2017年10月19日木曜日

第21回田園都市リウマチフォーラム


田園都市リウマチフォーラムは、自分も世話人の一人になって、リウマチ診療を専門にしている開業医のための勉強会です。

元々、悩んでいる症例を相談する会として始めた会を発展させたものですが、知識を新しい情報にアップデートするために、自分たちが何を知っているべきかを確認できる大事な会です。

ですから、世話人会の中で、今一番ホットに話題は何か、もう一度注目する必要があることは何かなど、リウマチ医として必要なテーマを吟味してそれぞれに精通した講師を招くというスタイルを貫いてきました。

2010年の秋以来、年に3回、昨夜の会で第21回を数えました。ここまで続くと、けっこう横浜・川崎界隈では周知された会として認識されるようになったのではと思います。

さて、今回は基礎の勉強。講師は順天堂大学の三宅幸子教授で、リウマチ診療に関係した免疫学の基本的なことを講義してもらいました。

そもそもリウマチは「自己免疫性疾患」というくくりに入ってくるわけで、治療もその異常な免疫をおさえることを行っています。免疫学を抜きにしては、理解はできない・・・

・・・のですが、この免疫学というのは大変難題です。30年以上前に授業で教わったときは、生理学の中の一コマとしてさらっと聞いただけ。たぶん、現在では当時の何十倍もの情報量になっており、しかも日々のアップデートが半端ではありません。

昨日正しいと思っていたことが、翌日には書き換えられてしまうことは当たり前。教科書は出版されたときには、過去の話の集大成にすぎないというのも日常茶飯事です。

今回の講演では、もうほとんど聞いたことがない単語が山ほど出てきて、正直とても就いていけない内容でした。これで「基礎」なんですから、もうほとほと困るとしか言いようがない。

ただし三宅先生のお話は大変お上手で、テンポよく臨床との関連をうまく指摘しながら進めていくおかげで、最後まで興味深く拝聴できました。

リウマチで「実行犯」とも言えるサイトカインについて、少なくとも今後調べるためのとっかかりを作ってもらえた気がします。

さて、話は変わりますが、今、日本の医学界で製薬会社との関係はずいぶんと変化してきました。いろいろな問題から、製薬会社の医療側への利益供与を控える動きは加速しています。これは当然のことで、それを批判はできないとは思っています。

このような講演会を行うことにはお金がかかりますし、当日のマンパワーも必要です。自分たち開業医だけで行うことは難しく、製薬会社にスポンサーについてもらわないと成り立ちません。

しかし、昨今、そのための制約がおおきくなっており、基本的に自社製品に関連しないテーマの講演は難しくなっており、またその内容についても事前に「検閲」する傾向になっている。

病気を知ることは、一つ一つの症例の積み重ねが重要です。この会でもできるだけ各自が経験した症例を検討する機会も随時設けてきましたが、まだ事実として認定されていないことを話題にしてはいけないらしい。

実際に医療を行っている自分たちが、本当に知りたいことを中心に会を続けていくのがかなり難しい状況になってきているのです。スポンサーについてもらう以上、製薬会社の意向に全面的に逆らうわけにはいきません。

ただ、そうなると製薬会社の単独主催の講演会と同じになってしまい、はっきり言えば「薬の宣伝」のための、特定の薬品の話だけを聞く説明会と変わりがない。

今回のような、比較的「地味なテーマ」の話は本当に重要なのに、積極的にスポンサーの薬の話が含まれるわけではないので、今後は難しくなりそうな状況です。

せっかくここまで続けてきた会ですから、このスタイル(薬に限定されないテーマの講演+症例の検討)を崩すのだけは否だというのは世話人の共通意見です。

最悪、場所はクリニック、講師へのお礼は本当の薄謝、参加者は手弁当みたいな形式で、参加費を値上げして完全自前で行うしかないと覚悟しています。

次回から、まだ自分たちの主旨をある程度理解し協力してもらえる製薬会社へスポンサーが交代しますが、何とか田園都市リウマチフォーラムを「由緒ある会」として発展・継続できるように考えています。