2020年12月1日火曜日

1941 (1979)

「ジョーズ」、「未知との遭遇」と立て続けに大ヒットを飛ばしたスティーブン・スピルバーグが、次に挑んだのは第2次世界大戦における真珠湾攻撃の後、日本軍による本土攻撃を恐れる西海岸を題材にした・・・コメディでした。

もう世評は大方揃っていて、「スピルバーグ最大の汚点」とか「スピルバーグの無かったことにしたい作品」とか、はっきり言ってボロカス扱いです。

昔、最初に見た時もあまりのドタバタぶりに辟易した記憶があります。改めて見直しても感想は同じで、これがアメリカン・ジョークだとすると、アメリカ人のギャグのセンスを疑うしかなく、単なる悪乗りとしか言いようがない。

ふざけるだけふざけて戦争を笑い飛ばして、逆に戦争を否定的に描いているといった肯定的な意見も散見されますが、それほど深い意味があるようには思えない。やはり、スピルバーグの驕りみたいな部分が出てしまったとしか言えないと思います。

とは言っても、キャスティングはすごい。

日本人的には、何しろ世界の三船敏郎が登場することは嬉しい。三船は西海岸に接近した日本軍の潜水艦艦長で、同乗しているドイツ軍将校がクリストファー・リーというのも、さらにすごい事です。

三船は、実は「スター・ウォーズ」のオビワンのオファーがあっそうですが、ルーカスなんて知らないと断ったらしい。ところが映画が大ヒットしたため、ルーカスの友だちのスピルバーグの依頼にのってしまったようです。

はちゃめちゃなドタバタを演じるのは、伝説のお笑い番組「サタデイ・ナイト・ライブ」でブレイクしたダン・エイクロイド、ジョン・ベルーシら。ネッド・ビーティ、マーレイ・ハミルトン、ウォーレン・オーツ、ロバート・スタックらのベテランがからみ、飛行機狂のナンシー・アレンが色を添えています。

冒頭は、夜の海岸に女性がやってきて、海に向かって走り出す途中で服を脱ぎ、そのまま泳ぎ始める。すると、周囲に波が立ち女性が恐怖で悲鳴をあげると黒い棒が海中から出てきてつかまる。この棒は、実は潜水艦の潜望鏡だったという・・・まさに「ジョーズ」の最初の場面をセルフ・パロディしたもの。演じるのも、同じ女優さんという念のいりようです。

おっと思わせるのはこの最初の数分間だけで、その後はいろいろな映画のパロディが出てきているようですが、ほとんど進行は支離滅裂。時には下品なギャグが飛び交い、暴力・爆発シーンがひたすら続くだけ。

この映画の拾うべきポイントは二つ。後に「バック・トゥ・ザ・フューチャー」の監督を任せたロバート・ゼメキスが脚本を担当し、ゼメキスを世に送り出したこと。そして、絶大なる信頼を寄せて、今日までずっと映画製作のパートナーとなるキャスリーン・ケネディと知り合ったこと。ケネディはこの映画の製作総指揮を執ったジョン・ミリアスのアシスタントでした。

出演を依頼したジョン・ウェインからは制作中止を勧告され、実際公開しても評論家による酷評のみならず、観客動員もままならない興業的な失敗になりました。結局、この作品以後、スピルバーグはコメディ映画を作っていないことがすべてを物語っていると言えそうです。