2023年1月27日金曜日

Alice Sara Ott / Echoes of Life (2021)

自分の中では、三大若手女性ピアニストと言えるのが、中国出身のユジャ・ワン、ジョージア出身のカティア・ブニアテシヴィリ、そしてドイツ人の父と日本人の母親から生まれたアリス・紗良・オット。

ユジャ・ワンは1987年2月生まれ、カティア・ブニアテシヴィリは1987年6月生まれ、そしてアリス・紗良・オットは1988年8月生まれ。そもそも、みんな美人だし、ピアニストとしての実力もまったく申し分ありません。

日本人とのハーフということで、アリス・紗良・オットは贔屓したくなるというもの。メジャー・デヴューのリストの「超絶技巧練習曲」やベートーヴェンのアルバムを買ったときに、ブログでも取り上げました。

他の二人に比べるとやや活動が低調な印象で、どうしてるのかなぁと思ったら、実は病気だったんですね。それも、多発性硬化症という日本では難病とされている病気。手足のしびれや運動障害を起こす可能性が高く、ピアニストとしては致命傷になりかねない。

無理せず、周りの事は気にしないで、あくまでも健康第一に少しずつ音楽を続けてもらいたいものです。そこで、目下のところの最新作の紹介。

自身のコメントが出ています。「このアルバムは、私の人生に今も影響する想いや瞬間を映し出しているだけでなく、今日のクラシックの音楽家として自分自身をどのように見ているかを描いた音楽の旅路です」とのこと。

以前のクラシックのアルバムではありえない構成なのは、メインはショパンの前奏曲 作品28の24曲なんですが、数曲ごとに現代の作曲家の小品を7曲挟み込んでいるところ。伝統至上主義では絶対に許されませんが、一定の形を尊重しながら現代に生かしていくことは、古典的文化の価値を現在、そして未来にまで続かせることになる。

特に最終曲は自作というのも力の入れようが伝わるというものですが、それ以外の現代曲はフランチェスコ・トリスターノ、ジェルジュ・リゲティ、ニーノ・ロータ、チリー・ゴンザレス、武満徹、アルヴォ・ペルトのものです。知らない作曲家もいるんですが、100年以上前のショパンとのコラボは意外と面白い。

ショパンの前奏曲集と思って聞くのではなく、アリス・紗良・オットのコンセプト・アルバムの中にショパンも使われているという感覚で聞くのが正解。もちろんショパン・アルバムとしても優れており、どうしても従来のフォーマットにこだわりたいなら、現代曲は飛ばして聞けばいいんですけど、だったらアリス・紗良・オットでなくてもいいことになります。