2014年6月1日日曜日

昇天祭後主日 ~ 教会暦の基本

今日の日曜日は、キリスト教では昇天後主日。何にしても、J.S.バッハのカンタータを教会暦ら沿って聴いていこうと思ったら、キリスト教の暦を知らないと話にならない。

そこで、キリスト教の教会暦を、ちゃんと整理しておきたいと思います。くどいようですが、なんちゃって仏教徒の自分としては、いままでに触れる事のない世界で、どうもぴんとこないことばかり。

基本的にはキリスト教の1年は、待降節(アベント)から始まるんだそうで、これはキリストの誕生を待ち望む期間。クリスマスから4回前の日曜日から始まり、イブの日没まで。この間は、比較的おとなしくしてじっと待つのが基本。

クリスマス・イブの日没とともにミサが始まり、12月25日のクリスマスにキリストが生まれて、降誕節に入ります。最も大きなお祝い事として、ここんとこは派手にいきます。でも、キリストの誕生日が25日かどうかは、確証があるわけではなく、もっとも日が短くなる冬至のあたりで設定して、しだいに日が延びていくようにしたらしい。

一般のグレゴリオ暦で年が明けて、1月6日は公現祭。これもキリストが誕生したことをお祝いするので、クリスマスとの区別が分かりづらい。この日は、東方の三人の博士(あるいは王)がキリストのもとを訪れ捧げ物をしたとされています。

公現祭後は、そのまま日曜日ごとに数えていくか、復活祭から数えて9週前から日曜日からは×旬節と呼んでいます。とくに7週間前からは、はっきりと七旬節、六旬節、五旬節と数え、四旬節になるといよいよ受難に向けての謹慎期間。

復活祭から数えて40日+6日前が「灰の水曜日」と呼ばれる記念日で、この日から実際の謹慎が始まるのだそうで、四旬節になる前に、食べたいだけ食べて飲みたいだけ飲んで騒ごうと言うのが謝肉祭。

キリストの受難のあと復活するのがイースターですが、この日を春分の日の次の満月のすぐ後の日曜日とした(4世紀のニケア公会議)ことが話を複雑にしています。つまり、毎年同じ日ではなく、年によって最大で2ヶ月近いずれがでることになるのです。

復活祭の前の週が受難週とされ、聖×曜日と呼ぶのですが、棕櫚の日曜日にはじまり、特に聖金曜日は、キリストが磔刑になった日とされ、受難のクライマックス。 3日目に復活するキリストを祝って、復活祭の日曜日~火曜日の3日間が過ぎると、キリストは最後の奇跡に向かって教えを広めます。

復活祭から40日後についにキリストは、現世ですべきことをやり終えて、昇天して神となるのが昇天祭。そして復活祭から50日後には、残された使徒らに聖霊が降りてきるんですね(ペンテコステ)。使徒達は、いろいろな国の言葉を話せるようになって(羨ましい!!)、世界中に散らばって布教活動を始めるわけです。

ですから、「キリスト教」のまさに始まりとして重視されているので、聖霊降臨節として特に日曜日と月曜日は祝日になっている。クリスマス、イースター、そしてペンテコステはキリスト教三大記念日と呼ばれています。

翌週の日曜日からは三位一体節が始まりますが、これが長い。始まりの待降節まで続きますので、およそ半年続いてこの間は大きなイベントはあまりありません。

キリスト教からは怒られるかもしれないくらい簡単にすると、これがキリスト教の教会暦の1年間の基本。キリストの誕生日は固定されているのに、復活する「第二の誕生日」が年によって動く事が理解を難しくしていることがわかります。

バッハが昇天祭のために作ったカンタータは3つ。
BWV 37 信じてバプテスマを受くる者は
BWV 128 ただキリストの昇天にのみ
BWV 43  神は喜び叫ぶ声と共に昇り

いずれもライプツィヒ時代のものですが、キリストの昇天、つまり神になったことを祝うためのものですから、全体に華やかで聴き応えがある。

これに昇天祭オラトリオ(BWV 11)を合わせて聴けば、昇天祭はばっちり。

そして、昇天祭後の日曜日のためのカンタータというのもあります。
BWV 44  ひとびと汝らを除名すべし
BWV 183 人びと汝らを除名すべし

ガーディナー先生は、使途不明のカンタータをもう一つ収録しています。
BWV 150 主よ、われ汝を仰ぎ望む

おや? BWV44とBWV183のタイトルが一緒だぞ。確かにどちらも、''Sie werden euch in den Bann tun''なんです。ただし、最初の歌いだしの一節だけは一緒ですが、その後の歌詞は違う。このあたりは、何かありそうですね。

さらに、あれ? と思うことに気がついた。BWV 44の歌いだしがテノールとバスの二重唱なんです。何気なく聴いていましたが、出だしが合唱のことが多く、バッハはアリアと合唱を交互に配する形でまとめるのが普通。

この曲では、二重唱→合唱→アリア→コラール→レシタティボ→アリア→コラールという具合で、配列がばらばら。採用した歌詞の主語や内容によって、歌手の数を決めているようなので、やはりドイツ語の歌詞を理解できないと本当の聴き方はでません。

どうもいろいろな課題が見つかってしまい、ますますカンタータの深い森に迷い込みそうな日曜日です。