海堂尊のミステリー小説の「田口・白鳥シリーズ」を原作としているのが、映画やテレビドラマとなった「チーム・バチスタ」関連作品です。本作は、シリーズ3作目を原作として、テレビでも2nd seasonとして制作されています。監督は前作に引き続き中村義洋、脚本は斉藤ひろしと中村義洋が担当しました。舞台が同じ東城大学病院なので、1作目のキャストが引き続き登場します。
不定愁訴外来担当の田口公子(竹内結子)は、チーム・バチスタ事件解決の功績からか、不本意ながら病院長(國村隼)から院内倫理委員会委員長に指名されてしまいます。ある日、田口のもとに院内メールとして手書きの告発文が贈られてきました。
告発文には「救命センターの速水晃一(堺雅人)は業者と癒着している。婦長の花房(羽田美智子)も共犯だ」と書かれていました。速水はどんな救急依頼も断らず、ベッドが足りなければ強引に各科に患者を押し付けていくため、センター内からも他の診療科からも嫌われていたのです。
しかたがなく、関係者の聞き取りを始める田口でしたが、たまたま業者の磯部(正名僕蔵)が何かの包みを速水にこっそりと渡しているところを目撃してしまいます。そこへ救急車で運ばれてきたのは、交通事故に遭った厚生労働省技官の白鳥圭輔(阿部寛)でした。白鳥は下肢の骨折でギプスを巻かれて入院となりますが、田口に「俺とところに告発文が来た」というのです。
見ると、その告発文はワープロで作成されていて、ほとんど田口の受け取ったものと一緒の内容でしたが、ただ花房婦長の件は書かれていませんでした。白鳥は田口に、何が起こっているのか、あんたを助けてやると言い出して、車椅子で病院内をうろうろして、例によって関係者に高圧的・威嚇的・攻撃的に質問を浴びせかけるので、田口はひやひやし通しでした。
磯部はソフトボールの試合で田口と対戦した時の写真を、CDROMに入れて田口に渡します。しかし、そのすぐ後に磯部は屋上のヘリポートから転落死するのでした。事故も自殺も考えにくく、殺人の可能性が濃厚になったため、白鳥は経営効率ばかりを口にする三船事務長(尾身としのり)、精神疾患センター設立を画策する沼田(高嶋政伸)らの動向にも注目するのでした。
タイトルは、速水が救命のために「将軍(general)」のように振る舞い指揮をとることからきていますが、「ルージュ」の意味はは本編を見てのお楽しみです(ミステリーには直接関係はありません)。
救急医療は1次(軽傷)、2次(待機できる要入院)、3次(命に関わる、または高度医療が必要)に救急は別れていて、今は病院の能力に応じて救急車を断るということは「合法化」されています。しかし社会的な要請もあって、3次の現場では時には過酷な労働環境を強いられます。反面、患者さんが亡くなってしまうと診療費は回収できない場合も珍しくなく、病院の不採算部門と言われる場合もあります。
また、多くの予定で縛られている各科では、救急が割り込んでくると通常業務を圧迫する要因になることも当然あり、全体のコンセンサスがしっかりとまとまっていない病院では、この作品のベースになるような対立が起こり得るのです。それに対して精神科は、一般には机と椅子と電子カルテがあれば診療が成り立ち、コスパのよい代表的な診療科と言えるので、原作者の取材力の力は評価できるところです。
とは言え、殺人事件が疑われる段階で警察がほぼ登場しないというのは無理があります。白鳥・田口だけで速水の癒着の件の真相を究明するのはいいとして、エンタメ性を濃くするために原作には無い殺人事件を盛り込んだからには警察力は絶対に必要だと思います。
傲慢な白鳥が今回は比較的早くから登場し、お上の意向と関係なく救急に従事するスタッフから軽くあしらわれておちょくられるところは、阿部寛のコミカルな部分がほどよく描かれて楽しい場面になっています。
圧巻は、最後の大規模災害が発生して、病院が一丸となって受け入れるかなり長い時間を使った場面。直接ミステリーとは無関係ですが、救急医療とはどんなものかを端的に描いていて、ストーリー全体の真実味を底上げすることに成功していると思います。