2013年7月19日金曜日

Moz-Art Quartet / Rachmaninov String Quartets

ラフマニノフはピアニストとしての成功がベースにあり、作曲についてもピアノを生かしたものが評価が高い。代表作としては、ピアノ協奏曲や独奏曲があげられるのが普通です。

室内楽では、比較的演奏される機会が多いのが、チェロ・ソナタとピアノ三重奏曲。いずれも、哀愁にみちた印象的なテーマで、その美しさは誰もが楽しめるものでしょう。

また、もともと歌曲として作られた「ボーカリース」も大変綺麗な曲で、チェロで演奏されたり、また本人によりオーケストラ用編曲があったりして、代表作の一つに入れてもおかしくない名曲でしょう。

基本的に、これらはいずれもピアノが効果的に使用され、ピアニストとしての面目躍如というところ。ピアノが出てこないものとしては、3つの交響曲が知られていますが、実は弦楽四重奏が無い。

無い・・・というのは正確には間違いで、実際のところ2つの弦楽四重奏曲が残されています。ところが、いずれも第2楽章までしか完成しておらず、何らかの理由で途中で断筆して完成していません。

第1番は1889年、16歳の時の作品。第2番は1896年、23歳の時の作品です。第1番は、当時の学校での課題として出されたものらしく、それでもラフマニノフらしい美しい曲で、2楽章しか無くても十分に楽しめます。

第2番は、ピアノ協奏曲第1番やピアノ三重奏曲の成功の後、再度挑戦したものでしょう。しかし、交響曲第1番の酷評により、精神的に大きなダメージを受け、おそらくこの弦楽四重奏曲第2番も途中で書けなくなったのでしょう。

その後、28歳でピアノ協奏曲第2番により復活した後も、ラフマニノフは二度と弦楽四重奏を完成させることも、新たに作曲する事も無く、二度とこのジャンルには手を染めませんでした。

当然、録音もきわめて少なく、あまり演奏を選り好みすることはできませんが、Amazonで最初に見つけたアルバムを手に入れました。これは2つの未完の弦楽四重奏と、弦楽四重奏で歌曲の伴奏をするという企画の抱き合わせで、けっこう面白い。

演奏しているのはモツ-アート四重奏団という、あまり聞いた事が無いグループ。モツ-アートというのはMoz-Artと書くので、ハイフンを抜くとMozart(モーツァルト)ですから、なかなか洒落たネーミングです。まぁ、可もなし不可もなしというところでしょうか。

とりあえず、ラフマニノフの室内楽は大変少ないので、未完成でもこれらの曲は貴重で、是非一度は聴いておきたい隠れた名曲だと思います。