2017年5月14日日曜日

Matthias Goerne / Schubert (三大歌曲集他)

当代注目されるバリトン歌手を挙げると、たくさんいるのですが、マティアス・ゲルネの名前は必ず出てくることと思います。

何しろ、ドイツ・リートの世界ではフィッシャーデイスカウというビッグネームの存在が大きすぎて、後進の誰が出てきても比較されてしまい、多少気の毒な感じがしますが、自分のように最近聞き始めた者には、フィッシャーデイスカウの呪縛はありません。

ゲルネは1967年生まれで、まだ40歳代。今が一番脂がのっている時期かもしれません。シューベルトについては、早くから注目されていて、Hyperionの集大成でも「冬の旅」を任されていました。

その後、ブレンデルのピアノでも「冬の旅」を歌い、フィッシャーディスカウ並みに繰り返しシューベルトを録音しています。2000年以降は、Harmonia Mundiに継続的に主だったリートを録音してきました。

ポストリッジが細身長身で縦長のスマートな感じがするのに比較するのは申し訳ないのですが、強面の丸顔で肩幅がある体育会系みたいなビジュアルはちょっと・・・

というわけで、手を出しにくかったのですが、昨年12枚組のボックスとしてまとめられたものが発売されました。これは、食わず嫌いをしている場合じゃありません。

何しろ12枚で3400円という、もうこれを買わずしてどうする的な値段です。今は、もう少し高くなっていますが、それでも破格の廉価であることには変わりありません。

何しろゲルネはドイツ人ですし、しかも先生がフィッシャーデイスカウですから、ドイツ・リートの正当な後継者とも言える立場にあります。

どの盤でも。朗々と響き渡る太いバリトンはすごみがあります。しかし、時にはぐっと抑えた技巧的な面も素人の自分にもよくわかります。

フィッシャーデイスカウの囲いの中からスタートし、その囲いを破れるのはゲルネしかいないのかもしれません。