2022年8月12日金曜日

俳句の鑑賞 4 与謝蕪村

芭蕉に次いで知っておくべき江戸時代の俳諧師といえば、与謝蕪村です。

大坂で1716年に生まれた蕪村は、最初は絵画に興味を持ち二十歳頃に江戸に出ました。同時に俳諧を始め、北関東、東北を巡って頭角を現します。40代を前にして京都に上洛し、しばらくは絵画に専念、その後江戸、京都、讃岐などを行き来しながら俳諧師、絵師を両立させ活躍し、68歳で亡くなりました。

蕪村の俳諧の師は其角の弟子の巴人であり、蕪村は芭蕉を崇拝し「芭蕉回帰」を唱え、俳諧の格調を高くしようとしていたそうです。画家としての観察眼を生かした物語性を、軽重両面の語り口で俳諧に埋め込むのが得意と言われています。


蕪村の句と意識せずに昔から知っていたのは、

春の海終日のたりのたり哉 与謝蕪村

「終日」をひねもすと読むことを面白いと思い、「のたりのたり」の何とも雰囲気が伝わるオノマトペが印象的です。

菜の花や月は東に日は西に 与謝蕪村

これも有名。大地に広がる菜の花と、おそらく茜色の夕空の中に月と太陽を織り込む雄大な光景が凝縮しています。

さみだれや大河を前に家二軒 与謝蕪村

これも助詞の使い方の例句として、しばしば取り上げられます。雨で増水した川沿いの家の危うさかを、読み手が映像として思い描くことができる表現です。

春雨やものがたりゆく蓑と傘 与謝蕪村

しののめに小雨降出す焼野かな 与謝蕪村

夏河を越すうれしさよ手に草履 与謝蕪村

他にも有名句はたくさんあり、約3000句が蕪村作として残されています。一つずつゆっくり鑑賞していくことで、自分の俳句作りの糧にしたいものだと思います。