2020年10月12日月曜日

Mal Waldron / All Alone (1976)

マル・ウォルドロンと言えば、「孤高のピアニスト」というイメージが付きまとう。

それは、彼の代表的なオリジナルが「Left Alone」であったり、このアルバムの表題曲である「All Alone」であるから。

チャーリー・ミンガスのコンボで知られるようになり、1957年からビリー・ホリディの最後のピアノ伴奏者として、ホリディが亡くなるまで2年間を過ごしたことも、マルの印象に深く関わっているようにもいます。

普通なら「Left Alone」のタイトルを冠した1957年のアルバムが代表作として選択されることが多いのですが、自分の場合はこちらの「All Alone」を含むソロを推したい。

ジャズ・ピアノのソロ・アルバムというと、リズム・セクションが抜けただけでビートが抜けたモヤモヤ感が多い。スイング感中心で聴けるのはオスカー・ピーターソンくらい。そうでなければ、キース・ジャレットのようなクラシックに近づいたものが多くなります。

マルのソロは。黒人ブルース的な悲しみを讃えた演奏で、のりのりのスイング感とは別物の感動をもたらしてくれます。文芸的に表現するなら、波紋の立たない静寂の湖に一滴の涙がポトンと落ちたかのような・・・まぁ、静かに心に染み入ってくる音楽ということ。

タイトル以外も、ジャズと言えばジャズなんですが、他とは違う表現力は随所にみられます。ソロだからこそ、表現者としてのマルの独特の世界がダイレクトに伝わってくるアルバムです。