2013年5月12日日曜日

Maria=Joao Pires / Mozart Complete Sonatas

自分の場合、クラシック音楽については、主としてピアノ独奏曲、または小編成の室内楽を中心に聴いていて、どちらかというと演奏者の独自の自由な解釈による違いが楽しかったりします。

特にピアノは、一人で単音ね和音も出せ、ペダルの使用などもあって、実に表現が豊か。演奏者の個性が端的に出てくるので、いろいろと掘り下げていくと、なかなか底が見えてこないものです。

独断で代表的なピアノ曲作曲家を選び出すと、最初がバッハ。続いてモーツァルト、そしてベートーヴェン。そして、ショパン、シューベルト、シューマンの、合わせて6人が自分が聞き込む対象になりそうです。

中でも、モーツァルト、ベートーヴェン、シューベルトの三人は、多くのピアノ・ソナタを残した作曲家として特別な存在。今のピアノの原型は、モーツァルトの時代、どんどん進歩したのがベートーヴェンの時代、そしてピアノのハードとソフトの完成型がシューベルト。

さて、まずはモーツァルトですが、モーツァルトはどこを切っても金太郎飴的な曲がピアノソナタにも並んでいる。全体的な印象としては、ポンポンはじけるような軽快さの中に、思わず口ずさみたくなるようなメロディがちりばめられている。

最初に、リリー・クラウスの全集を聴いて、何ともチャーミングで嫌味のない演奏に好感を持ちました。続いて、アリシア・デラローチャの熟練の味に感心して、グールドのモーツァルトをおちょくったような演奏で驚いた。

古くはギーセキングやヘブラーの名盤。内田光子の深みのあるモーツァルトもいいし、ロナルド・ブラウティガムの古楽器の味も悪くはない。他にも、山ほど全集はあるのですが、一応現段階で自分の中でベストはマリア=ジョアン・ピリスの二度目の全集。

実に大人のモーツァルトで、軽やかさの中に思慮深さがあるというとわかったみたいな言い方ですが、ごどもの練習曲みたいなところも、聴いていて気持ちの良い風が吹き抜けていくような印象なんです。

ピリスは、アラウ、アルゲリッチなどと一緒で南米出身。彼らは、ヨーロッパ音楽を客観的に見る事ができて、そこへ天性のラテンの感覚をさりげなく混ぜているのでしょうか。基本的に、自分の好みに合う。

今のところ、ドイツ・グラマフォンから格安のボックスセットが出回っています。おそらく、今後もスタンダードな全集の一つとしてカタログから消える事は無いと思いますが、まだ聴いていないという方には、是非推薦したい必聴セットです。