2020年2月12日水曜日

Bernard Haitink RCO / Mahler Complete Symphonies (1962-1971)

というタイトルをつけたものの、実はここまでほとんど触れてこなかった指揮者がベルナルト・ハイティンクです。

その理由は単純で、あまりに録音が多いのと、色々なオケを演奏するのでどうも全貌がつかめないということ。もちろん、中心となるのはコンセルトヘボウ管弦楽団との録音なんですけど。

ハイティンク自身は、マーラーの録音を粗製乱造する現状を批判気味に言っていましたが、粗製ではないとしてもあまりにあちこちから録音が出ていて・・・まぁ、それだけニーズがあるということなんですけど。

とは言え、バーンスタインと同時期に全集を完成させているマーラーの録音史上避けては通れない人物ですし、昨年(2019年)9月のルツェルン音楽祭を最後に90才で引退を表明したので、少なくとも今後新しいものは登場しません。

ハイティンク(Bernard Haitink, 1929-)は、アムステルダム出身のオランダ人。アバドよりちょっと年下ですが、元々はバイオリン奏者で、1961年からコンセルトヘボウ管の首席指揮者を1988年まで務めました。

この間にロンドンフィルの首席を兼任していましたし、1995年からボストン響、2002年からドレスデン国立管、2006年からシカゴ響などの首席を歴任しました。

マーラー物は、1962年の第1番が最初で、その4年後の1966年から全集の企画が始まり、1971年の第8番で全集として完成しました。ちょっと悩むのは、この最初のチクルスの半年後の1972年に第1番が再録音されていること。

ところがオリジナルのPhilips盤の全集にまとめられた時は、第1番は1962年のものが収録されました。現行のDeccaボックスでも同じ扱いですが、Bluray Audio化にあたってボーナスとして1972年版が収録されています。

ハイティンクとしては、全集にするには単独で録音した1962年版に満足していなかったので、あらためて1972年に再録音したと考えるのが妥当ですが、当時マーラー人気は今ほどではなかったので、Philipsとしては少しでも早くから開始し、少しでも早くに完成したということをセールスポイントにしたかったのかしれません。

オリジナルの構成は以下の通り。

1962年 第1番
1966年 第3番 モーリン・フォレスター(Ms)
1967年 第4番 エリー・アメリング(S)
1968年 第6番、第2番 エリー・アメリング(S) アーフヤ・ハイニス(Ms)
1969年 第7番、第9番
1970年 第5番
1971年 第10番、第8番
1972年 第1番 (Decca盤のみ)

現行盤には歌曲チクルスも集大成されています。

1970年 亡き子をしのぶ歌、さすらう若人の歌 ヘルマン・プライ(Br)
1973年 嘆きの歌 (2部構成) ヘザー・ハーパー(S) ノルマ・プロクター(Ms) ウェルナー・ホルウェッグ(T)
1975年 大地の歌 ジャネット・ベイカー(Ms) ジェームス・キング(T)
1976年 少年の魔法の角笛 (12曲) ジェシー・ノーマン(S) ジョン・シャーリー=カーク(B)

ハイティンクと言えばコンセルトヘボウ、コンセルトヘボウと言えばマーラー。となると、ハイティンクと言えばマーラーという論法が成立しそうなんですが、この全集についてはまだハイティンクが若く、円熟の境地と言うには程遠いという評価が多いようです。

確かに、全体的にあまり特徴的なことは指摘しにくい。それが悪いわけではありませんが、他の指揮者の演奏でもいいという感じ。

ソプラノとしては一時代を作ったアメリングが登場することは無条件に喜ばしい。丸みのある柔らかい声質で、第4番第4楽章はソプラノでの名演と呼びたいところです。