クリニックの夏季臨時休診のお知らせ
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2021年3月10日水曜日

ライフ・アクアティック (2004)

ウェス・アンダーソン監督の4作目は、ついに連続登場のビル・マーレイがいよいよ主役です。一作ごとに出演者が増え、また今回は海が舞台で、どんどん映画製作の規模がわかりやすく大きくなっている。

アンダーソンと共同で脚本を書いたのは、ノア・バームバック。昨年は、自身が監督・脚本を務めた「マリッジ・ストーリー」でアカデミー賞にノミネートされました。

タイトルの意味は「水の生活」ということなんですが、主人公は海洋学者・・・というよりは海洋探検を記録映画として発表するエンターテイナーです。実は、この主人公はフランスの海洋学者ジャック=イヴ・クストーがモデルで、彼は多くの海洋探検映画を発表しました。ここでも主人公は、クストーと同じ真っ赤なニット帽を愛用します。

昔、日本のテレビで企画・放送されていた「川口浩探検隊」はクストーがヒントになっていると思いますし、この映画もクストーのエンタメ的な部分を否定せず、むしろ愛情を持って描いていると言えそうです。

スティーヴ・ズィスー (ビル・マーレイ)は、海洋探検家で、その模様を記録映画にして評判をとってきましたが、長年の仲間が巨大なサメに襲撃され失います。世間からは、映画が演出的な面が強いため飽きられてきており、スポンサーもなかなかつかず落ち目になってきていることは自覚しています。

助手でもあり妻でもあるエレノアを演じるのは、前作に続いて登場するアンジェリカ・ヒューストン。エレノアは愛想をつかせて、ズィスーのもとを去っていきます。あらたにアンダーソン劇団に加わるのが、ズィスーのライバルであるヘネシーを演じるジェフ・ゴールドブラムと、ズィスーの片腕クラウス役のウィレム・デフォーです。

そこに登場するのはおなじみのルーク・ウィルソン。今回の役どころは、かつてのズィスーの活躍に憧れ、そして亡くなった母親からその死の直前に父親はズィスーだと教えられた青年のネッドです。ネッドはズィスーの次の冒険、仲間を殺した巨大サメ、「ジャガー・シャーク」を探す旅に加わることになります。

さらにこの旅には、雑誌記者のケイト・ブランシェットが演じる、妊娠中のジェーンも同行することになります。なんで妊娠している女性が、わざわざ危険かもしれない航海についてくるのか不思議でしたが、おそらく実際にブランシェットはこの年に出産しているので、急遽設定が変更になったのもしれません。

結局、いわゆる「疑似」家族的なズィスーの仲間たちは、ヘネシーの海上研究所から機材を拝借したり、ついていけないと言い出す乗組員が離脱したり。海賊に襲われアクション映画さながらの戦いをしたりしながら、ついにジャガー・シャークにたどり着く。

しかし、ヘリコプターで偵察に出たネッドは、墜落しあえなく死亡。彼らは悲しみを背負って潜水艇に乗り込み、海溝深くに悠然と泳ぐジャガー・シャークについに出会うことができました。これらの記録映画は、久しぶりに拍手を持って迎えられたのでした。

ここで、ジャガー・シャークをはじめとして、名前のついている不思議な海洋生物はすべてヘンリー・スリックによるストップ・モーション・アニメで作られています。これは後に全編ストップ・モーション・アニメを作るきっかけになったことは間違いない。

天才的だが普通じゃない主人公、象徴的なこだわりのアイテム、スローモーション撮影、カメラの平行移動、真上や真横からのショットなどの特徴が少しずつ加わってきたアンダーソン作品ですが、ここであざやかな色彩要素とストップ・モーション・アニメが加わり、ついにアンダーソン・ワールドの全貌が見えてきた感じがします。

ですから、ここまでの4作品はアンダーソンの映画監督としてのキャリアの中で、初期の成長期4部作という位置づけができるかもしれません。ただし、この独特の世界観は、必然的に好き嫌いがはっきりしてくる。必ずしも万人に受けるとは言いがたいところがあります。

自分は嫌いじゃないですが、無意味なカメラ・ワークとか、面白くないギャグといった意見も当然あることでしょう。ただ、一目でこの映画の監督が誰かわかることってすごいことだと思います。