2025年6月29日日曜日
同期のサクラ (2019)
遊川和彦は、「家政婦のミタ」、「女王の教室」などのたいへん話題になったドラマのオリジナル脚本を書いたかたで、高畑充希とは「過保護のカホコ」に続いてのオリジナル作品です。連続ドラマとして、最初から全体の構成がしっかりと考えられていて、全10話に無駄がありません。
開始早々、主人公はベッドに昏睡状態で寝ていて、いつ目覚めるのかわからないという状態。そこへ仲間らしき4人が心配で集まってきているのですが、何故そんな状況になっているのかの説明はないままに、初めて彼らが出会った時のことを回想するのです。
2009年に大手ゼネコンの花村建設に、5人の若者が入社します。主人公である北野サクラ(高畑充希)は新潟県の離島の出身で、本土との間に橋を架けることを夢見て上京しました。ものすごく頑固な性格で、曲がったことが大嫌いでおかしいと思ったことは口に出さずにはいられません。忖度ということと無縁で、空気を読むことを知らない「面倒くさい」人でした。
新入社員研修で同じグループになったのは、月村百合(橋本愛)、木島葵(新田真剣佑)、清水菊夫(竜星涼)、土井蓮太郎(岡山天音)で、サクラのマイペースに振り回されながらも同期として仕事に頑張ることになります。
しかし、パワハラやセクハラ、社内のいじめなど、さまざまな問題に直面し、それぞれが挫折しそうになった時、同期の仲間として嘘偽りのない態度で励ますサクラの力によって、彼らは何とか試練を乗り越えていくのです。サクラの影響力は先輩の火野すみれ(相武紗季)にまで及び、誰もがサクラを中心に結束力を高めていきました。
実はサクラも、忖度無しの発言や行動で問題を起こし、いつも「大人になれ」と言われ続けていたのです。サクラの心を支えていたのは、上京以来ずっと島にいる祖父(津嘉山正種)との毎日のファックスのやり取りで、人として大事なことを伝えられていたのでした。悩み苦しむ同期たちをどうやって応援するのかわからず自分の非力さを感じていたのですが、祖父の言葉が大きな力を与えていたのです。
ドラマではそれぞれがサクラの病床に見舞いに来て回想する形で進行し、その回想は各話ごとに1年ずつ時がたっている構成になっています。
そして2015年、故郷の橋の建設が決まり、住民説明会のためサクラも島に帰ることになりました。しかし、最低限の基準は満たしていましたが、できるだけ早く安く完成させるために手を抜いた設計であることを知っているサクラは、悩んだ末に説明会で「この橋を作ってはいけない」と言ってしまいます。さらに心の支えだった祖父が心臓病で急死してしまうことで、ついにサクラの心は壊れてしまうのでした。
引きこもり生活を続け、出社しなくなって1年近くがたち、解雇期限が迫る中、同期の仲間たちは何とかサクラを立ち直らせようと、かつての祖父からのファックスを真似たメッセージを送ります。やっと仲間と会いたいと思えたサクラは外に出ますが、隣人のこどもを助けようとして交通事故にあい脳挫傷のため昏睡状態になってしまうのでした(2019年3月31日)。
最初はサクラのかなりとがったキャラに見ている側も振り回される感じがしますが、しだいにその特異なキャラに慣れ、そして応援したくなる作りはよくできています。一見奇抜なんですが、ぶれない芯が通った人物像というのは、高畑充希にとっては一番得意な役柄なのかもしれません。
放送は2019年第4クールでしたので、ドラマの中の時間は第9話でリアルタイムに追い付きます。再び同期の絆を固め、新たなステージに向けて飛び立つ彼らを追いかけます。
とても良質などらまだと思いますが、唯一残念なのはタイトル。古い軍歌の中でも「同期の桜」はかなり有名ですが、それでも若者にはあまり知られているとは言い難い。幅広い年代に興味をもたせようという趣旨なのかもしれませんが、軍国主義を真っ先に想像させる感じが「なんかなぁ」という気持ちにさせました。