2019年12月7日土曜日

M.Kozena & S.Rattle BPO / Mahler Ruckert Lieder ~ Love and Longing (2012)

「リュッケルトの詩による歌曲集」あるいは、単に「リュッケルト歌曲集」と呼んだりしますが、これはグスタフ・マーラーの「最近作の7つの歌曲」としてまとめられた中に含まれるもの。

7曲中の5曲がフリードリヒ。リュッケルトによる作詞で、あとの2曲は「少年の魔法の角笛」をもとに作られた「少年鼓手」、「死せる鼓手」です。鼓手2曲は「少年の魔法の角笛」に組み込まれ、リュッケルトによる5曲だけを独立して扱うのが一般的。

私の歌を覗き見しないで Blicke mir nicht in die Lieder
私はほのかな香りを吸い込んだ Ich atmet' einen linden Duft
私はこの世に忘れられ Ich bin der Welt abhanden gekommen
真夜中に Um Mitternacht
美しさゆえに愛するのなら Liebst du um Schonheit

全体で20分程度で、歌手の指定はない。どんな声域の歌手でもいいんですが、タイトルから察するように比較的女性的な内容の歌詞が多いので、ソプラノまたはメゾソプラノによる歌唱が一般的。

当然何でもこなせるスーパースターのフィッシャーディスカウは、バーンスタインのピアノ伴奏とバレンボイム指揮ベルリンフィルのオーケストラ伴奏があります。確かに艶やかで伸びのあるほれぼれとする歌唱。

ブーレーズ指揮ウィーンフィルだと、ヴィオレッタ ・ウルマーナのソプラノでの名唱が聴けます。お気に入りということならフォン・オッターのガーディナー指揮での歌唱をおすすめしたいところ。

アバドのルツェルンの映像では、交響曲第4番とともにマグダレーナ・コツェナが歌っていますが、そこでも書きましたが、この人に関しては歌っている時の表情や身振りが過剰でちょっと興味をそがれてしまうのが難点。

コツェナの声は悪くないので、そのまま落第にするのは惜しまれる。そこで登場するのが、こちらのアルバム。ラベル、ドヴォルザークの歌曲とのカップリングですが、何しろ旦那のサイモン・ラトルが手兵ベルリンフィルを使って、かーちゃんを盛り立てたものですから、悪かろうはずがない。

これらの曲の中で、特に「私はこの世に忘れられ」は一番長い演奏であり、曲としても詩の内容としてもマーラーとの交響曲との関連が強い作品でしばしば注目されます。

旧EMIのマーラー全集では、ピアノ伴奏のハンプソンの「リュッケルト」が聴けますが、マニアックで面白いのが「私はこの世に忘れられ」だけハンプソンに続いて、ジャネット・ベイカー、クリスタ・ルートヴィヒ、ディートリヒ・フィッシャー=ディースカウ、トーマス・アレン、ブリギッテ・ファスベンダー、カタリナ・カルネウスの歌唱が立て続けに入っています。