2019年10月14日月曜日

Claudio Abbado LFO / Mahler Symphony #6 (2006)

フィルハーモニーというのは、ギリシャ語由来で「音楽を愛好する」という意味が込められているらしい。

ベルリンフィルハーモニー管弦楽団・・・と、日本では一般に呼称しているけど、正式な名称は現在は、独立法人で自主運営される"Belin Philharmoniker"です。ベルリンにある、彼らの本拠地のコンサートホールを含む建物も同じ呼ばれ方をしています。

2002年までは、ベルリン市営としての顔も併せて持っていたため、市営として活動する際には"Belin Philharmonisches Orchester"と名乗っていました。

そもそもの始まりは1882年というから、創設から140年余り。初期にはブラームスやマーラーも指揮台に立ったというくらい、歴史的な重みがあり過ぎるくらいある楽団です。

1895年にアルトゥル・ニキシュが最初の常任指揮者 (楽団員は「シェフ」と呼んでいますが) に就任。1922年には二代目シェフにヴィルヘルム・フルトヴェングラーに就任し、反ナチスとして活動を続けました。そして1955年に「帝王」ヘルベルト・フォン・カラヤンが三代目として終身監督として就任。

カラヤンはおびただしい録音を残し、ベルリンフィルを世界一有名な楽団にしたと言っても過言ではありません。1960、1970年代は両者の関係は順調ででしたが、1981年に有名な「ザビネ・マイヤー事件」をきっかけに、カラヤンと楽団の亀裂は決定的になります。

ここでカラヤンが犯した不可侵領域は、楽団員の選抜を含む自主運営に対してでした。それまで女性楽団員がいなかったこと、カラヤンが強引にマイヤーを首席クラリネット奏者にしようとしたことで、楽団員は猛反発しました。結局、この事件以後、カラヤンは他楽団との仕事を増やし、終身契約であったにもかかわらず1989年4月にシェフを辞任しました。

そして、楽団員による投票により選ばれた新しい四代目シェフが、イタリア人のクラウディオ・アバドでした。しかし、カラヤンの色を払拭し、やっと軌道に乗ってきた2000年に胃がんにより体調を崩し2002年に退任。そして、五代目のイギリス人サイモン・ラトルに席を譲ります。

今年から六代目に就任したのが、ロシア人のキリル・ペトレンコで、すでに積極的な活動が始まっています・・・って、まぁ長々とした前置きなんですが、要するに世界一のオーケストラは指揮者を招くということが基本にあるということを再認識したかったということです。

一方で、ルツェルン祝祭管弦楽団は、基本的にスイス、ルツェルン市が1938年に第1回が開催された音楽祭のために編成される臨時のオーケストラです。初期に音楽祭に尽力したのはトスカニーニ、また戦後ベルリンを追われていたフルトヴェングラーの活躍の場でもありました。

2003年、体調が回復したアバドが芸術監督に迎えられると、アバドが組織していたマーラー室内管弦楽団のメンバー中心に、世界中から名だたる名手たちが集まって再編されました。

しばしば、スーパー・オーケストラという呼ばれ方をしますが、単なる凄腕が集まっただけではなく、若手からベテランまでの混成チームであってもアバドと一緒に音楽を作っていきたいという共通のモチベーションがあり、それがアバドを含めて全員の意識の中で明確化されていることが大きな特徴だろうと思います。

ネットで在籍メンバーをいろいろ探して見ると・・・

コリヤ・ブラッハー バイオリン 元ベルリンフィル首席
セバスティアン・ブロイニンガー バイオリン ゲバントハウス首席
ローラン=アルブレヒト・ブロイニンガー バイオリン 元ベルリンフィル
グレゴリー・アース バイオリン カメラータ・ザルツブルク
ラファエル・クリスト バイオリン マーラー室内管弦楽団コンマス
ハンス=ヨアヒム・ヴェストファル バイオリン 元ベルリンフィル
ルノー・カプソン バイオリン
ドメニコ・ピエリーニ バイオリン 北ドイツ放響コンマス
荻原尚子 バイオリン
ジャック・ズーン フルート
エマニュエル・パユ フルート ベルリンフィル首席
ルーカス・マシアス・ナバーロ オーボエ 元ロイヤル・コンセルトヘボウ管首席奏者
アルブレヒト・マイヤー オーボエ 元ベルリンフィル首席
カイ・フレームゲン オーボエ ヨーロッパ室内管首席
吉井瑞穂 オーボエ マーラー室内管弦楽団首席
ザビーネ・マイヤー クラリネット
ヴォルフガング・マイヤー クラリネット
アレッサンドロ・カルボナーレ クラリネット 聖チェチーリア国立音楽院管首席
ラインホルト・フリードリヒ トランペット フランクフルト放送交響楽団首席
アレッシオ・アレグリーニ ホルン 聖チェチーリア国立音楽院管首席
シュテファン・ドール ホルン ベルリンフィル首席
ヨルゲン・ファン・ライエン トロンボーン ロイヤル・コンセルトヘボウ管首席
ウォルフラム・クリスト ヴィオラ 元ベルリンフィル首席
ディームート・ポッペン ヴィオラ ヨーロッパ管、モーツァルト管
ゲオルク・ファウスト チェロ ベルリンフィル首席
ナタリア・グートマン チェロ
ゴーティエ・カプソン チェロ
アロイス・ポッシュ コントラバス ウィーンフィル
イェンス・ペーター・マインツ チェロ ベルリン・ドイツ響首席
吉野直子 ハープ
ハーゲン四重奏団
アルバン・ベルク四重奏団
ザビーネ・マイヤー管楽アンサンブル

次んら次へとそうそうたる名前がずらずらと登場してきます。年によって、多少の入れ替わりはありますが、よくもまぁ、こんだけ集まったものです。マーラー室内管弦楽団と現役・元を問わずベルリンフィルを中心に、普通にソロイストとしてアルバムをたくさん出している人も含まれています。

そこで、マーラーの第6番です。2番、5番、7番に続いてルツェルンのアバドがマーラーを取り上げるのは4曲目。

全交響曲を聴いてみると、この第6番の出だしが一番好きかもしれない。コントラバスの低音の刻む音が、ずしずしと響いてくるあたりが掴みとしてはバッチリ。すぐさま弦楽器全体でテーマが弾かれますが、これがめちゃめちゃかっこいい。しだいに木管金管が絡んでいくところが素晴らしい。

いろいろな珍しい楽器か登場することで楽しいマーラーの交響曲ですが、この第6番では、一番話題になるのが大きな木槌(ハンマー)です。「運命の一撃」と呼ばれる強大な「ズドーン」という音が、一気に曲調を変えてしまいます。

例によって長い曲ですが、オケのメンバーを見て、アバドを見ていれば、まったく飽きることがありません。