2020年12月3日木曜日

E.T. (1982)

この映画は、公開時、興業収入の記録をぬりかえた初期のスティーブン・スピルバーグ最大のヒット作です。

何が凄いって、前作「レイダース/失われたアーク」制作中に、並行して次回作の制作準備を着々としていたというところ。さらに言えば、ホラーの傑作「ポルターガイスト」の制作も同時進行させていました。

この頃は、怖いもの知らずで、あふれ出るアイデアと創作意欲を次から次へと実現させていました。そして「彼のアマチュア時代の短編「Amblin」から名を取った、自分の映画製作会社「アンブリン・プロダクション」をキャスリーン・ケネディ、フランク・マーシャルらと立ち上げていました。この映画は、スピルバーグ監督作品としては、初めて「スピルバーグ組」と言えるアンブリンが関わった作品です。

アイデアは遡ると「未知との遭遇」から始まるのは明らかで、地球にやった来た宇宙人が帰りそこなったらどうなるのかというところから始まります。つまり、第三種接近遭遇の先、UFOの搭乗員を捕獲したい第4種接近遭遇を目指す公的機関と、直接宇宙人と対話をする第5種接近遭遇をするこどもたちの話。

特にこどもたちが主役となって、彼らの母親以外はまともに登場する大人が出てこないというのが特徴です。途中で大人が画面に映っていても、はっきりと顔まで見える場面はほとんどありません。

つまり、数少ない大人も、スピルバーグのテーマである、こどもの頃からずっと心に何か引っかかる物を持ち続けている。ストーリーは、こどもたちの視点で進み、大人になって忘れていた物を思い出させてくれるものになっています。

こどもたちの家庭は、父親が出て行ってしまった母子家庭です。これは、スピルバーグのプライベートとして、少年時期に親が離婚した経験が関係しています。親が離婚した家庭で、こどもは何を思っているかを伝えようとしたことは、自らも表明しています。

植物採取の目的で地上に着陸したUFOにのっていた宇宙人、E.T.、つまり Extra-Terrestrial(地球圏外)、が公的機関?の調査隊が来たため出発に間に合わず地上に取り残されてしまいます。

このE.T.は、着ぐるみで動くものと何人ものスタッフが動かすロボット式の物を使い分けていますが、比較的序盤から直接的にその姿が登場します。比較的古い宇宙人のイメージを可愛らしく作り直した感じで、これを可愛いと思うのか気持ち悪いと思うのか、この映画の踏み絵のようなところがあります。

本来はおそらく地球人よりも高度の科学技術をもつ彼らのはずで、少なくともこどもではないと思いますが、主人公のこどもよりも小さめの体で、目がくりくりして、こどもたちとのユーモラスな動きが嫌な感じを与えないところはうまい。

E.T.はいろいろな道具を利用して宇宙に向かって救援信号を発しますが、体調を崩してしまいました。調査隊は町を捜索してついにE.T.を発見しますが、その時には回復困難な状況で死んでしまうのです。

しかし、何故かは示されていませんが、まだ生きていることを知ったこどもたちは、大人の追跡を振り切ってE.T.を救助に来たUFOのところに連れていきます。E.T.は主人公に「一緒に行こう」と誘いますが、彼はこれを断ります。ひとつ成長したことの現れなのですが、それは大人に近づくことで、それによって得るものと失うものがあるということを示しているのかなと思いました。