2022年11月20日日曜日

エコ・テロリズム


地球温暖化が進行している。そして、それは、地球の自然環境にとってかなり深刻な状況をもたらしていることは間違いない。自分たちも、年々に異常気象と呼ばれる、かつての経験からは想像できない事象に遭遇する頻度が増えていることは実感している。

そこで、環境活動家と呼ばれる人々は美術館を訪れ、誰もが知っているような歴史的名画に対して、ケチャップ、卵、オイルを投げつける抗議活動を始めました。中には、絵画に自らの体を接着剤で張り付けてしまうという行為まで行われています。このような行為は「エコ・テロリズム」と呼ばれています。

彼らの理論は、「人々は美術館で美しい絵画を鑑賞するのに、美しい地球が汚染され破壊されている状況には無関心である」ために、「美しい物が破壊されることにどれほど苦痛を感じる」ことかを自覚させたいということのようです。

また、「名画を保存・展示することに莫大な費用が使われている」ことに対しても、「優先順位が違う」ということも主張していて、まずは「人々が生きていく上でより重要なはずの地球環境を改善することが急務」と考えているのです。

中心となる組織は「JUST STOP OIL」という集団で、襲撃する絵画は「ガラスなどにより保護されている」ことがわかっていて選択されていて、「絵画そのものの破壊が目的ではない」としており、「変化を起こすためにまずは行動することが重要」であり、「行為によって共感が得られなくてもかまわない」と考えているらしい。

そのような理論を主導するリーダーはいるわけですが、その組織は確立されておらず、SNSなどを通じて、共感する誰もが「兵士」として行動しているため、実態が不透明なことが現代を如実に反映していると言えます。

自分は、これらのエコ・テロリズムに対して断固反対し、明確に非難します。

彼らが自ら語っているように、絵画を襲撃することは、規模こそ違えても地球を汚染することと同じ行為です。彼らもすでに地球環境を悪化させている様々な文明の賜物を利用しているわけで、自己矛盾に気が付くべきです。

18世紀なかばにイギリスから始まったとされる産業革命が、地球破壊のスタートとするならばすでに250年、19世紀なかばにアメリカで油田開発が重化学工業が始まって150年以上という歴史を考えると、この間に人類が享受した文明の多くは、すべての人々の生活の隅々まで浸透しています。

地球環境が、もう待った無しの状況に来ていることは想像に難くありませんが、一度得た便利さを捨て去ることは大変難しい。悠長に人々に説いている時間はないというのはわからなくはありませんが、その矛先を絵画に向けることの意味は、あまりにも稚拙で無駄の多いことであり、文化遺産を攻撃することは人類そのものの否定にも通じます。保護措置が取られている絵画を攻撃対象にするということも、自己保身的な行動とも言えるでしょう。

人々の共感は期待していないとする時点で、歪んだ正義は一方的な価値観の押し付けにすぎず、おそらく地球環境の改善に寄与する割合は限りなくゼロに近いと思います。地球規模の危機は、すべての人類が一致して向かうことが出来る方向性があってこそ回避できるものではないでしょうか。