躍進目覚ましいNetflix映画。原作は、麻生羽呂・原作、高田康太郎・作画による日本のマンガで、脚本・三嶋龍朗、監督・石田雄介で実写化されました。タイトルが示す通り、ゾンビが出てくるんですが、邦画で似たような作品で思い出すのが、やはりマンガ原作の「アイアムヒーロー(2016)」です。両者を見て日本のゾンビ映画も完成度が高くなったと思いますが、こちらはどちらかとコメディに寄せていて、怖さより楽しさが勝っている感じです。
アキラ(赤楚衛二)がやっと就職した会社は超の上に超がつくブラック広告代理店でした。上司の小杉(北村一輝)はスーパーパワハラ人間で、アキラは次第に小杉に逆らえない人間になっていくのです。
ところが、ある日突然に街中で人間がゾンビと化し、襲われて噛まれた人間もゾンビになってしまうというパニックが発生します。アキラはゾンビから逃げながらも、これで会社に行かなくてもよくなったと喜んでしまうのでした。どうせ自分もゾンビになってしまうのなら、いっそのことできるだけやりたいことをやってやろうと思い立ち、ノートに「ゾンビになるまでにしたい100のこと」を書き始めるのです。
コンビニで偶然出会ったシズカ(白石麻衣)は、生き延びるために独力で自分を守ると言い、やりたいことをするために無鉄砲に突進するアキラにあきれてしまいます。親友のケンチョ(柳俊太郎)をゾンビに囲まれた部屋から助け出し、アキラは昔からなりたかったスーパーヒーローになるため、茨城の水族館にある、噛まれても大丈夫なサメの皮膚で作ったスーツをもらいに行くと言い出します。
二人でドンキホーテで必要な物資を調達することにしますが、店の前にはゾンビの群れが集まっていて、しかもそこに逃げる人々の乗ったバスが突っ込んでくるのでした。ゾンビに襲われたバスにはシズカも乗っていて、バスは茨城の水族館が食料もたっぷりあって安全だというので向かうところだったと話します。
何とかゾンビを撃退した3人は、キャンピングカーで茨城に向かうことにします。途中で、アキラがしたいと思っていた温泉に入ったり、パラグライダーを楽しんだりするうちに、しだいに彼らの間には仲間意識が芽生えていくのでした。しかし、やっと到着した水族館は、何と偶然そこで仕事をしていて助かった小杉が、逃げてきた人々を言葉の暴力で支配するブラックな状況だったのです。
いつものように原作は未見なのですが、少なくとも映画ではゾンビ化の原因とかは触れられていません。ゾンビを倒すことが主眼のストーリーでは無いので、それはそれで良しとします。つまり、ブラックな環境で考えることを停止してしまったアキラが、再び人間性を取り戻し、本当にやりたかったことをやれる自分に成長するというところがテーマです。
シズカの素性についても、ほとんで触れられていませんが、何らかの理由で勉強を辞めてしまった医学生?らしい。シズカは、アキラと対照的にズケズケと物が言えるのに、生きるためにできるだけ忍耐を選んでいました。しかし、どんどん前向きなアキラと行動を共にしていくうちに、彼女もまた成長していくのです。
ちょっと優しさが強めのアキラ役の赤楚衛二はぴったりですし、北村一輝も顔が濃くて声に威圧感があるので(ゴメンナサイ)、この強面上司ははまっています。市川由衣や筧美和子といった美人系女優さんがゾンビ化してしまうのも見どころになっているかもしれません。