2015年5月29日金曜日

混迷するベルリンフィル

ベルリンフィルが揺れています。

クラシック音楽を愛好する者だけでなく、ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団というオーケストラの名前を聞いた事が無いという方は、世界中に数少ないと思います。

1882年創設で、創生期にはブラームスやドヴォルザークも指揮棒を振ったという、歴史ある名門オーケストラで、主として戦前のフルトヴェングラー、戦後のカラヤンによって、超重量級の楽団として、世界の音楽の「スタンダード」のような地位を築きました。

特にカラヤンは"皇帝"と呼ばれ、クラシック音楽の本質を変えてしまったという意見も多く、その功罪はいろいろと議論されるところです。

30年間のカラヤンの支配ののち、楽団の常任指揮者は楽団員が自ら選出するという方法をとることになりました。非公開で、絶対的な守秘義務を課せられた団員が集まって選出する方法は「音楽界のコンクラーヴェ」と呼ばれるほどでした。

カラヤン後、1990年に就任したクラウディオ・アバドは、健康上の理由で残念ながら2002年に辞任。そして、その後を次いだのが、現常任指揮者、サー・サイモン・ラトルです。

ラトルは、カラヤン後、時代遅れで低迷したベルリンフィルを立て直すために、デジタル・コンテンツ配信の導入などの革新を行い、一定の評価を得ることに成功しました。ただし、2018年に契約が終了し、すでにその後は自国のロンドン交響楽団を振ることに決まっています。

今年になって、ラトルの次は誰かという話題が、俄然盛り上がってきました。次期常任指揮者として、巷で噂になっている候補者は、ベルリン出身、ドレスデン国立歌劇場管弦楽団の首席指揮者クリスティアン・ティーレマンと、ラトビア出身、ボストン交響楽団を率いるアンドリス・ネルソンスの二人。

次期次期首席指揮者兼芸術監督を決めるために、5月11日に123名の団員が集まり、まさに「音楽界のコンクラーヴェ」が 行われました。

その結果、楽団幹部が記者会見を行い、「将来の方向性を巡って根本的な意見の隔たりがあった」ため、半日にわたる議論と複数回の投票を行ったが、最終的に選出に失敗したことを明かしました。

ベルリンフィルが「世界一」という自負はある意味カラヤン効果であり、そのカラヤンを切り捨てたのが楽団自ら。そのカラヤンとともに消えるべきだった自負が生き続けていることが、今回の問題にも関係しているのかもしれません。

まだ、時間があるとはいえ、決定は長期化することは必至で、楽団内にも消す事のできない亀裂を残す可能性も取り沙汰されています。

もともと、オーケストラが苦手、しかもベルリンフィルのような超重量級戦車のような分厚い音は好きでない自分としては、どっちでもいいところがあるのですが、クラシック音楽全体の隆盛に影響する問題ですから、無関心ではいられません。