2015年5月4日月曜日

BCJで聴くカンタータの森 (2)

この話題に興味を持つ方は、BCJって何? ということは思わないでしょうが、Bach Collegium Japanの略語で、一言で云うと、日本人、鈴木雅明がが率いるJ.S.バッハの曲を中心とした古楽専門の演奏集団のこと。

コレギウムというのは、古代ローマの私的な集団のことで、中世~バロック期のドイツでは、民間の音楽愛好家の団体をコレギウム・ムジークと呼んでいました。特に、バッハは後半生ではライプツィヒのコレギウム・ムジークでの活動を通して、多くの名作を生み出しています。

BCJは、1990年にクリスチャンであり鍵盤楽器奏者の鈴木雅明が創設し、弟でありチェロ、ガンバ奏者である鈴木秀美が主たるサポートをしており、カンタータ全集をはじめとして国際的にも高い評価を受けています。

クラシックのレーベルとしては有名なスウェーデンのBis Recordから、CDのリリースを続けていますが、残念なのはカンタータ・シリーズのジャケット。これほど、デザイン的につまらないものは珍しい。ほとんどが、同じイラストや写真を使いまわして、ケチケチに徹しています。

もっとも、カンタータ全集は企業としても採算がとりづらいわけで、コープマンはERATO、ガーディナーはArchivで始まったプロジェクトが途中で頓挫しており、両者とも自主レーベルを立ち上げて完成させるという困難を経ています。

それを考えると、BCJの場合は、一貫してBisによる高音質な収録、しかも途中からはSACDでのリリースを続けられただけでも価値があるのかもしれません。

さて、BCJのカンタータ全集はVOL.3からワイマール時代に入ります。何しろ、300年も前のことで、作曲時期が確定していること自体不思議なところもありますが、作曲の技法とか、書かれた楽譜の紙質とか、あるいは書簡などの資料などから学者が推定してくれるわけです。

カンタータの場合は、その用途がはっきりしていると推定もしやすいし、特にライプツィヒ時代以後になると教会の記録などからも、初演の時期がかなりはっきりしているものが多い。

ワイマール時代に入ると、オルガン奏者としての活動以外に、1713年からバッハは毎月1曲のカンタータ作曲という仕事が増えます。

VOL.3 1996年収録、栗栖由美子(S)、米良美一(CT)、櫻田亮(T)、ペーター・コーイ(B)
BWV12、BWV54、BWV162、BWV182

VOL.4 1996年収録、鈴木美登里(S)、太刀川明(CT)、櫻田亮(T)、ステファン・シュレケンベルガー(B)
BWV163、BWV165、BWV185、BWV199

ここまではワイマール時代の前半。少しずつ奥行が出てきた感じがしますが、それほどお気に入りというほどの曲はありません。

VOL.5 1997年収録、鈴木美登里(S)、米良美一(CT)、櫻田亮(T)、ペーター・コーイ(B)
BWV18、BWV143、BWV152、BWV155、BWV161

ここから毎月作るところに入ってきて、バッハも「整った教会音楽」というものを意識するようになったのだと思います。

BWV18「天より雨くだり雪おちて」は、出だしのヴィオラの低温の旋律が印象的で、そのあとに続く優雅な響きが心地よいシンフォニアから始まります。レシタティーボとコラール(祈り)が交互に出てくる応答形式の構成が面白い。