2019年10月26日土曜日

Claudio Abbado BPO / Mahler Symphony #8 (1994)

マーラーの交響曲第8番は、しばしば「千人の交響曲」という副題で呼ばれています。これは、演奏するのにオーケストラと声楽で1000人の演奏者を必要とするため。

マーラー自身は、勝手に副題を初演興行主につけれら嫌がったらしいのですが、実際にマーラー自ら初演した時に用意された人員は1000人だったらしい。その規模の大きさから、他の曲に比べてなかなか実演されることは少ない。

そのせいか、アバドは、他が2~3回の正規録音があるのに第8番だけは1回しか演奏を残していない。ルツェルン音楽祭のチクルスでも、この曲だけは演奏されていません。

ですから、アバドでマーラーを聴きこむとなると、この1994年2月にベルンフィルの本拠地で収録されたアルバムが唯一の選択となります。

アルバムジャケットの写真を見ると、ステージ後方客席にどんどる合唱隊は、中央に児童合唱団、その両翼に混声合唱団が配置され、おそらく全部で200人程度。オーケストラも200人はいそうで、ベルリンフィルのメンバー総出状態。

手前に独唱者8名とアバドが立っているので、全部合わせて多く見ても500人はいないと思いますが、それでも通常のクラシックの演奏会からすると数倍の人数です。また、客席も人で埋まっているようなのでライブ収録だろうと思います。

独唱者は、この時期アバドの常連が並びます。ソプラノは、シェリル・ステューダー、シルヴィア・マクネアー、アンドレア・ロストの3人。アルトはアンネ・ゾフィー・フォン・オッターとローゼマリー・ラング。テナーがペーター・ザイフェルト。バリトンはブリン・ターフェル、そしてバスがヤン=ヘンドリク・ローテリング。

マーラー本人が「交響曲」と呼んでいるので口をはさむところではないのですが、ベートーヴェン以来形成された交響曲の概念を壊しまくったマーラーが、行きつくところまで行ってしまった感じで、通常の交響曲のイメージではとても説明できない。

何しろ第1部30分、第2部50分の2楽章構成だし、冒頭いきなりオルガンの和音とともに大合唱が炸裂する。聴いていて歌詞の内容がよくわからない立場としては、ベートーヴェンの第九の終楽章の声楽が登場する部分がずっと続ているような印象を受けます。合唱の内容は、キリスト復活後の聖霊の降臨を讃えるもの。

第2部に入ると、音楽は落ち着きを取り戻し、ゲーテの「ファウスト」終章を歌い継いでいきます。「ファウスト」は世界文化遺産級の名著とされていますが、何しろ長大で難解。

ここで歌われるのは、最後に悪い事をたくさんして死んだ後、悪魔メフィストフェレスに魂を持っていかれるところを、辛い思いをさせた妻グレートヒェンの霊と聖母マリアに導かれ天に昇っていくという最後の場面。

アバド贔屓で聴いているせいかもしれませんが、最後まで緊張感が持続したいい演奏だと思います。将来、この時の映像が出てくることがあれば最高なんですけどね。