2017年9月7日木曜日

A.S.von Otter, P.Jordan / Bizet "Carmen"

というわけで、「カルメン」です。

昨日のブログでは、アバド指揮、ベルリンフィルの演奏、アンネ・ソフィー・フォン・オッターの歌で、ビゼーの超有名な歌劇「カルメン」の音楽を復習しました。

これだけ聞いたことがあるメロディーが出てくると、さすがに苦手としているオペラも見たくなるというものです。

「カルメン」はオペラ初心者向けのおすすめとして、だいたい筆頭に位置する作品なのでちょうど良い。

当然、映像化されたものはたくさんあるわけですが、できるだけ手間をかけずに楽しむためには、日本語字幕は必須。その分、新品・中古に限らず値段が高めになるのが悩みどころ。

輸入物DVD、Blurayでは2000円前後で、韓国語・中国語を含む各国語の字幕が入っていることが多い。ところが、日本語字幕入ったものだと日本独自版しかなく6000円程度になることが多い。日本のメーカーの独占的な販売戦略が昔からあるのか、非常に憤りを感じるところです。

それはさておき、数ある中でも、お目当ては2002年グラインドボーン歌劇場での舞台で、アンネ・ソフィー・フォン・オッターが演じる「カルメン」のDVD。幸い、ちょっと古いので、中古の日本版でも3000円くらいで手に入ります。

評判は悪くはありませんし、そもそもフォン・オッターのファン、しかもまともにオペラ鑑賞をほとんどしたことがない者としては、これ以外の選択肢は考えられません。

スペインが舞台で、情熱的な女性、カルメンが主人公ということくらいしかわからなかったのですが、あらすじはネットでいくらでも調べられます。

自由奔放なカルメンは多くの男性から惚れられますが、中でも純粋なドン・ホセは清楚な許嫁がいるにもかかわらず、カルメンの魔性の魅力の虜になってしまいます。ホセは軍を抜けて、強盗団に入ったカルメンを追って、犯罪者の仲間入り。

しかし、カルメンは人気の闘牛士に気が移り、ホセは捨てられる。闘牛士の女としてセレブな生活をしているカルメンのもとに、すべてを失ったホセがやって来て復縁を迫りますが、小競り合いの中でホセはカルメンを刺し殺してしまうのでした。

とにかく、何が驚いたって、今までCDで音だけ、あるいはコンサートの映像で普通に「歌手」と思ってみていたフォン・オッターをはじめとする、出演者が舞台俳優なんだということ。特にこの舞台はオペラ・コミック版と呼ばれる、歌だけでなく台詞の多い形式なのでなおさらです。

以前、頑張って見たモーツァルトのオペラのいくつかは、話の進行上多少の演技はあるものの、基本的には歌を聴くことが主のように感じていました。

ところが、この「カルメン」では、全員が見事な俳優であり、宗教作品を歌うフォン・オッターのイメージをも180゚覆す、ある意味ファンとしては愕然とするステージでした。カルメンは、好き勝手に生き男を次々と変えていく悪女なわけで、フォン・オッターも妖艶で俗人的な欲深い女になり切っている感じです。

特に冒頭、たばこ工場のシーンでは、多くの出演者が実際にたばこの煙を燻らせているところにはかなりびっくりです。フォン・オッターでさえ、歌いながら煙を吐き出してみせたりする。歌手がたばこを吸っていいのかという疑問も感じますが、役になり切るためにそこまでするかというところ。

他の舞台を知りませんから、比較しようがありませんが、指揮のフィリップ・ジョルダンもきびきびした演奏で、間延びするようなところも無く、テンポよく話が進んでいくので、オペラを見たというより普通にミュージカルという印象で、これなら確かに楽しいなと思わせてくれました。