2017年3月25日土曜日

銀嶺の果て (1947)

1947年、東宝作品。監督は谷口千吉。

1947年というと、昭和22年。終戦間もない時期に作られた、邦画としては初めての本格的な山岳映画とされています。

70年も前のこの映画に興味が惹かれるのは、山岳映画であることはもちろんですが、二人の人物に関係があります。

1人目は主演した三船敏郎で、実質的に三船のスクリーン・デヴュー作であり、かつ、いきなりの主役ということ。

2人目は脚本。この映画の脚本は、黒澤明。黒澤はすでに「姿三四郎(1943)」で監督として自立していましたが、脚本のみというのも1950年代まではけっこうあります。

黒澤はこの映画で、三船の荒々しいフレッシュな魅力に目を付け、 「静かなる決闘(1949)」以降多くの作品で三船を主役に使いました。

また、この映画では黒澤作品には無くてはならないもう一人の俳優である志村喬がもう一人の主役として登場し、早くも三船・志村の競演が実現しています。

タイトルが出て、スタッフ、キャストの字幕が出ているバックで、3人の男が銀行強盗をはたらいたことが示されます。そして、「強盗は雪山に逃走」という字幕が出て、物語のシチュエーションが冒頭数分間で説明される手際の良さはさすが。

3人組は旅館に宿泊しますが、怪しまれてさらに雪山の奥深くに逃走。この過程はやや冗漫な印象がありますが、この中で3人の人物設定がはっきりしてくる。

自分本位な若者の三船、リーダーの志村、そして単純なもう一人。3人目は逃走中に発砲してために、雪崩に巻き込まれて消えていきます。

映画のパターンとしてはよくあるのですが、リーダーの志村は、悪者からしだいに心を開いて良い人になっていく。

そして、三船は自己中心的な行動の末自滅していくわけで、三者三様の末路がほぼオール・ロケの雪山の中で描かれていきます。

今からすると、このような筋書きの犯罪物は山ほどあって目新しくなくなりましたが、当時としては十分に斬新な迫力があって観客を魅了しただろうと容易に想像できます。

傑作とは言わないにしても、それなりによくできているのは、脚本の黒澤の力なのかもしれません。それにしても、この頃の三船敏郎ってかっこいい。TOKIOの山口達也と似ていると思うのは自分だけ?