2021年7月31日土曜日

キューブ (1997)

アイデア一発の超低予算映画ですが、そのシンプルさをうまく利用した佳作。一応もSF映画のくくりに入っていますが、サイコホラーという言う方が合っているかもしれません。

カナダ人のヴィンチェンゾ・ナタリが監督・脚本ですが、この映画の直前に「Elevated」という短編を作っていて、こちらは狭いエレベータの箱の中に空間に閉じ込められた男女の恐怖を描いたものでした。ある意味、この映画はその発展形と呼べます。

一辺が4.2mの立方体の部屋、キューブの中に中られた6人。彼らが何の目的で、誰によってここに集められたかは一切説明はありません。警察官だったり、脱獄囚だったり、医者あるいは学生だったりで、お互いに面識があるわけでもない。

6つある各面にはハッチが設けてあり、そこを開けると隣のキューブに移動できる仕掛け。しかし、物凄い数のキューブがあり、中には人を殺す仕組みが組み込まれたものがあります。

体をバラバラにスライスされたり、強力な酸を浴びて溶けて死んだり・・・簡単に移動するわけにはいきません。それでも、隣同士のキューブの境に記された数字から、キューブの位置がわかることに気がつきます。

しかし、実はキューブ自体が動いていていつも同じ場所にあるとは限らないことがわかり、彼らの間には絶望感が漂うのです。そして、それぞれの人間性がしだいに顕わになってきて、得体のしれない恐怖を盛り上げていきます。

監督はこの後、テレビを中心に仕事をしているので、映画界的には無名のまま。基本的なセットは一つのキューブだけ。登場人物も6人だけで、特に有名な俳優はいません。製作費も日本円にして3000万円ちょっとくらい。

キューブの照明色を変えたり、殺人システム違ったものが用意されていて、横だけでなく上から下への縦の移動もあったりすることで、単純なセットでもいろいろいと考えて作っているのがわかります。

この施設の目的、誰が作ったか、中にいる人々が選ばれた理由など、ミステリーとして必須の条件はすべてそぎ落としています。脱出するための数字の解析も、高度な数学的知識が必要で一般人にとっては意味不明。つまり、登場人物に感情移入する暇すら与えずに、彼らが外に出れるかどうかだけに展開を絞ったことがこの映画の面白さのすべて。

実は、日本でリメイクされ今年の秋に公開が予定されていますが、出演は菅田将暉、杏、岡田将生、田代輝、斎藤工、吉田鋼太郎。皆、よく知られた有名な俳優さんばかりなので、オリジナルに比べて最初から気持ちが入ってしまう。

オリジナルでは無名な俳優だからこそ、良い人が悪者になったり、簡単に殺されたりしても映画として許せるわけで、アイデアそのものは変更しようがないのて、日本のリメイクがうまくいくかは不安です。実際、続編か2つ作られていますが、まったくと言っていいほど話題になりません。