2025年5月17日土曜日

犬部! (2021)

片野ゆかの「北里大学獣医学部 犬部」が原作で、青森県十和田市で獣医を目指しつつ犬や猫のために活動するサークルについてのノンフィクションですが、すぐに漫画化されたり、テレビでも取り上げられ注目されました。犬にまつわる活動をして、犬に関連した作品が多い山田あかねが脚本、「真夏のオリオン」の篠原哲雄が監督です。

獣医学部5年生の花井颯太(林遣都)は、動物たちの命を救うことを強く願っていて、たとえ実習といえども犬を実験台にして死なすことはできないのです。教授に頼み込んで実習の代わりに、動物病院で徹底的に見学をしたレポートを提出するのです。

動物愛護センターを訪れ、多くの保護犬が殺処分されていることにも憤りを感じていて、同級生の柴崎涼介(中川大志)と共に子犬を連れて帰りました。花井と柴崎は、猫好きの同級生佐備川よしみ(大原櫻子)、4年生の秋田智彦(浅香航大)らと共に「犬部」を結成し、犬や猫を保護して新たな飼い主に譲渡する活動を始めます。

卒業した花井は東京で小さな動物病院を開業し、動物たちが少しでも元気になるなら、お金にならないこともなんでも引き受けていました。そこへ川瀬美香(田辺桃子)という女性が訪れ、犬たちを助けてほしいというのです。久米(螢雪次朗)が経営しているペットショップでは、久米が犬たちの世話をしなくなりひどい状態になっていたのです。

花井は久米からどうにもできなくなった犬たちを引き取りますが、久米はすぐに警察に窃盗として訴えたため逮捕されてしまうのです。とりあえず釈放された花井は、久米のもとを再度訪れ、話を聞くように言いますが、久米は聞く耳を持ちません。

よしみは大学の研究室に残って、治療薬の開発をしていました。秋田は父の動物病院を手だっていましたが、父親は動物保護については全く理解がありませんでした。花井は二人にも協力してくれるように頼みます。しかし、柴崎は卒業後動物愛護センターに就職し、少しでも殺処分される動物を減らそうと努力していましたが、無力さから次第に精神的に追い詰められ退職していました。

保護犬がどのような運命をたどっているのかという現実はしっかり描かれていて、確かに問題点として重みを感じることができます。多頭飼育による、動物たちの生存環境の崩壊も怖いと思いました。

殺処分される動物には何の罪もなく、そこには人間のエゴもかなりの割合で関与していることは、動物を飼っていない人もしっかりと知っておくべきなのかもしれません。

展開としては、学生時代と社会人になってからが頻繁に交錯するのがわかりづらい。やっていることから今なのか昔なのかわかることはわかるんですが、フラッシュバックの多用はそれほど効果的ではないように感じました。

主人公の動物愛護精神がやや極端なところがやや感情移入しずらいところなんですが、そもそもそんなに無料奉仕ばかりして経済的にはどうなっているのか気になってしまいます。ただし、川瀬美香の正体が判明した時は、けっこう感動的です。

コロナ禍り間に公開された映画はあまり話題になりませんでしたが、良作がたくさん埋もれてしまっているのはもったいないことです。この映画もそんな一本だと思います。