2020年11月10日火曜日

女王陛下の007 (1969)

007シリーズの第6作。いろいろな意味で異色作です。

まず、これまでジェームズ・ボンドを演じてきたショーン・コネリーが、役柄のマンネリで降りたことで、新しくジョージ・レーゼンビーが2代目007に起用されました。

レーゼンビーは、とかくショーン・コネリーと比較されて公開時は不評を買いましたが、これは本人の責任じゃない。そりゃ、5作続けて同じ俳優が演じて来たんですから、ちっとやそっとじゃイメージを変えられなくて当たり前。

監督は一作目から編集に携わってきたピーター・ハント。今までのボンドを知り尽くしていたので、全体の雰囲気を壊すことなくうまく引き継いだと言えます。ただし、彼が監督したのはこの一作だけ。

そして、遂にジェームズ・ボンドが、一人の女性に本気で恋をして、ついに結婚までしてしまうという話。しかも、その恋の結末は悲劇。


そういう意味では、俳優が変わったことは悪い事じゃない。ショーン・コネリーのボンドが結婚じゃ、それまでのボンド像が逆に壊れていたかもしれません。

内容は悪くない。やや年取ってきたコネリー・ボンドと違って、10才くらい若返りましたのでアクションのスピードも回復して切れ味が良くなりました。しかも、前回取り逃がしたスペクターのNo.1であるブロフェルドとの直接対決の話ですから、気合が入るという物です。

冒頭、海辺で女性を助けますが、そのまま逃げられてしまい「今まではこんなことはなかった」とぼやかせるのはご愛敬。タイトル画面でも、歌に歌詞は無く演奏だけというのも新鮮。このタイトル・シークエンスで、これまでの悪役やボンドガールの映像がフラッシュバックされ、続きのシリーズであることを強調します。

ブロフェルドを追跡するも手掛かりを得られないボンドは任務から外され、00ナンバーの職を辞することを決意します。机を整理していると、過去の作品の小道具がいろいろ出てくるし、敵のアジトに乗り込むと掃除の爺さんが吹いている口笛が「ゴールド・フィンガー」だったりします。

結局、辞表じゃなくて3週間の休暇ということになって、ボンドはブロフェルドの行方を個人的に追いかけるのです。今回のブロフェルドを演じるのは、「刑事コジャック」でお馴染みのテリー・サラバス。

前作でのドナルド・プレザンスより悪人感は少ないのですが、早くから登場しボンドとの直接の絡みも多い。ただ、前作の秘密基地で対面しているはずなのに、お互い顔を知らずに初対面風なのはちょっと違和感ありです。

今回は、個人的な行動が多く、秘密の小道具はあまり登場しません。そのかわり、スキーでのチェイスとか、ボブスレーでの格闘とかレーゼンビーの肉体的なアクションが多くなったことでご都合主義的な部分が鳴りを潜め、ギャグも控えてシリアス感がさらに増した映画としてけっこういい出来だと思います。

レーゼンビーは、さらに数本のボンドを演じていれば面白かったのかもしれませんが、この一作のみで降板を申し入れてしまいました。結局、制作サイドは、次作ではかなりの条件をのんでショーン・コネリーのジェームズ・ボンドを復活させました。