2020年4月13日月曜日

新型コロナウイルスシンポジウム


厚労省クラスター班 押谷仁先生の資料から

昨日、日本内科学会は新型コロナウイルスについて、現状でわかっている様々な情報をとりまとめたシンポジウムを開催しました。

これはオンライン配信、無聴衆で行われ、全医療関係者が視聴できるように、内科学会会員以外にも開放されされ、自分も視聴することができました。

政府の専門家会議の主要メンバーも演者として参加しており、新型コロナウイルスの日本のこれまでの戦い方の解説もあり、検査は絞り込んでクラスター(集団感染)対策を中心とした根拠も理解することができました。

初期のクルーズ船下船者、武漢からのチャーター便による帰国者など、モニタリングをしっかりできた方々については、2次感染の発生はほぼ完全に抑止できています。これはクラスターとなりうる人々をしっかり「隔離」することが効果的であったことを示しています。

ただし、この2週間くらいで急増し始めた状況は、感染履歴が追えない市中感染が拡大しており、それ以前に中国から入ってきた無症状の感染者や、感染が拡大したヨーロッパなどからの有症状の帰国者などが関与している可能性があり、もはやクラスター対策だけでは持ちこたえられないフェーズに突入したことを示唆します。

これが緊急事態宣言を出す根拠となったようですが、そうなると検査体制の拡大、医療体制の確立が必要になるのですが、内科学会としてはいまだに政府主導の整備が遅々として進んでいない状況を憂いていることを隠しませんでした。

これは、まず検査の中心を担っている保健所(保険福祉センター)の体制が脆弱で、もはやマンパワー不足がはっきりしていて、感染拡大のフェーズが変容したことに対応することができていない。ただし、検査を自由化すると病院に殺到する人々が新たなクラスター化することは海外の状況からもはっきりしています。

また、すでに日本の医療機関では、医療スタッフ自身が感染から身を守る防護用品が不足し入手困難な状況になっていて、軽症者をクリニック、重症者を病院という当たり前の役割分担もできない。またすでにベッド数も不足し、実際東京都は軽症者をホテルなどに移す方策を開始しています。

感染者のうち若者がしばしば問題にされていますが、確かに若者には発症しないため自分が感染している自覚がない人が多く存在し、活動性の高さからクラスター発生要因になっていることは間違いない。ただし、完成した高齢者はウイルス排出量が若者よりも多めになっていて、活動性が高い高齢者は若者よりも危険な存在かもしれないということです。

慶応義塾大学 竹内勤先生の資料から

また、今回のシンポジウムには日本リウマチ学会理事長の慶応義塾大学の竹内先生も演者として登壇し、リウマチ医の立場からの話をしていました。基本的な内容は、すでに学会ホームページにて公開されていますが、あらためて重症化肺炎の成立機序にリウマチの悪化と関係があるサイトカインの関与が考えられていること、現時点では発症者を除いて治療の変更は必要ないことを解説しました。

自分は整形外科医で目下のところ直接的な新型コロナウイルス診療にあたっているわけではありませんが、医療に携わる者として、特にリウマチ診療に関与する立場からも、この問題は絶えず注視していく必要性を強く感じています。

特に注意したいのは、事実をしっかり認識することで、様々な噂話により右往左往するような状況をできるだけ排除する必要があるということです。よくネットでは、ネットを使いこなせない人々を「情弱」という言葉で揶揄するのを見かけますが、逆に情報強者である人々は真偽を考えずに情報を広めてしまうことが多いように思います。

待った無しの状況であるからこそ、冷静に、しかしスピーディにいろいろに対応をしないといけないということは、医療関係者以外にも求められています。補償が有るとか無いとかは重要な問題ですが、それらの結論が出るまで待てない状況であることは間違いありません。