2013年5月27日月曜日

J.Galway & M.Argerich / Franck・Prokofiev Sonata

音楽を聴いていると、お気に入りの演奏家というものが出てくるもの。そのうち何人かは、全デイコグラフィを制覇してみたくなってくることはよくあることで、それがマニアの始まり、いわゆるコレクターの仲間入り。

自分の場合、洋楽ではエリック・クラプトン、邦楽では松たか子。何ともいえないバランスですが、好きだからしょうがない。ジャズの場合は、もちろんマイルス・デイビスがだんとつで一番ですが、もう一人ビル・エバンスを忘れてはいけない。

こういう時に、あまりマイナーな人を好きになると集めるのが大変。メジャーだからと言って、特にブートレグに手を出したら、もう地獄のような底なし沼になりかねない。

クラシックの場合は、さらに困った事にいろいろなタイミングの録音が入り交ざったバージョンが多数存在するのが当たり前で、CDごとに集めようと思ってもどこまでいけばいいのか分からないことがしばしば。

さらに、聴きたいとも思わない他の人の演奏とカップリングされていたりすると、購入意欲は激減するものの、そういうのに限って名演奏だったりして、ホント困りものです。

クラシックで制覇したい一人は、グレン・グールド。この人の場合は、比較的簡単。すでに亡くなっているので、基本的に新しいものはめったに出てこないので限りがあるということ。さらに、原則としてコロンビアに生涯専属で録音していたので、カタログがはっきりしている。さらに、早くにコンサート活動をやめてしまったので、ライブ録音があとから出てくる心配がほとんどない。

それに比べて、制覇したいもう一人、マルタ・アルゲリッチの場合は困りもの。数年前に、ドイツ・グラマフォンが、アルバム単位を崩さずに40枚のCDで過去の集大成をしてくれたので、これは大変分かりやすい。とは言っても、それはあくまでアルゲリッチ名義のものについてだけ。やたらとある共演盤の大多数は、個別に拾い上げていくしかありません。

グラマフォンに倣って、EMIレーベルも集大成を出してくれたのは良かったのですが、じつはこれいわゆるベスト盤だったのです。どこのアルバムに入っているかを確認するので一苦労。丸々CD一枚分入っているものもあれば、まったく入ってこないアルバムも出てきたりする。

さらに困った事に、最近のアルバムは毎年のルガーノ音楽祭のライブが中心なのですが、アルゲリッチが加わっていない演奏もCDに含まれている。またEMIも最初のうちは、いろいろな形で分散して発売していたので、もう複雑怪奇な状態になっている。

ネットには、それらを事細かに調べ上げてくれている人がいるので、そういう資料を一つ一つ虱潰しに探していくしかないのですが、これがまたライブが多くて、さすがに全部を集めると言うのは難しいし、だいいち古いものは入手困難です。

というわけで、最近比較的珍しいレーベルからお宝の演奏を協奏曲と独奏で紹介しましたが、今回のお勧めは室内楽。今はSONYに吸収されてしまって無くなってしまいましたが、レッドシールで有名だったRCAへの吹き込みの一枚。

フランクのフルート・ソナタを、名手ゴールウェイと録音したもの。フランクにフルート・ソナタなんてあったかしら、と思ったあなた。あなたは正しい。そう、これは有名なバイオリン・ソナタのフルート版です。

アルゲリッチは、通常のバイオリンとの共演はいくつも録音しています。他に、マイスキーとのチェロ版というのもある。フルート版は、音色がやさしくて、比較的聴きやすくもともとフルート用に作曲されたのかもと勘違いしそうな出来。

アルゲリッチの室内楽としては、録音されたものとしては最初が72年にアッカルドとやはりフランクのソナタ。次が75年のこのフルート版で、そして次が76年のギトリスとのフランクと、すべて同じ曲と言うのも興味深い。

77年以降は、いろいろなピアノ・デュオを中心に室内楽の録音がどんどん増えていき、83年のシューマンを最後に2000年までソロのアルバムは消えてしまいます。

プライベートの事情とかもあるでしょうが、このフランクのソナタの中に、アルゲリッチをいろいろな室内楽へ走らせた何かがあるような気がします。そう思って聴いてみるのも、また一つ何かクラシックの楽しみになったりするわけです。