっかり授業。そのあと、暗くなるまで午後練。7時から8時頃に仲間と夕食をとって、家に帰ると10時過ぎ。あとは寝るだけ。

こんな生活が長く続いて、何週間も親の顔を見なかったこともありました。そんな生活を後悔しているかというと、実はそうでもない。当時も、そして今でも、あの頃は毎日が充実していて、十分に「青春の1ページ」だたっと思えるわけです。

2013年2月21日木曜日

心機一転

高校生の時は、何を考えていたのか。まぁ、今となっては、あまり思い出せないものです。とりあえず、それほど大志を抱いていたわけではなく、毎日何となく楽しければいいかくらいのものだったかもしれません。

家は開業医ですから、親は当然長男の自分には医者になってもらいたいと考えていたわけです。そんなことは、知ってか知らずか、こどもは好き勝手なことばかりをしていたわけですから、今から考えるとずいぶんと親不孝物だったんでしょう。

通っていた高校は、高3の秋に修学旅行をするような能天気な学校でしたから、大学進学についてもほとんど進路相談なんてものはなかったんです。内申書をもらうのも、どこでも好きな大学を申し込めばいくらでももらえたりしました。

この頃まで、つまり内申書を申し込むような時期まで、自分は文系に行きたくて社会科中心の勉強ばかりをしていたもんです。でも、何ででしょうかね、いざ内申書を申し込むだんになって医学部の受験を決めたんです。

ずいぶんと親に説得されたのかもしれませんが、どうもよく覚えていない。おかけで、それから物理とか化学とかあらためて勉強するんじゃ間に合うわけが無い。当然、浪人生活に突入。それはそれで悪くは無かったのですが、幸い医学部に入ってさらに気がついたことがありました。

何しろ入学してみると、自分より何年も浪人している物もいましたし、逆に若い方では数年若い。年を取っての数年は誤差範囲みたいなものですが、多感な20歳ごろのでは1年違うだけでも、ずいぶんとジェネレーション・ギャップというものがあるものです。

最初は、そういう年齢差のある同級生にどうやって付き合っていくのか心配になりました。ですから、同じ学年、つまり同じ数だけ浪人している同級生がいると安心していたりしたものです。

しかし、いつまでもそんなことをしているわけにはいかない。とにかく何かクラブに入ろうと考え、自分からできるだけ垣根を減らしてみようと思い立った。すると、年下の先輩というのに出会えたりするわけです。

彼らは、こういう関係にはすでに免疫ができていて、逆に変に気を使わない。これは助かりました。なるほど、これが大学での先輩・同輩・後輩での付き合い方というものだとわかったわけです。一度理解すると、あとはけっこう簡単。

1歳ごとに学年が変わるのは、高校生まで。高校を卒業してからは、どこに行くにしても、その社会に入った順番が決定権を持っているということです。まぁ、あまり難しく考えず、そして一度気持ちをリセットすることが、新しい社会に入ったときには大切ということですかね。

学生生活が終わって、社会人になったときも、卒業した大学を辞して他の大学にトラバーユしたときも、そして開業したときも、そういう気持ちで周囲の方々と接してきたつもりですが、今のところ特に間違っていないと思っています。

2013年2月20日水曜日

第7回田園都市リウマチフォーラム

横浜市北部・川崎地区で関節リウマチを専門的に診療をしている先生を集めて、お互いの知識のレベルアップや連携を強化することを目的とした会です。

世話人の一人として、この会を立ち上げてきて、今回でやっと7回目。まだまだ会としての成熟度は物足りませんが、確実に定着しつつある実感はあります。

今回は、顧問をお願いしている聖マリアンナ医科大学の山田教授の講演。山田先生には、一回ごとに講演をお願いしていて、いつも無理なテーマをリクエストばかりしていて本当に申し訳ないところです。

今回は「早期リウマチの鑑別診断」というテーマ。一見、簡単そうで、実はこういうのがおくが深いものです。内科的・整形外科的な総合的な話になるので、内容はかなり盛りだくさん。まとめるのに、さぞかし大変だったろうと思います。

しかし、いつもながら、臨床の中で疑問に感じつつも、何となく見過ごしていたポイントをいくつも指摘していただき、大変有意義な話をお聞かせいただきました。

関節リウマチでは、関節の痛みというのが最初の患者さんの訴えであることが多い。痛みのある関節が腫れていれば診断もしやすいのですが、痛いけど腫れていない、または痛くないのに腫れているという状況では、いろいろな病気の鑑別を考えないといけません。

最近は、関節リウマチの検査で抗CCP抗体という項目があるのですが、これが出たらリウマチと決めてしまう非専門の先生が多い。実際は、そんな簡単なものじゃありません。だからと言って、 抗CCP抗体が陽性でもリウマチといえない患者さん、あるいは陰性ですがリウマチの疑いを捨てきれない患者さんは大勢存在します。

早期の診断の必要性が増している現在では、早期であればあるほどこういう判断に困る患者さんに遭遇する事が多いのが、現場の専門医の悩みです。今日の講演では、このような早期の診断に難渋するケースに対する考え方を勉強することができました。

わかったつもりでいても、まだまだあらためて知る事というのは次から次へと出てくるものです。医者は一生勉強とはいいますが、なんとも疲れる仕事です。

2013年2月19日火曜日

宅浪のススメ

・・・は無い。よほど、特殊な事情がない限り無い。そう、断言してよいと思っています。

大学入学試験も、慶応・早稲田が始まり、国立を除くと大方の受験生にとっては最終局面。センター試験から1ヶ月たって、だいぶ緊張が続いて疲れがたまっている頃です。

たまたま、知り合いのお子さんですでに雌雄が決した方がいて、だいぶ落ち込んでいるらしい。浪人になって予備校の行きたい学部の専門コースに通ったそうですが、かえって自分のやりたいような勉強ができなかったというそうです。次は宅浪すると言い出したらしい。

浪人生の選択肢は、志望学部専門予備校、一般予備校の専門コース、一般予備校の一般コース、そして宅浪などがありそうです。

専門予備校というのは、医学系や美術系のものがありますが、費用はかなりかかります。しかし、自分で勉強の方向性を決めかねる場合には、目的がはっきりしているだけに効果的。情報も充実しています。

一般予備校は、駿台、代ゼミ、河合が大手3校。河合は主として文系向きでしょう。よほど、肌に合うところがあれば別ですが、絶対に大手に行くべきです。その理由は情報。受験は勉強5割、情報3割、そして運が2割みたいなところがあって、当落すれすれであれば情報の有無が非常に重要です。

ビデオ学習を売りにして台頭してきたところもありますが、教える側と教わる側が直接対面しない授業は根本的にありえない。授業で眠くなるのも一つの効果。お互いが反応をみないで、本当の教育になるのか疑問です。

自分の得意・不得意がありますから、専門コースのほうが選びやすいのですが、うまく自分に合わない場合は、一般コースを選択する事がおすすめ。そして、不得意な科目を追加で選んで充実させるのがよいのではないでしょぅか。

自分の場合は、代々木ゼミナールのすべて単科ゼミだけを選択して浪人していました。結果としては、浪人を重ねたので必ずしもよかったわけではありません。ただ、絶対的な利点は「生活のリズム」を維持できること。

とりあえず、朝必ず起きる。とにかく代ゼミに行く。科目によってはがんばって一日勉強しますが、そうでなければ代々木から渋谷まで歩いて、あとは夕方までジャズ喫茶でもくもくと独習。

ですから、宅浪は絶対にすすめません。まず、大事な情報が限定的。ネット社会とはいっても、合否のような個人情報をもとにした受験情報は、簡単には手に入りません。そして、生活がだらだらしてしまうことは間違いない。

生活のリズムをきちんと守れるというのなら、そもそも浪人しない。勉強をしたいときも、したくないときも、それなりの半強制力が存在している事は、自分の弱さを克服するために絶対に必要です。

我が家にも受験生がいて、自慢みたいで恐縮ですが、もともと入れる大学なんて無いんじゃないかという成績だったのですが、浪人して何とか結果を出せています。彼の一番の成功のポイントは、予備校の警備員のおじさんや必ず朝とおりかかる犬の散歩のおじさんと仲良くなった事。

つまり、自分を見ていると自覚できる他人ができた事が大きい。家族だけでは、お互いに甘えが出てしまいますが、他人が見ていると思うと自然とさぼらなくなります。

なんにしても、努力すれば必ず結果は出てくるとはいいますが、努力の方法を自分だけでコントロールするのは本当に大変だろうと思います。すでに結果が出て、来年の勉強法を考えなくてはいけない場合は、2月中はゆっくり考えましょう。少なくとも、宅浪だけは絶対にお勧めしません。

2013年2月18日月曜日

HDリマスタリング

家庭で見れる映像ソフトは、ビデオテープからレーザーディスク、そしてDVDとなり格段の美しさとなりました。しかし、現実にここまでは、もともとの動画ファイルとしては、ほぼ同じ質のものであったわけです。

ところが、家庭のテレビそのものがハイビジョン対応となり、解像度が大幅に向上したことで、既存の映像ソフトのリマスタリングが盛んに行われるようになったのです。Blu-Rayが登場したこで、画像データを収録できる量が格段に増えたことで、その微細な映像を収録することが可能になりました。

もともと映画はアナログのフィルムに焼き付けられていたわけですから、その解像度はフィルムの劣化が無ければ、ハイビジョン以上の高解像度があるわけです。これを、今の電子技術でデジタル信号に変換すれば、大変驚くような美しさが確保できます。

例えば、黒澤明監督の代表作の一つである「羅生門」は1950年の白黒映画ですが、これをデジタル・リマスタリングしたBlu-Rayで見ると、その細かい映像表現に驚嘆します。

黒澤が墨汁を混ぜてこだわった雨もはっきり見て取ることが出来ますし、俳優のアップでは毛穴や顔のしわもわかるのです。

1982年のアメリカ映画「ブレードランナー」はカルトSF映画の傑作として、今でも絶大な人気があります。これも現在ではデジタル・リマスタリングされたものが出回っていて、DVDでの色のにじみがなくなり、細かいミニチュアがたいへんはっきりと見ることができます。

ただ、逆にはっきりしすぎて、模型がより模型らしく見える部分というのもあったりするのですが、全体的には美しい映像表現に蘇り圧倒されるのです。

最近はハイビジョンを越える4Kテレビというものが話題になっているわけで、このような旧作のリマスタリングも将来的な超高解像度にも対応できる形で行われていくこと期待したいです。もっとも、人間の視覚自体は、おそらくそれだけの高解像度をはっきりと違いとして認識するのは難しいかもしれません。

本来、アナログの人間の感覚は、欠落している部分を過去の経験や知識などで補って理解している部分があるわけで、おそらく現状のデジタル技術は人の感性を上回ることが可能なはずです。

とにかく、過去の映像データをそのままBlu-Rayにいれるようなソフトであれば、値段によってはDVDで十分です。しかし、HDリマスタリングされたものについては、DVDではなく絶対にBlu-Rayで見るべきでしょう。過去に見たことがあるものであれば、必ずびっくりするような新発見があること間違い無しです。

2013年2月17日日曜日

Led Zeppelin / Cerebration Day

2007年12月、いまや伝説となったレッド・ツェッペリンの再結成ライブが行われました。70年代ロック小僧だった者にとっては、それはそれは奇跡のような話ですが、実はあまり期待しなかった。

ツェッペリンの歴史は、1980年にドラムのジョン・ボーナムが事故で死去したことで終了しており、ボーナム無しではグループはあり得ないとして解散という結論をだしたのは、残りのメンバー自身。

今更、懐かしのメロディじゃあるまいし、サポートメンバーを入れて再結成されても、それはツェッペリンと呼ぶことに抵抗を感じるものでしかなかったのです。

実際のコンサートには世界中から多くの応募があったそうですが、もちろん直接見れた人以外には、一つのニュースにしか過ぎませんでした。ところが、昨年ついにというか、やっとというか、その時のライブが映像も含めて発売されました。

そうそう、思い出しました。ジミー・ペイジは、ギターストラップをかなり長めにしているんです。ですからフレットが下がって、普通なら弾きにくいんですが、これがまたえらくかっこいい。

ジョン・ポール・ジョーンズは、地味で控えめで、ちょっと後に下がっていて、寡黙に仕事をこなすのは昔と同じ。キーボーを使うときは、足鍵盤を併用してベース音を出すんです。

ロバート・プラントはずいぶんと年をとったなぁ。髪型だけは昔のまま。実は原曲よりもキーを下げているとのことですが、ちゃんと声は出ている。

あー、やっぱりすごいな。還暦越えた人ばかりなのに、まったくがんばれているじゃないですか。さすがに、一つ一つの曲は当時よりもコンパクトにまとまっていますが、聴く方も年を取ったので、このくらいがちょうどいいというものです。

さすがに、もうドラッグはやっていないんでしょぅから、その分演奏もクレバーです。要所要所をかちっと決めるあたりは、さすがという感じ。

そんなわけで、なかなかの演奏で往年のファンをがっかりさせないのは、やはりドラムの存在。これが亡くなったボーナムの息子というから驚き。当然、この頃40才くらいでしょうし、父親のドラムはレコードでしか知らないような世代。

ところが、実にがんばっている。メンバーも彼をドラムにすえて、実に楽しそうなのです。さすがに「モビー・ディック」はありませんが、再びツェッペリンを名乗ることを決断した一番の要因は、彼のドラムであることは納得できました。

 それにしても、ボーナムの息子、一番若いくせにデブでハゲで貫禄あるな。外見からして、誰にも負けてないわ。

2013年2月16日土曜日

スイスツール

一頃、ずいぶんと「アウトドア」というレジャーがブームになりました。そうですねぇ、だいたい10数年前くらいでしょうか。我が家でも、ずいぶんとキャンプ場に足を運んだものです。

自宅の近くでも、数件のアウトドア専門店があって、休みの時とかはそういうお店でいろいろなグッヅを眺めているだけでも楽しいものでした。

ところが、だんだんお店が減ってしまい、今では量販店のようなところでしか見かけなくなりました。そういうところにあるのは大手メーカーのものばかりで、ちょっとした気の利いた掘り出し物みたいなものは手に入りにくくなっています。

確かにはっきりいって、コールマンというブランドはキャンパーにとってはデファクトスタンダード。照明のランタンと料理をするためのストーブ(コンロのこと)は、歴史的にもコールマン製は最も信頼性の高いもの です。

でもテントを代表とする居住スペース関連の用具については、コールマンブランドがついていてもほとんどOEM製品。すべてを緑色のコールマンで固めるのもいいかもしれませんが、ちょっと頑張れば、もっともっと快適なアウトドアが楽しめたりします。

とくにテントは寝室であり居間でもあるので、寒くなく暑くなく、そして蒸し蒸ししないことが大事。しかも、丈夫で痛みにくいことも必要ですから、全部をクリアするものはなかなか見つかりません。

量販店で扱っているものの大半は、値段は安くて軽いのですが、その分作りはお粗末。破けやすく、雨漏りもしやすい。通気が悪く蒸し蒸しして、夏にはさぞかし寝苦しいのではないかと・・・勝手に想像してすみません。

いろいろなグッズの中でも、まず壊れることはなく買い直すことはないだろうという物で、絶対に持っていた方がいいもの・・・一つだけ紹介しておきますと、それがマルチプライヤーです。

日本語だと多機能ナイフというような感じでしょうか。通常、ナイフ、ねじ回し、栓抜き、はさみ、やすり、ハンマー、ペンチなどなどが出てきて、いろいろなことに利用出来るわけです。

自分が持っている物は、vicrinoxのスイスアーミーツール。毎回キャンプの度にずいぶんとお世話になりました。最近は、ちょっとした大工作業の時にはこれ一つで十分に仕事が出来てしまうので重宝しています。

15年くらい前にアウトドア専門店で1万円くらいで購入したもので、このシリーズの中では一番簡素なタイプ。それでも、使える機能は盛りだくさん。

プラスドライバー、うろこ落とし、はり外し、スケール、ワイヤーカッター、プライヤー、端子つぶし、金属のごぎり、ナイフ、やすり、缶切りなどなど。

いいものは長く使える、という見本みたいなツールです。アウトドアでもインドアでも、これ一つでたいていのことが出来るんですから、ひとつ持っていて損はありません。ただし、ナイフの刃の長さが8cmくらいありますから、下手に持ち歩くと銃刀法違反になるので注意。

2013年2月15日金曜日

いまどきの医学教育

昔と今では医学部の教育というのも、ずいぶんと違っているんでしょう。

自分が学生だった頃、つまり昭和50年代後半ですが、この頃はひたすら教授や助教授という偉い方々が講義にくる。それをひたすら聞いて、ノートを取り、本を読んで、そして試験を受けるの繰り返しでした。

本来、大学というところは特定の専門分野を教えたい人が、教わりたい人に知識を伝授するためのもので、ある意味偏った教育が許される場であるはずです。しかし、医学部は完全な職業訓練学校ですから、医師国家試験に合格してなんぼの世界。

偏った授業ばかりしていたら、国家試験の合格率が下がってしまいます。当然、国家試験予備校として、広く浅く勉強させることが求められることになります。

5年生の前半まで、通常の講義はほぼ完結して、臨床実習と平行して、各科の復習授業が始まり、6年生の夏までに全課程が終了しました。そして、最後の半年は完全なる試験対策の総復習。一度に3科目くらいを2週間で終了し試験という繰り返しで、いつの間にか卒業。

 しかし、開業医になる数年前から、医学教育というものもだいぶ変わってきたように思います。実際、自分もやったのですが、チューターというシステムがありました。これは、こちらから一つのテーマを与えて学生が自発的に勉強してきて、小グループでその成果について討論をするというもの。

チューターの役目は、学生たちの討論の方向性を修正しながら、最終的に習得させたい内容に導くというもの。ですから、基本的には口出しはしません。学生たちが自から考える力を培っていくことが重要で、あくまでもチューターはその手助けをするだけです。

必要とされる医学の知識が膨大になるにつれて、単純に教えられることには限界が出てきました。そこで、学生には考えることで、一つのことから十のことを学んでもらう力をつけてもらうということなんだと思います。

こういうシステムもすでに10年以上経ったわけですから、今も医学教育の中でどのような展開がされているかは自分にはわかりませんが、より重要性を増している部分なんだろうと思います。

また、卒後すぐの研修医に対しても、10年くらい前から指導医というものがつくようになりました。自分も泊まりがけの研修に参加して、資格を取りました。ここでも、指導するやり方について、できるだけ研修医が自ら考えて行動するようにすることが大事と言われました。

何にしても、自ら問題を発見し、努力して解決していく力というものが重視される時代になり、そういう力を持たない医師は淘汰されていくような時代になっているということなんだと思います。これから医学部を目指す、あるいは医学部で勉学に励んでいる学生の方には、その点を十分に認識しておいてもらいたいと思います。

2013年2月14日木曜日

豆チョコ

バレンタイン・デイでした。いやいや、もうこういうことに関しては、ほとんど世捨て人同然。朝の時点で、テレビでは変り種チョコレートの話題をやっていたにもかかわらず、そろそろそういう季節なんだくらいの認識しかありませんでした。

でもって、いざ頂き物をもらって「そうか、今日がその日だったか」と初めて気がつくという、まぁずいぶんと情けないところ。そんな渡し甲斐のない奴にもかかわらず、今年は二人の方から頂きました。



とにもかくにも、ありがとうございます。こちらは、まめや 金澤 萬久 のまめ箱にはいった一品。なかなか味のある豆の形の紙箱にはいっていて、大豆にチョコレートをコーティングしたもの。

これだけ、テレビとかでもいろいろな珍しいものを紹介しているのに、まだまだいろいろな風情のある品があるものですね。ピーナッツはよくありますが、大豆というのは食べた事がありません。

これがけっこういけるんですね。節分でもこれを使えば、年の数だけ食べるのも苦じゃないのにと思ったりして。

2013年2月13日水曜日

復旧作業中

どうも今年は雪の予報に振り回されている感じでして、今朝も未明に確かに少しだけ降っていたことは間違いありません。朝には雨になり、通勤通学の時間帯には晴れ間になっていました。

雪の予報が出ると、クリニックに来る方々が「じゃあ、今日のうちに」ということで考えるので、昨日は激混み。そして、その反動で今日は激ヒマということで、なんとも毎日上がり下がりの大きいことになります。

さて、先週のレントゲン写真のサーバー・トラブルはまだまだ尾を引いていて、まだまだいろいろと作業中です。

新しいNASを設置して、すでに新たな撮影した画像はそこに保存しているわけですが、今回の反省でその中身をしっかりと自分で確認できる方法が欲しい。とりあえず、引退同然の古いパソコンを設置して、LANを経由して認識することができました。

ここから外付けのHDDへ確実なバックアップができることを確認できたので、一安心です。ただ、容量的にはどんどん肥大して行くので、どのようにバックアップをするかが問題。ソフトで自動は楽ですが、今回のように「そのつもり」だけで、実は稼動していないなんてこともありうるし。

レントゲン撮影したパネルから電子信号として画像を読み出す装置本体にかなりの画像がたまっているので、これで診療はこなせるのですが、ここからサーバーに画像を送り出すのが・・・なんと、一枚一枚の画像を受動でしか再送出できない。

これは愕然としました。本体のストレージは満タン状態ですから、毎日撮影した分、古いものから消えていく 。ですから、とにかく大変でも毎日すこしずつでも、古いものから手動で作業しないとしょうがない。

数日前にメーカーの保守に頼んで、中身のソフトウェアをアップデートしてもらい、何とか一度に送出する形を今日できました・・・というか、今晩夜通しやっているはずです。なにしろ何千枚もの画像データなので、半日近くかかるんではないでしょうか。

もう一つ忘れてはいけないのが、他院からの画像の保管。いままで、電子データでもらったものは、IDを当院のものに変えて、同じサーバーに保管していたのです。このCDだけでも、バカにならない量なんです。ざっと見ただけでも、数百枚のCDがあり、これを一枚一枚入れては保存しなおすしかありません。

まだまだやる事は山ほどあるんですが、とりあえず明日からは患者さんのたびに前の写真を送り出すだすことはしなくてもよくなるだけでも、だいぶ前進ということになりますね。

2013年2月12日火曜日

キャシー先生

何故か最近クリニックでブーム(?)なのが「キャシー先生」のこと。

キャシー先生といっても、医者ではありません。キルティングの先生。しかも、ハワイアン・キルトの日本における第一人者として有名。

ひょんなことから、キルトで作られたタペストリーを入手しました。しかも、先生ご本人の直筆サイン入りです。クリニックの壁に飾らさせていただきました。

もとのグラデュエーション染めも見事ですが、それをいかしてキルティングの模様の造詣は素晴らしいものです。

ちなみにキャシー先生は、昭和の人間には誰でも知っているお馴染みの方


2013年2月11日月曜日

完全休養日

今日は建国記念日。祝日。

と、いうことは・・・クリニックは休診。バイトの当直もなし。家のこともほとんどすることなく、完全な休養ということにさせてもらいました。

先週は、いろいろあったクリニックのトラブルの影響でだいぶ疲れがたまって、自分としては珍しくイライラ気味。

一日中、のんびりしてだいぶ生き返ってきました。そんなわけで、ブログも短め。さぁ、明日からまたがんばるぞっ、というところです。

2013年2月10日日曜日

東急嶮山再開発

長らく横浜市青葉区のこの地域で唯一のランドマークであった剣山スポーツガーデンが、去年広大な敷地の中で整理・統合・移転して、ものすごい広さの空き地ができました。

地元民としては、何ができるのか楽しみと言えば楽しみ。物によっては不安。なんとも複雑なところです。とりあえず、看板がたったのでわかったところでは、ユニディというホームセンターができることははっきりしました。

もちろん、いくら巨大な店舗としても有り余る面積の空き地ですから、それだけではありません。あとは、東急が独自でショッピングモールを作るようです。

噂では、大きな電気店が入るとか・・・と言ったら、今時Y電機くらいしか思いつきません。ただし、すでに青葉区内には、国道沿いにすでに2店舗ありますからどうなんでしょうか。

スポーツガーデンとの連動で、スパ施設や、今まで無かったスポーツジムなんかも登場する(港北ニュータウンのminamoみたいな)ことも予想されます。

いずれにしても、様々なお店が入るような巨大なものができるはずで、その結果として・・・車の渋滞が発生することは間違いない。国道からは数キロ離れていて、住宅街のちょっと広い道という程度の道路事情ですから、これが一番心配。

さらに、 噂ですけど、ちょっと離れたところにすすき野東急という、主としてスーパーですけど、これが無くなるらしい。そりゃ、ほんの1キロ程度のところに、これだけの施設を作るなら整理するのは当たり前。

すすき野はずっとこの地域の商業地として、かろうじて栄えている場所ですが、東急が無くなると一気にひなびてしまいそうで心配です。

一番端っこにはコンビニがいち早くできるのですが、何にしてもこういう巨大施設は便利ですが、地元民としては心配の方が多いもんなんですね。

2013年2月9日土曜日

告発

日本の社会的な問題で、最近特に議論されているのが体罰について。高校生が体罰を理由に自殺したとされたのがきっかけで、オリンピック女子柔道の選手たちが監督の体罰を告発して注目されています。

女子柔道選手たちの問題は、なかなか組織内で訴えても改善がないということでしょうか。ついにオリンピック委員会に駆け込み、さらにメディアを通じて公のものとなりました。

その結果、監督や柔道連盟役員を辞任に追い込み、社会的な制裁を加える事になりました。しかし、代理人の弁護士を通じて、柔道界の体質改善を求める趣旨の会見を行い。形の上では、追及の手を緩めていません。

これに対して、各界のいわゆる知識人からは問題を提起した15名の女子柔道選手の氏名の公表に対して様々な意見が出始めています。

もともと選手たちが、どの程度の変化を期待していたのか、監督や役員の辞任という現在の結果についてどう考えているのか。 そのあたりがまったく見えてこない以上、現状では選手たちは表にでるべきという意見に自分は賛成します。

おそらくほとんどの選手たちはもうこどもではありませんから、柔道界全体の改革につながる運動までエスカレートさせるのであれば、相応の社会的責任を分担する義務があると考えます。このことは、すでに国際的な問題にまで発展しつつあり、場合によってはスポーツ全体のあり方にまで波及するかもしれません。

選手たちが今後も、今回の問題の影響なくスポーツをするための担保が保証されていないという理由で氏名公表を否定的に考える意見もありますが、自分としては公表されたからといって、その選手たちを否定的にみるつもりはありません。

むしろ、今回のことを起こした勇気を評価してさらにがんばってもらいたいと応援したい気持ちがあります。むしろ、このまま陰に隠れたまま・・・つまり匿名での状態のままでは、一方的でフェアではない。監督の「体罰」が、暴力だったのか通常の指導の範囲だったのかすら疑念が生じかねません。

内部告発全般に言える問題なのでしょうが、突き詰めていくとどんどん難しくなっていきます。告発することは相当の勇気がいることでしょぅし、告発した事で不利益を被る可能性があることは否定できません。

今回の女子柔道問題で、周りがどのように選手たちに対応するのか、そして柔道界内部がどのように受け止め行動するのかが、今後スポーツにとどまらず様々な社会における告発に対しての見本となるような結果に収束することを期待したいと思います。

2013年2月8日金曜日

トラブル

クリニックの院長というのも、いやいやなかなかどうして大変なんです。自分で好きでやっていて、何言っていると怒られてしまうかもしれませんが、実際そうなんだから時々ぼやきたくなるんです。

この何年か勤務医は大変で、開業医は儲けて楽しているみたいにいわれ続けていますが、自分もそういう勤務医を長年続けてきたわけで・・・まぁ、そのあたりを言ってもしょうがないのですが。

今日は何をぼやきたいかというと、クリニックを円滑に運営していくための道具の話。もともと、電脳クリニックを目指してコンピュータを利用できるところは、可能な限り導入してペーパーレスを目指していました。

ただし医療は相手が人間、究極のアナログマシーンですから、完全デジタル化は不可能であるという前提は厳然たるものとして存在しています。そこを忘れると、機械に使われる情けないことになってしまう。

その情けない状態が連続的に起こって、もう心的ストレスが溜まりに溜まってしまいました。毎日の忙しさの中で、機械は必ず壊れるという大原則を忘れていた自分が悪いんですけどね。だいたい丸7年をすぎて、当然壊れて当たり前みたいなところ。

まず2週間前に、診察券を印刷する特殊なプリンターが故障。カードを送るローラーがだめで、印刷するときにインクリボンを巻き込んでしまい、消耗的な故障です。急遽手書きで対応するようにしましたが、スタッフの意見も考えて今後はカードを作り直して手書きでいくことにしました。

なにしろプリンターだけでも、数十万円。またクリック一つで印刷されるのはいいのですが、簡単すぎてミスプリントの発生もバカにならない。今使用しているカードが残り少ないし、多くのクリニックが手書きであるということで思い切って決断したわけです。

先週は、受付で領収書や処方箋を印刷しているレーザープリンターが故障。トナーを変えてもだめ。ドラムをかえてもだめ。実はこういうときのために、まったくの新品用意しているんです。

さっそく機械を入れ替えて、電子カルテ会社に連絡してリモートメンテナンスに緊急で入ってもらい設定を調整して復活しました。この間、何人かの患者さんには手書きで対応してことなきをえました。

レザープリンターの本体は15000円程度。トナーとドラムで2万円超えるんですから、新品買ったほうが安いというわけで、用意しておいてよかったわぁ~。またいざという時の手書き対応もなんとかうまくこなせてよかったけど、その間はかなりのストレスでした。

そしてきわめつけは、今週はじめにレントゲン画像を保存するためのサーバートラブルが発生しました。これもこの手のものとしては破格の安い機械を導入していたんですが、故障したのが任意に取り付けるNASの部分だったので、メーカー対応外。

とりあえず予備のNASと交換して、電話で設定の仕方をおしえてもらい何とかしようできるようになるまで数十分。これは直接診療をストップさせるもので、一番あせりまくったわけです。

そこから続いているのが、今までにとりためた画像の復旧。本体からの再度の送り出し、バックアップからの抽出などをやっているのですが、なにしろ一枚一枚手作業的なやり方しかないので、もう気が遠くなるし手は痛くなってくる。

さらに故障したNASの復旧も試みているのですが、これがまた簡単にはいかないわけで、もう涙涙の数日を過ごしているんです。さすがに、自分でメンテナンスするような方式には限界を感じるわけで、お金がかかってもこういうことは楽をしたいと思うようになりました。

そんなわけで、クリニックの院長というのも、いやいやなかなかどうして大変なんです、というわけでした。

2013年2月7日木曜日

骨粗しょう症とロコモティブ・シンドローム

今日はケアプラザで、介護事業に関係する方々向けの講演を行ってきました。ケアプラザというのは、横浜市社会福祉協議会が運営する介護の拠点で、2007年から協力医という形でちょっとだけお手伝いをしています。

毎年必ず一度はこういう講演を行っていますが、今回は「骨粗しょう症の最新の治療」について解説してほしいというテーマをいただきました。

いつも、関節リウマチについては21世紀になって、どんどん進化が続き勉強するのが大変と書いていますが、もちろん骨粗しょう症についても、それなりに変化があるんです。

数年前までは、骨粗しょう症というのは骨密度の低下という概念でよかったのですが、今は違います。最新の定義は「骨密度と骨質の異常により骨強度が低下して、骨折の危険が増した状態」となっています。

近年、硬い骨の網目の間をつないでいるコラーゲンが注目され、建物で言えば鉄骨だけではなく、間を埋めているコンクリートにも注目しようということです。

治療についても、副甲状腺ホルモン剤という、積極的に骨形成を促進できる薬が使われるようになって、より強力に骨粗しょう症を改善することが可能になりました。ただし、自分で注射をするタイプなので、誰にでも簡単に処方するわけにはいきません。

日本では整形外科学会が推進しているのが、「ロコモティブシンドローム」という概念。骨粗しょう症を中心に、加齢と共に体の機能が低下してだんだん日常生活の能力が低下してくる運動器の状態の総称です。

寝たきり状態になって、どんどん機能が落ちていく状態は「廃用症候群」という言葉が以前から使われていました。ロコモティブは寝たきりになる前の段階についての考え方で、これは高齢化社会になり、より元気な状態を保つ事か重要視されていることが基本にあります。

ロコモティブ・シンドロームの範疇に入らない状態は、屋内でつまづかない、手すり無しで階段を上がれる、15分以上続けて歩ける、横断歩道を無理なく渡れる、片足立ちで靴下を履ける、2キロの重さの買い物ができる、掃除機の使用や布団の上げ下ろしができる、といった項目でチェックします。

メタボリック・シンドロームも同様ですが、21世紀になって医学会は「病気の予防」ということにも注目するようになったわけですが、これは医療費の増大にたいしての社会的な要請ということが大きい。

病気そのものの治療よりも、病気を予防して減らす事が、医療にかかる費用を抑制できるということだと理解していますが、高齢化に対して病的状態が増える事は避けられないわけで、こういう予防概念を導入することで実質的に医療費の増加傾向に歯止めがかかるのかはまだまだわかりません。

いずれにしても、寝たきりで長生きをしてもしょうがないわけで、普通に生活ができる健康寿命を延ばすことが大変重要です。一人一人が、健康寿命の延長に向けて意識するところから始めたいものです。

2013年2月6日水曜日

空騒ぎ

昨日から、夜から大雪になりますみたいな天気予報がどんどん出てくるもんで、今朝はけっこうびびりながら起床しました。

だいたいテレビとかのニュースなどでも、さんざん盛り上げてくれました。クリニックのスタッフが来れなかったらどうしようかと、あーだこーだといろいろ対策を考えたりしていたわけです。

自宅の付近では、5時台は雨で、6時台からちらほらと雪になり始め、出かける頃にはうっすらと雪が積もり始めました。まぁ、太い道についてはこのくらいは問題ないレベルと思ったのですが、家の周囲は道がシャーベット状態で、けっこう危険。

このまま、どうせ降り続けるならばと、チェーンを装着したわけです。でも、やっぱり少し走って、車の通りが多い道では必要ありません。

しばらく走っていると、通学途中の小学生が、自分の車の下を指差して笑ってるんです。こいつら、雪の怖さをしらないな。安全のために慎重になる事をバカにしちゃいかんと思いつつ、ぐっとがまんしてクリニックに到着。

午前中は、多少の「らしさ」はあったものの、昼までには完全に雨。道にもまったくそれらしいところはなし。天気の予報をした人を責めるつもりはありませんが、今年は1月14日の初雪が予想できずに影響が大きかっただけに、ややトラウマ気味になっているのかも。

とりあえず、タイヤ・チェーンの装着に10分、取り外すのに5分。年に数回のことですから、練習をしたと思えば・・・まぁいいか。

2013年2月5日火曜日

リウマチ薬の全例登録

日本の医薬品の歴史で、特異的だったのが関節リウマチ治療薬として1999年に登場したリウマトレックスという薬。

通常の医薬品は、動物実験 → 健康な人への投与 → 実際の病気の人への投与という3段階の治験を行った上で、厚労省に認可申請され半年から1年くらいかけて効果と安全性を審査された上市販されます。

 それまでは、市販されると医師は一定の用量・用法の中で自由に使えるわけで、特に使用に際して特別な制限はありませんでした。

リウマトレックスはもともと抗がん剤として使用していたメソトレキサートという成分で、当然副作用については深刻な物が出てしまう可能性があり、誰もが勝手に使える状態は大変に心配されたのです。

そこで、製薬会社は必ず製品説明を行い「確かに説明を聞きましたよ」という内容の書面に医師の署名を求めたのです。これは画期的なことで、ある意味副作用のような問題は使った医師の側に相応のリスク分担を求めたということでしょうか。

次に登場した2003年のレミケードという本邦初の生物学的製剤では、署名だけではなくさらにリウマチを専門的に扱っている医療機関に限定し、その上使用する患者をすべて登録して効果・副作用をしっかりと調査することになりました。

市販後にもかかわらず、ほとんど治験の続きとも言える扱いに、医師は最初は戸惑いました。しかし、現実の治療の中では治験だけではわからないデータがいろいろ出てくるにしたがって、このような全例登録というシステムが、安全に薬を使っていく上で大変役に立つことがわかったのです。

 続いて2005年に登場したエンブレルでは、使用は専門医に限るという制約まで追加され、より厳しい条件が付加されたのです。その後に登場する、ヒュミラ、アクテムラ、オレンシアという生物学的製剤についても同様の扱いがされ、ある意味医師・患者双方にとって安全の担保となったわけです。

ところが、昨年登場したシンポニー、そして今春発売されるシムジアという生物学的製剤については厚労省からの全例登録の義務が課せられていません。これはどういうことでしょぅか。

実際には、製薬会社が独自の判断で登録制度を運用することになっています。ただし、公的な義務がないことですから、より緩いシステムになることは避けられません。

関節リウマチ治療では、21世紀になってから急激な変革が続いており、変形をきたすことも少なくなり、正直言って外科的な要素・・・つまり手術を必要とすることは少なくなっています。そして、呼吸器系の合併症の問題や、最近ではウイルス性肝炎との関係も把握しなければならず、内科的側面が強まっています。

公的な全例登録が無くなって、より広く薬を使えるようになり製薬会社はバンザイでしょうし、患者さんも特定の施設でなくても治療を受けられるようになるのは一見いいことのように見えます。

しかし、より専門的な要素が強まっている治療がどんどん安易に門を開いてしまうことは、大変大きな危険をはらんでいると言わざるをえません。自分で言うのもなんですが、リウマチ専門医を自称するからには、相当な努力をしているつもりです。少なくとも、とりあえず使ってみましょうというような安易な使い方は絶対にできないのです。

厚労省は全例登録を課すことの責任を、再び製薬会社や使用する医師の側に戻したということでしょうか。少なくとも、規制緩和というような安易な言葉で説明できることではありません。医師の側は、より次から次へと出てくる様々な情報をできるだけキャッチするための網を張り巡らせないといけません。

2013年2月4日月曜日

大空港 (1970)

70年代には、いわゆるパニック映画という娯楽映画が流行しました。何気ない日常的な風景の中に、突然事件・事故がおこり、恐怖に駆られた一般の人々が逃げ惑うという設定で、たいていスーパーマン的な人物が現れなんとか窮地を救うというもの。

うがった見方をすると、60年代にベトナム戦争の泥沼に入り込んだアメリカの心の闇が社会的に問題になり出すのが70年代。単純な平和な日常がもろく崩れ去る恐怖を、多くのアメリカ人が感じ始めていた時代なのかもしれません。

「大空港」という映画は、そういったパニック映画の元祖という位置づけ。グラントホテル形式の、大スターが顔をそろえ、パニックになった時に見える本当の人物像を熱演します。

大雪のためにてんやわんやになるなか、冷静に対処する空港長がバート・ランカスター。その愛人で空港の有能なグランドスタッフにジーン・セバーグ。実際に雪をなんとかしようと、滑走路で除雪作業にあたる現場の指揮官がジョージ・ケネディ。

仕事がうまくいかず自殺するために爆弾を持って男が乗り込む飛行機のパイロットがディーン・マーチン、その恋人のスチュワーデスがジャクリーン・ビセット。自殺男の奥さんはモーリン・スティプルトン。

もともと、アーサー・ヘイリーの原作をベースにジョージ・シートンが監督し、大変中身の濃い充実した作品になった。このあとシリーズ化されましたが、あとは単なるパニックを見せるためだけのもので、人間ドラマとして成功したのはこの最初の一本だけでしょう。

2013年2月3日日曜日

大脱走 (1963)

監督がジョン・スタージェス、音楽がエルマー・バンスタイン、そして主演がスティーブ・マックイーンとくると、どうしてももう一本忘れてはいけない映画がありました。

第2次世界大戦中にベルリン郊外の捕虜収容施設から、連合軍兵士が大勢脱走した実際にあった話をもとにした映画。事実は76名の脱走者のうち、逃げ延びて生存が確認されたのは3名と言われています。

マックイーンは主演俳優ですが、この映画では脱走する一人一人がドラマであって、オールスターキャストで登場人物のすべてが主演のようなももの。

マックイーンの他には、リチャード・アッテンボロー、ジェームズ・ガーナー、デヴィッド・マッカラム、チャールス・ブロンソン、ドナルド・ブレザンス、ジェームス・コバーンなど、そうそうたるメンバーが揃っている。

マックイーンの役所は「独房王」と呼ばれ、前にいた収容所でも何度も脱走を試み、そのたびに独房にいれられるアメリカ人パイロット。独房ではグローブとボールを持ち込み、壁を相手にキャッチボールを続ける。初めは他の捕虜とは協力しようとせず、一人で脱走しようとしていだ、しだいに仲間意識をもちだす。

脱走後にバイクで走り回るシーンは有名で、スティーブ・マックイーンが本当にかっこよかった。ただし、最後には自由を目前にしてドイツ軍に囲まれてしまう。映画には無いが、当然そのあとは悲劇が待っていたはず。

しかし、この映画では脱走の悲惨な結果を世に示すことが目的ではなく、限りなく困難な環境の元で生死を賭けて一つのことを成し遂げる男達の記録を映像化することがテーマなのです。

ほぼ3時間の映画ですが、本当に一気に見終えることができる素晴らしい作品だと思います。登場人物が多くても、元となる実話があるために、大きな筋が通っていることが成功の理由なんでしょうね。


2013年2月2日土曜日

荒野の七人 (1960)

アクション西部劇が得意なジョン・スタージェスが監督した、超有名なアメリカ映画。興行的にも大ヒットしたわけですが、日本人的には黒澤明監督の「七人の侍」のリメイクであることから注目度が高かった。

黒澤作品のストーリーのエッセンスをうまく取り込みつつ、西部劇としてしっかりと成立させたところはなかなかのもの。本家の登場人物をうまくミックスしたキャラクターを生み出し、さらにオリジナルのガンマンも配することで、アメリカ人にも理解しやすくなっています。

なにしろ、外国人にとって最も理解しにくいのは、命を賭けて村を助ける根拠。黒澤版は武士としての誇りが、彼らを動かすわけで、こればかりは今の日本人ですらなかなか理解できないでしょう。

こちらの映画では、そこはしっかりと変えてあって、目的は金。こんな合理的なことはない。それでも、金だけで命を投げ出すことはできないわけで、それなりの正義というものが残っているところが見ている者の共感を呼ぶところ。

当時は、まだまだ無名に近い俳優が集められたのですが、ユル・ブリンナー、スティーブ・マックイーン、チャールス・ブロンソン、ジェームズ・コバーン、ロバート・ヴォーンというそうそうたる面子が揃っていて、かなり見応えがあります。

エルマー・バンスタインの作ったテーマ曲も有名になって、この曲が響くと思わず身を乗り出したくなるのは典型的な昭和人でしょうか。

2013年2月1日金曜日

荒野の用心棒 (1964)

もう言わずと知れた映画の一つ。例えば、いわゆる「マカロニ・ウェスタン」の原点であり、クリント・イーストウッドを一躍スターにした出世作。さらに、黒澤明監督作品の「用心棒」を勝手に西部劇にリメイクしたことでも知られています。

黒澤の「用心棒」とは、ストーリーや設定、登場人物のキャラクターなど、ほぼまったくと言っていいほど同じ作り。三船敏郎の桑畑三十郎がクリント・イーストウッドの「名無し」になって、まぁ、よくぞここまでそっくり作り上げたことか。

・・・なんですが、にもかかわらず、これがいい。イーストウッドは当時、アメリカ本国で今ひとつぱっとしない。イタリアに渡って、西部劇もどきを作るなんてのは、実際のところけっこうプライドを傷つけられたんじゃないでしょうか。

宍戸錠とかが、北海道の牧場でガンマンになっているのは訳が違います。もともとテレビ版西部劇の名作「ローハイド」で名前を売った経歴があるんですから、こんなまがいものに出るんじゃ、さぞかし面白くない。

そんな理由かどうかはわかりませんが、オリジナルの三船よりも、全編とにかく苦虫噛みつぶしたみたいな顔をして、より凄腕の流れ者という雰囲気が完成されている。

映画としても、ジョン・ウェインの正統派西部劇と比べて、まさに荒野の雰囲気が強く、ガンファイトよりも人間としてのアクションが派手に展開するところがいいんじゃないかと。

もう、ほとんど半世紀前のフィルムですけど、黒澤作品と似て非なる独特のマカロニ・ウェスタンの世界は棄てた物ではありません。それに比べて、「椿三十郎」の森田芳光監督・織田裕二主演のリメイクは一体何なのでしょうか。まったく同じ台本で、まったく同じセリフ。反省してもらいたもんです。