2017年5月29日月曜日

いつまで続くArgerichボックス

昨日書いたグレン・グールドはまだいい。何故かと言うと、基本的に正規の音源はSony Classical(旧CBSソニー、Columbia records)からしか出ていなので、その他については無くてもしかたがないと諦めやすい。

そこで困ったことになっているのがマルタ・アルゲリッチさんの場合。こちらは、ドイツ・クラマフォンがメインではあるのですが、現Werner(旧EMI)からもたくさんの正規盤が出ています。

さらにその他のレーベルから登場したものもかなりあって、そもそも正規盤だけでも把握しかねる事態になっています。

そもそもグールドはとっくに亡くなったので、基本的に増えることはないのですが、アルゲリッチはまだ現役最高峰のピアニストとして活躍中。いまだに新譜も、昔の発掘音源もぞくぞくと登場するため、何が何だかよくわからない状態です。

ある意味正統派、男性ばりの巨匠的な断固たる演奏は、圧倒的で年をとっても衰えることを知りません。残念なのは、年を重ねるにつれ単独ソロの演奏をしなくなってしまったこと。

新規に登場するものは、ほぼピアノ・デュオ、室内楽、協奏曲であり、それもライブばかりです。おちついたスタジオ・セッションでのアルゲリッチのソロをじっくり聴きたいという気持ちはあるんですが、このあたりはあまり期待できません。

いずれにしても、稀代の天才ピアニストであり、アルゲリッチの演奏を網羅して聴くことはクラシック・ファンとしては、ある程度普遍的な到達点の一つです。

10年くらい前に、一番録音が多いドイツ・グラマフォンから、演奏形態別に既発音源が集大成されて順次発売されました。

第一弾がソロでCD8枚、続いて協奏曲で7枚、室内楽で6枚。さらに旧Philipsレーベルで発売された6枚、そして盟友クレメールとマイスキーとの競演盤を集めた13枚という具合で、全部で40枚のアルバムが揃いました。

これに少し遅れてEMIも集大成のシリーズを発売し、こちらはソロ&デュオで6枚、協奏曲で4枚、室内楽で8枚で、合わせて18枚のCDになりますが、アルバム単位ではなく、一部を割愛したベスト盤的な構成でした。ですから、どうしても聞きたいけど含まれていないものもかなりあります。

さて、最近になってまずドイツ・クラマフォンが48枚組の巨大ボックスで2014年までに発売したの音源をすべて網羅しました。先のこれクッションよりも8枚多く、それぞれを単独で買うよりも安い値段でボックスが手に入ります。

ただし、それから1年半くらいでさらに数枚が新たに発売されているので、今ではこの真っ赤な印象的なボックスだけでは全部というわけにはいきません。

EMIはWernerに吸収され、改めてWernerから20枚組のオリジナル・アルバムを網羅したボックスが登場しています。さらに旧RCAや旧ColumbiaのものをまとめたSony Classicalからのボックスもあり、これらで主要アルバムはだいたい手に入ることになります。

ただし、最新の演奏の中心の場であるルガノ音楽祭のものは、EMIの頃から毎年3枚組が登場し、すでに30枚以上になっています。これらは先のボックスには含まれていません。全部にアルゲリッチが参加しているわけではないので、熱心なファンでなければアルゲリッチだけでまとめた抜粋盤がいくつかありますのでそちらでもいいかもしれません。

マイナーなレーベルについても、いくつかはファンとして無視できないものがある。イタリアのIdiというまったく聞いたことが無いレーベルからは断続的に放送音源からと思われる古めの演奏が登場しています。今はほとんど聞けないソロが多いので、ちょっと無視はできません。

いずれにしても、まだまだ現役ですから、これからもCDが増え続けるんだと思いますけど、ある程度たまったところでまた集大成ボックスの登場というのは当然ありうる話。

ただ、どうせならアルゲリッチ自身が好きなショパンやシューマンのピアノ曲全集とか完成させてくれてボックス化しましたみたいな話なら大歓迎です。