世界の国々には諜報機関が必ずあって、秘密裏に情報収集をしているわけですが、日本だといわゆる警察の中の組織である公安、その中の外事課が主として「スパイ活動」をしているという理解でいいと思います。
アメリカだとアメリカ中央情報局、いわゆるCIAがその任に当たっています。イスラエルだとモサドと呼ばれる諜報特務庁ですが、特に過激な行動で世界中から恐れられています。フランスでは、DGSE(対外治安総局)とDGSI(国内治安総局)で、ロシアならソ連時代のKGBから派生した連邦保安庁(FSB)、対外情報庁(SVR)、軍参謀本部情報総局(GRU)の3つ。
007のコード・ネームで知られるジェームス・ボンドは架空の人物ですが、彼が在籍したのはイギリスの対外的な諜報機関であるMI6で、イギリス国内中心の活動をしているのがMI5です。MI6の正式名称は、イギリス秘密情報部(SIS)ですが、「サーカス」の呼び名でも知られ、トップはコントロールと呼ばれていました。007の原作者イアン・フレミングも元MI6職員でした。
この映画は、同じく元MI6で活動していた「寒い国から帰ったスパイ」のジョン・ル・カレの小説が原作。MI6の内部にソビエト連邦の二重スパイ(通称モグラと呼ばれます)がいて、これをあぶり出そうという内容の作品。監督はトーマス・アルフレッドソン。スパイ映画としては高い評価を得ています。
1970年代初め、MI6では多くの情報がソ連に漏洩し、アメリカからも信用されなくなっていました。コントロール(ジョン・ハート)は、内部にモグラがいることを確信し、一人の部下を裏切り者を突き止めるためにハンガリーに向かわせますが、その情報すら筒抜けで部下は殺されてしまいます。
この事件の責任を取る形で、コントロールと右腕のジョージ・スマイリー(ゲイリー・オールドマン)が辞任することになりました。その後、MI6を管轄する外務次官はある情報によりモグラの存在を認めざるをえなくなり、ひそかにスマイリーを復帰させ調査を命じるのでした。
スマイリーはコントロールの調査記録をもとに、幹部4人に目標を絞ります。彼らは、コード・ネームでティンカー(鋳掛け屋)、テイラー(仕立て屋)、ソルジャー(兵隊)、プアマン(貧乏人)、と呼ばれ、スマイリー自身もベガマン(乞食)と呼ばれていたのです。
コントロールが去った後、リーダーはティンカーが勤めていて、彼がソ連の二重スパイから得た情報をもとにウィッチクラフト作戦が始まっていましたが、スマイリーはその情報そのものが偽物であると考え、それをソ連大物スパイであるカーラという人物が仕組んだもので、モグラによって情報がさらにソ連に渡ることになっていたのです。
若い元気はつらつのスパイが活躍するわけではなく、渋い中年のベテランたちが、心理戦的な駆け引きをする内容です。全体に暗い映像で、地味な印象。インサート・シーンが多いので、かなり緊張して見ていないと訳がわからなくなります。
とは言え、現実のスパイの世界はこうなんだろうという、リアルな緊張感が持続するので、最後まで目が離せません。同じMI6出身でも、フレミングはカッコよさを目一杯誇張しましたが、ル・カレは堅実にリアルな世界を表現したというところが対照的です。
