2025年9月12日金曜日

FOUR〜求め続けた奴等の革命 (2000)

TEAM NACSの第6回本公演ですが、タイトルには「番外公演」とついています。その理由は、4つの短編のオムニバス形式ということ。しかも、ここまでリーダーである森崎博之の作・演出の舞台だけをやってきた彼らが、初めて戸次重幸、音尾琢真、大泉洋、安田顕のそれぞれが作・演出しています。

会場はルネッサンス・マリア・テアトロで、ここは当時の若手の札幌演劇界を牽引する拠点になっていた劇場です。250席ですが、12公演で3000人を動員しているので、連日満席だったことがわかり、すでにTEAM NACSの人気が高かったことがわかります。この公演で、この数か月後に「WAR〜戦い続けた兵たちの誇り」を公演することを予告していましたが、このすぐ後に会場が閉館となっています。

「通販番組」 脚本・演出 戸次重幸

テレビの通販番組の収録風景をギャグにしたもの。とても誰も買いたくならないような品物を売り込みたいスポンサーが、新人MC(音尾)にムチャブリをして困らせるというもの。音尾の演技力が光ります。

「King of Curry」 脚本・演出 音尾琢真

カレー王が亡くなり、辛いカレーが食べられないカレー王子(音尾)、臣下のハンバーグ・カレー(大泉)、カツカレー(森崎)らと、カレー王子の命を狙うシチュー国のクリーム・シチュー(戸次)、シチュー王国からスパイとして潜入していたビーフカレーことビーフ・シチュー(安田)らがハヤシライスの秘密を巡って戦います。

物語の構成としては、一番まともに考えられている。きちんと細部を膨らませれば、通常の公演をうてるほどの内容だと思います。20周年記念企画では、朗読劇としても再演されました。

「ナックス・ハリケーン」 脚本・演出 大泉洋

アイドル・グループ(あからさまにSMAPのパクリ)のチーム・ナックスのステージ。チームは、ラストに「ナックス・ハリケーン」を歌って楽屋に戻ります。すると戸次が「もう、アイドルはやめたい。俺は芝居をしたい」と言って、一人でステージに戻り勝手に「西遊記」を演じ始めてしまいます。連れ戻そうとメンバーがステージに出ると、芝居に巻き込もうとするのでみんなも怒ってしまう。一人になった戸次はマイナー調の悲しい雰囲気で「ナックス・ハリケーン」を歌い出すと、全員が出てきて一緒に歌うのでした。

注目は彼らのテーマ曲みたいに今でも歌い続けられている大泉洋作詞・作曲の「ナックス・ハリケーン」の原典版が登場するところ。まさにSMAPというような、イントロ(SMAPの"ダイナマイト"の流用)での激しい踊りはなかなかのもの。また、その後は伴奏は無くアカペラというのが激レア物の楽しさです。

「すばらしい日々」 脚本 安田顕、演出 全員

年老いたTEAM NACSメンバーが森崎を中心に昔を懐古する話。森崎は娘と孫を交通事故で同時に失っていて、ずっと悲しみに暮れた生活をしていたのです。メンバーはそんな森崎に、楽しかった頃を思い出させて元気づけようとしますが・・・実は、すでにみんな天国に旅立っていて、森崎だけがメンバー最後の一人になっていたのです。

2008年のオムニバス映画「N43゚」で、森崎作の「AFTER」は、森崎だけが先に死んでしまうので、ある意味この話の裏返しのようになっていますので、合わせて見ると感慨深い。ただ、やはり安田作品は、この頃からやや複雑で理解しにくい所があるみたいです。