2025年6月2日月曜日

ゾン100〜ゾンビになるまでにしたい100のこと〜 (2023)


躍進目覚ましいNetflix映画。原作は、麻生羽呂・原作、高田康太郎・作画による日本のマンガで、脚本・三嶋龍朗、監督・石田雄介で実写化されました。タイトルが示す通り、ゾンビが出てくるんですが、邦画で似たような作品で思い出すのが、やはりマンガ原作の「アイアムヒーロー(2016)」です。両者を見て日本のゾンビ映画も完成度が高くなったと思いますが、こちらはどちらかとコメディに寄せていて、怖さより楽しさが勝っている感じです。

アキラ(赤楚衛二)がやっと就職した会社は超の上に超がつくブラック広告代理店でした。上司の小杉(北村一輝)はスーパーパワハラ人間で、アキラは次第に小杉に逆らえない人間になっていくのです。

ところが、ある日突然に街中で人間がゾンビと化し、襲われて噛まれた人間もゾンビになってしまうというパニックが発生します。アキラはゾンビから逃げながらも、これで会社に行かなくてもよくなったと喜んでしまうのでした。どうせ自分もゾンビになってしまうのなら、いっそのことできるだけやりたいことをやってやろうと思い立ち、ノートに「ゾンビになるまでにしたい100のこと」を書き始めるのです。

コンビニで偶然出会ったシズカ(白石麻衣)は、生き延びるために独力で自分を守ると言い、やりたいことをするために無鉄砲に突進するアキラにあきれてしまいます。親友のケンチョ(柳俊太郎)をゾンビに囲まれた部屋から助け出し、アキラは昔からなりたかったスーパーヒーローになるため、茨城の水族館にある、噛まれても大丈夫なサメの皮膚で作ったスーツをもらいに行くと言い出します。

二人でドンキホーテで必要な物資を調達することにしますが、店の前にはゾンビの群れが集まっていて、しかもそこに逃げる人々の乗ったバスが突っ込んでくるのでした。ゾンビに襲われたバスにはシズカも乗っていて、バスは茨城の水族館が食料もたっぷりあって安全だというので向かうところだったと話します。

何とかゾンビを撃退した3人は、キャンピングカーで茨城に向かうことにします。途中で、アキラがしたいと思っていた温泉に入ったり、パラグライダーを楽しんだりするうちに、しだいに彼らの間には仲間意識が芽生えていくのでした。しかし、やっと到着した水族館は、何と偶然そこで仕事をしていて助かった小杉が、逃げてきた人々を言葉の暴力で支配するブラックな状況だったのです。

いつものように原作は未見なのですが、少なくとも映画ではゾンビ化の原因とかは触れられていません。ゾンビを倒すことが主眼のストーリーでは無いので、それはそれで良しとします。つまり、ブラックな環境で考えることを停止してしまったアキラが、再び人間性を取り戻し、本当にやりたかったことをやれる自分に成長するというところがテーマです。

シズカの素性についても、ほとんで触れられていませんが、何らかの理由で勉強を辞めてしまった医学生?らしい。シズカは、アキラと対照的にズケズケと物が言えるのに、生きるためにできるだけ忍耐を選んでいました。しかし、どんどん前向きなアキラと行動を共にしていくうちに、彼女もまた成長していくのです。

ちょっと優しさが強めのアキラ役の赤楚衛二はぴったりですし、北村一輝も顔が濃くて声に威圧感があるので(ゴメンナサイ)、この強面上司ははまっています。市川由衣や筧美和子といった美人系女優さんがゾンビ化してしまうのも見どころになっているかもしれません。

2025年6月1日日曜日

新幹線大爆破 (2025)


新幹線大爆破」は50年前、1975年に名優・高倉健の主演で作られた映画で、任侠路線からの転換を模索していた高倉が、安いギャラでもいいから出演したいと熱望して犯人役を演じたもの。当時ハリウッドで流行していたパニック物を日本に持ち込んだ先駆けとしても評価され、JR(当時の国鉄)が協力拒否したものの、佐藤純爾監督らの様々なアイデアによって、かなりのリアリティを再現できたことも評価されています。

すでに安全神話が成立していた新幹線が、制御不能の恐怖の走る箱と化すというアイデアは監督を中心としたスタッフの話し合いで煮詰まっていきました。新幹線の速さが革新的で日本の高度成長の到達点のような憧れを持って喜ばれていた時代ですから、80km/h以下にスピードを落とすと爆発するという、もう止まることができない状況は多くの日本人に根源的な恐怖を植え付けたのでした。

今回、半世紀を経て再び同じタイトルでNetflixがリブートしたわけですが、今風の雰囲気を取り込んだ単純なリメイク作であれば、二番煎じ以上の評価はされなかったかもしれません。しかし、一見、前作と同じように事件が進行するものの、以前の事件が新たな事件の引き金となっている内容で続編的な色を濃くしたこと、そして今回はJRが全面的に協力したことで高く評価できる作品になっています。

監督は「シン・ゴジラ」、「シン・ウルトラマン」の樋口真嗣、脚本は中川和博・大庭功睦です。また草彅剛、のんという、ある意味芸能界で一度排斥されながら、地道に活動し再評価された二人の出演も話題性だけでなく評価されるポイントになっています。

前作では高倉を主演に迎えたこともあり、犯人側の視点が盛り込まれ、高度成長の日本の中でその波に乗り切れなかった人々の悲しみが取り上げられていました。しかし、今作の特徴は、東北新幹線が100km/h以下になると爆発するという究極の恐怖に集中するため、あえて人物像には深入りしていないところにあります。

人を描いていないという批判はおそらく監督らは覚悟していたと思いますが、確かに前作をしらない人に対しては「何故新たに同じような事件が起きたのか」という情報不足は否めない。本編の中でも昔の事件について最小限の紹介はされていますが、そこを理解するためには数分間のあらすじの挿入では不十分ですから、はっきり言うと前作を絶対に見てから本作を見ることを強くお勧めします。

緊迫した事態に対応する実直(すぎるくらい)な車掌に草彅剛、スピードを緩められずジェットコースターのような車両の運転手にのん、危機管理能力と決断力がある総括司令長に斎藤工、乗客にはスキャンダルからの復活を狙う国会議員に尾野真千子、SNS成金のYouTuberに要潤、修学旅行の帰りの女子高校生に豊嶋花、ヘリコプター墜落事故で多数の死傷者を出して社会的に糾弾される社長に松尾諭などが出演しています。

JRの協力もありますが、CGなどの映像技術の進歩により、止まれない密室となった新幹線の映像は迫力があり、それは前作の比ではありません。俳優たちの演技も素晴らしく、ドラマとしての格を何段階も上げることに成功しています。

ただし、やはり前作を知っている者からすれば、それを超えているとまでは言えないし、見ていない者には理解しずらいところが多い作品だとは思います。それはある程度しょうがない部分で、現代風のエンターテイメントとしては評価されることは間違いありません。

2025年5月31日土曜日

くらしのこよみ


暦の上で、期間の分け方は四季しか知らなかったが、10年ほど前の自分。ところが、「季節」と言うくらいで、4つの「季」だけでなく「節」も、それも24もあるわけで、さらに細分化した「候」もある。

そもそも日本人なら知っているはずの「四季・二十四節季・七十二候」を知るきっかけになったのが、「くらしのこよみ」というアプリで、5から6日ごとに変わっていく候を美しい写真と簡潔ですが内容のある文章で紹介するというもの。

残念ながらアプリは昨年、配信が終了してしまったのですが、内容はそのまま書籍化され平凡社から発売されています。編集したのは「うつくしいくらしかた研究所」というところでHPではまだ閲覧できるようです。

パソコン・スマホ大好きとは言っても、しょせん昭和人ですから、アナログな「本」というものは一番重宝しているので、すぐに購入しました。今となっては買ってて良かったこよみ本という感じです。

それぞれの季・節・候の説明、それに関連した文化・文明のトピック、旬の食材などの話はとてもわかりやすく、目から鱗のようにすっきりさせてくれます。

また、楽しみなのは「和漢三才図会」という、18世紀はじめに寺島良安に作られた(日本で初めての?)百科事典の挿絵などがたくさん使われているところ。

以前も、ブログの中で七十二候を追いかけたのですが、今の時期である「麦秋至」からスタートしています。季節感が崩れてきている昨今ですが、だからこそまた暦を積極的に意識してみたいなと思いました。

2025年5月30日金曜日

Penthouse ONE MAN LIVE TOUR “Balcony” (2024)

PENTHOUSEというバンドは、どんだけ知られているんだろう?

最近の流行を追いかけなくなってずいぶん経つので、自分が知ったのはつい最近。こういう唯一無二の個性を持ったバンドは貴重ですから、一発で気に入りました。

もともとは東京大学の音楽サークル仲間によって2018年に結成された、「シティポップス」ではなく「シティソウル」を目指す6人組。特徴は男女のツインボーカルというところ。

何で知ったかと言うと、実はバンドのキーボード、角野隼人(すみのはやと)を知ったのが先。しかも、それは権威のあるショパン・コンクールの本選に残った、クラシック・ピアノの超期待の新星だということからなんです。

ショパンのピアノ協奏曲を演奏したCDも出していますし、Cateenという名前でYouTuberとしても、クラシックだけでなく個性的な演奏を披露しています。一方で、バンドにも参加しているというのが驚くべきバイタリティです。

時にロック、時にジャズ、時にポップスという無国籍的なバンドですが、なかなか気が利いた男女のボーカルとCateenのピアノが、最高にのりのりになれる時間を提供してくれます。

ボーカルは浪岡真太郎(東大農学部卒)と大島真帆(青山大学経済卒)。ギターは矢野慎太郎(東大法学部卒)、ベースは大原拓真(東大文学部卒)、キーボードは角野隼人(東大理工学部大学院卒)、そしてドラムは平井辰典(東大工学部卒)という、メンバーはいずれも超高学歴エリート集団です。

メジャー・デヴューは2023年3月の「Balcony」で、そのアルバムを引っ提げてのツアーを収録したのが今回紹介する映像です。2024年11月には2ndアルバムの「Landry」も登場しています。

このツアーは5大都市を巡り、チケットは即日完売になったらしい。6月19日のZepp DiverCity Tokyoのライブを収めています。この会場は最大で立ち見も含めて2500人くらい入るようですが、新進気鋭の若手の登竜門的な位置づけではないでしょうか。

車の中の音楽としてもばっちりなので、今後の活躍が楽しみです。

2025年5月29日木曜日

くちなしの花


♪ 今では指輪もまわるほど やせてやつれたお前の噂・・・

2020年に亡くなった渡哲也の最大のヒット曲で、タイトルは「くちなしの花」、作詞をしたのは昭和歌謡を支えた水木かおるです。

旅をしている男の心に、絶えず別れた女性への想いが湧いてくる情景をくちなしの花に例えています。それというのもくちなしの花は香りが強いからで、男は今の時期に旅をしていて、行く先々で強い香りを放つくちなしの花の匂いをに出会うということなんでしょう。

クチナシは比較的よく見かける常緑低木ですが、もともとは実がついても熟して割れたりしないので「口無し」というところから名前がついたらしいのですが、最近は栽培品種で八重咲のガーデニアと呼ばれるものが多くなりました。

確かによく匂うので、人によっては好き嫌いがはっきりするかもしれません。花は美しいので見栄えは良いのですが、惜しむらくは、花が開き切ると同時に端から黄色くなって、数日で茶色く変色してしまう。蕾がたくさんあっても、たくさんの白い花が満開になる光景は期待できません。

2025年5月28日水曜日

動物愛護法

動物愛護法は、そもそもは昭和48年に作られたもののようですが、時代の変遷とともに度々改正され、最新のものは本年6月1日から施行されます。

この法律の目的は、動物の虐待及び遺棄の防止、動物の適正な取扱いを定めて国民に生命尊重・友愛を奨励し、人の生活環境が動物によって侵害されたないように人と動物の共生する社会の実現を図ることにあります。

実際は法律ですから、何か難しい言葉が使われているんですが、簡単に言うとこんな感じ。

動物を飼うものは、動物に適切な生存環境を用意し、必要な食糧や水分などを与えるなければなりません。感染症などに注意して、動物の健康に対しても責任が生じます。また、周囲の人々に騒音・匂いなどで迷惑が掛からないように注意する義務があることも明記されています。

職業的に動物を扱う場合は、第一種動物取扱業と第二種動物取扱業者に分かれていて、第一種は動物を営利目的で販売・保管・貸出し・訓練・展示する場合で、畜産業や研究目的は除かれます。動物とふれあうのも展示になるので、猫によって客を集める猫カフェとかはこの範疇に入りそうです。

第一種の場合は、資格を取得した動物取扱責任者を選任し、自治体から認可を受ける必要があります。第二種は営利目的ではない場合で、この場合は届出だけで可能です。

ただし、人に危害を加えるおそれがある動物は特定動物という扱いになり。飼養又は保管をしてはならないと定められています。ゴリラ、チンパンジー、オラウータン、オオカミ、コヨーテ、ハイエナ、クマ、ヒョウ、ゾウ・・・などまぁ、そりゃそうだよね、という動物ばかりですが、どうしても飼いたいと言うなら許可を取る必要があります。

あとは、難しい言葉で罰則などが書かれているわけですが、へぇ~と思ったのは、ペットショップなどから犬猫を購入した場合、マイクロチップ装着が義務付けられていねというところ。これは令和4年から実施されていて、ショップが皮下に埋め込みます。マイクロチップには動物の個体情報と飼い主の情報が書き込まれます。

飼い主が変わった場合も登録の変更が必要で、環境省への届出をしなければなりません。ペットショップ以外などからマイクロチップ無しの動物を譲り受けた場合、飼い主はマイクロチップ装着の努力義務があるそうです。

これはごく普通の動物を飼う人にはちょっとだけ面倒が増えますが、動物が迷子になったりしても探しやすくなります。また動物の不適正な飼育などを防ぐ一定の抑止力にもなると思われますので、実効性のある運用が期待されます。

2025年5月27日火曜日

ねこタクシー (2010)

2010年1月から1話30分ドラマとして、地方テレビ局が主体となって全12話が放送されたテレビドラマですが、同年6月にこの映画版が公開されました。映画版はテレビと同じ設定、同じ出演者ですが、ストーリーはテレビ版とは異なる展開となっています。もともとは永森裕二の小説が原作。テレビから引き続き亀井亨が監督し、脚本は原作者も参加しています。

間瀬垣勤(カンニング竹山)は、中学校教師をしていましたが人を信じることが不得意で、自ら教師の資格なしと考え、タクシー運転手に転職しました。妻の真亜子(鶴田真由)も中学校教師をしていて、そんな夫を優しく見守っていました。娘の瑠璃(山下リオ)は高校受験を控えていて、主体性のない父親を疎ましく思っていました。

勤は、たまたま休憩中に公園に積まれた土管に御子神という名札をつけた三毛猫を見つけ、気にかけるようになりました。ある日、勤は客の猫連れの老婆に釣銭詐欺をされてしまいます。同僚の女性ドライバーである丹羽(芦名星)によると、通称「ネコばばするネコババア」(室井滋)として有名で、たくさんの運転手が被害にあっていて、家に乗り込むとたくさんの猫に驚かされて追い返されるらしい。

勤はネコババアの家を訪ねると、行き場のない猫を助けていたらすごい数になったという猫の中に、御子神様がいました。勤は、御子神様と御子神様を慕う子猫のコムギを譲り受けます。最初は真亜子に反対されますが、「お父さんが自分から行動するのを見るのは初めてだから」と瑠璃が賛成したことで、家で飼うことになります。

昼間に二匹を放置できないので、勤はタクシーに乗せることしますが、猫をきっかけに客との会話ができるようになり、売り上げも急に伸び出したのです。勤と共に成績ワーストを争う丹羽は、勤をこっそり観察し猫を乗せていることに気がつきます。丹羽も猫を乗せるようになりますが、評判になって雑誌の取材を受けたことで、保健所の調査が入ってしまうのでした。

会社にも内緒にしていたので、丹羽は退職し、勤も猫を連れていけなくなりました。勤は保健所の担当者(内藤剛志)に何度も掛け合いますが、動物愛護の観点から見過ごすことはできないし、そもそも動物を営業に使うための資格が無いと言われてしまいます。タクシーに乗らなくなった御子神様は急に元気が無くなってきたため、勤は資格を取るために一念発起して猛勉強を始めるのでした。

主演がカンニング竹山で、タイトルからしてギャグとしか思えない。ついに動物系コメディ見つけたぁ~、と喜んだら、どうも笑いどころは無くて、やっぱりヒューマン&アニマル人情ドラマでした。

とは言っても、いつも馴染みのあるキャラクターと正反対の役を演じたカンニング竹山は、さすがに演技者としては満点とはいきませんが、周囲の配役に助けられてそこそこ頑張っている感じです。

現実には猫をのせたタクシーというのは「闇」でなければ無理な話だとは思いますが、動物が苦手でなければ楽しそうです。予約できるならまた乗りたいと思うかもしれません。人を信用できない主人公が、猫を介した他人との関係の中で、次第に自分に自信を持つようになるところは納得してしまいます。

動物がメインに登場するストーリーは、洋画にはコメディもあるんですが、邦画の場合は人情系ばかりで、さぁここで泣いてくださいみたいなものばかりです(この作品は泣きません)。それはそれでいいんですが、もう少し幅を広げてくれないと展開に新鮮味がありません。

2025年5月26日月曜日

猫は抱くもの (2018)

大山淳子による5編の連作短編集が原作ですが、それぞれの話のモチーフを用いて犬童一心監督がオリジナルのストーリーを組み立て、高田亮が脚本を担当しました。ファンタジー色が強い、独特の世界観で展開する不思議な作品です。

大石沙織(沢尻えりか)は、昔アイドルグループの一員で端であまり目立たない存在でした。あまりパッとしなかったグループが解散後は、スーパーのレジの仕事をして、裏の倉庫で密かに良男と名付けた猫(吉沢亮)を飼っていました。毎日のどうでもいいことを良男に話をしている時が、沙織は一番心が休まる時間だったのです。

スーパーの本部の高橋(柿澤勇人)に誘われるようになった沙織は、良男と過ごす時間が減ってしまったことが、自分は人間で沙織の恋人だと信じている良男には不満でした。しかし高橋は沙織が元アイドルだということだけで近づいただけで、本命の彼女は別にいたのです。

グループが解散した時も、プロデューツーのササキ(柿澤勇人)に遊ばれましたが、それきりで仕事はもらえなかったことを沙織は思い出します。辛そうにしている沙織を見ていて、良男はどうすることもできない自分の不甲斐なさから倉庫を飛び出し、川に落ちてしまいます。

気がつくと、良男は野良猫のたまり場にいました。そこで、絵描きのゴッホ(峯田和伸)の飼い猫キイロ(コムアイ)と知り合います。ゴッホがキイロばかりを可愛がるので、面倒を見ている女子高生が捨てたのです。沙織とゴッホは、良男とキイロを探すのですが見つけることができません。

沙織のもとに、特番のためにグループを一夜限りで復活したいという連絡があり、沙織はテレビ局に出かけていきます。しかし、ササキにはまったく見向きもされず、バラエティ番組であまりのひどい扱われ方に心は砕け散ってしまうのでした。

実に凝った構成の映画で、ロケでの撮影による部分が全体の1/4程度で、ほとんどが劇場の舞台で進行します。小道具もいかにも芝居用という感じでリアリティはありません。そして、何よりも混乱するのは、猫は擬人化され俳優たちが人間の格好のママに演じているのです。

その俳優たちは、それぞれがちょっとずつ登場する人間の役もやっているのですから、とにかく設定に慣れるのに一苦労します。その最たるものが吉沢亮の良男ですが、沢尻エリカに膝枕をしてもらい頭を撫でられるのは、まさに沙織が猫を愛でていることになります。

とにかくラストに向かって、そんな擬人化された猫、あるいは擬猫化された人間が入り乱れるのですから、正直、何が何だかよくわからない。よくわからないのですが、その勢いに巻き込まれて、猫は人の孤独の隙間を埋めることができるんだろうなと感心してしまうのでした。

2025年5月25日日曜日

きな子〜見習い警察犬の物語〜 (2010)

2002年に香川県の丸亀警察犬訓練所で生まれたラブラドールレトリバーのきな子は、警察犬になるべく訓練を受けるものの、そのズッコケぶりがたまたま地元のテレビで紹介されたことから人気者になりました。2010年の7回目の競技会で優秀な成績を出し、2011年にやっと正式に警察犬になりました。

この映画は、きな子と訓練士になるために共に奮闘する女性をモデルとして作られたもので、主としてフジテレビ系ドラマを手掛けた小林義則が監督、「シン・ゴジラの浜田秀哉が脚本を担当しています。

優秀な警察犬をたくさん育てた望月遼一(遠藤憲一)の娘、杏子(夏帆)は自分も訓練士になるため、母(浅田美代子)の反対を押し切って父の後輩、番場晴二郎(寺脇康文)の訓練所に見習いとして入所します。

訓練所は番場の妻の詩子(戸田菜穂)、料理好きの息子の圭太(広田亮平)、生意気な娘の新奈(大野百花)ら家族が協力して運営されていて、唯一の先輩訓練士として田代渉(山本裕典)がいました。

見習いは朝早くから夜遅くまで犬舎の管理ばかりで、犬を訓練するような時間はありません。番場も積極的に教えるふんいきではありませんでした。杏子は警察犬には向いていないとほったらかしになっているきな子を育てると決心し、田代に相談しながら少しでも空き時間を作りきな子と関わるようになっていきます。

初めての試験になりましが、きな子はジャンプを失敗したり匂いの嗅ぎわけができなかったりで、杏子はがっかりします。しかし直後にきな子は倒れてしまい、試験に向けて休む暇がなく過労によるものと判断されました。番場は試験の失敗はきな子が未熟なのではなく、訓練士が未熟だからだと杏子に言うのでした。

ただ、そのきな子が失敗する様子をたまたま取材していた地元テレビ局が放送したところ、きな子は人気者になりいろいろなイベントに呼ばれるようになるのです。杏子は、訓練士としてきな子を警察犬にできないことに心が折れ、訓練所を辞める決意をするのでした。

杏子が去ったことできな子も番場の家族も寂しい日々を送っていましたが、いつもは生意気なことばかりを言う新奈が、こっそりきな子を連れて杏子の元に向かうのでした。しかし、その頃香川県には暴風雨が迫っていたのです。

警察犬はドラマチックなストーリーが作りやすいのか、映画・ドラマに登場することが多いように思います。ただし、今作では訓練士と犬の未熟者同志の成長というよくある話ですが、大部分はノンフィクションらしいので、きな子と杏子がお互いに信頼を築いて努力することには敬服するしかありません。

ですが、内容は展開が強引なところが気になる。そもそも杏子ときな子が遊んでいるシーンは多いのですが、実際に訓練しているところはほとんどありません。番場も「勝手にどうぞ」と言ったきりで、まともに教えている場面が無い。警察犬と言う特殊な能力を引き出すためにはそれ相応の方法があるはずなんですが、これでは物足りません。

実在のきな子を知っている人からすれば、映画公開の時点ではきな子はまだ警察犬になれていなかったことは既知の事実ではあるのですが、映画の終わり方についても中止半端で「えっ? ここで終わり?」という感じです。

映画ですから、一から十まで映像で見せたり、台詞で説明したりする必要はありませんが、杏子ときな子の成長がテーマなので、その結末はもう少していねいに描いてもらいたかったと思います。結局、結が定まらないうちに起承転だけで作られた映画という印象でした。

2025年5月24日土曜日

旅猫リポート (2018)

「図書館戦争」の有川浩の小説が原作で、猫好きの青年が自分の生い立ちを猫と一緒に振り返り、もう涙なくしては見れない泣きの映画です。脚本は、原作者の有川浩と山田洋二監督作品の脚本を数多く手掛ける平松由美子が担当し、「弱虫ペダル」の三木康一郎が監督をしています。

宮脇悟(福士蒼汰)は、飼い猫のナナ(声・高畑充希)と共に車で旅に出ます。ナナはもともと野良猫でしたが、悟はしょっちゅう食べ物を分けてくれていました。ある時、交通事故にあったナナを悟が病院に連れて行き、それ以来ナナは悟の飼い猫になったのです。

ある事情でナナを飼うことができなくなった悟は、最初にナナを預かっても良いという小学校の時の友人だった澤田幸介(山本涼介)のもとに向かいます。幸介の父親は、幸介が拾った猫を飼うことを許さないため、ハチと名付けたその猫は悟の家で飼うことになり、家族の一員として大事に育てられました。

しかし、悟が修学旅行に出かけているとき、悟の両親が交通事故で二人とも亡くなってしまいます。親類が悟の処遇をなすり合いしている中で、母親の妹、法子(竹内結子)が毅然と引き取りを宣言するのでした。しかし、裁判官の仕事をしている法子は転勤が頻繁で猫を飼うことができないため、ハチは高松の遠縁に預けることになりました。

いまだに父親との関係がよくない幸介は、そのため妻も実家に帰っていたのです。ナナがいれば妻も考え直してくれるかもしれないと話すのですが、悟はそれならハチとの一件を引きづらないように、まったく新しい真っ新な猫を奥さんと探した方が良いと言ってナナを連れ帰ります。

預かりを申し出てくれた中学の友人は、たまたま飼い猫が増えてしまったので数か月待ってほしいと言ってきました。高校の友人だった、今では夫婦で動物ペンションを営む杉修介(大野拓朗)と千佳子(広瀬アリス)を訪ねます。

夏休みに高松にハチに会いに行くための資金を集めたい悟は、修介と一緒に千佳子の家の茶畑の手伝いをしたことがありました。その時に、ハチが事故で死んだことを知らされ、高松にはいく必要がなくなったという悟に、千佳子はちゃんとお別れをしに高松に行かなくては駄目だと言うのでした。

二人はナナを歓迎してくれましたが、修介が飼っている犬とナナがどうしても合いそうになく、無理と判断した悟は再びをナナを連れて法子の家に向かうのでした。法子は悟とナナのために、転勤のない弁護士に転職していたのです。しかし、悟に残されている時間はあまり無かったのです。

劇中で悟は大変な十字架を背負っていたことが明かされ、それでも両親や法子、たくさんの友人たち、そしてハチとナナに巡り合えたことで幸せに暮らしてきたことがわかります。猫は「家につく」と言いますが、ここに登場するハチとナナはいずれも悟にしっかりつくことで、お互いに信頼と愛情を持つ存在になっています。

まぁ、話としては作り過ぎというところはありますし、想定通りの結末に向かって話が進行していくところは、ひねりも何もありません。大事にしている猫を何で手放すのかという謎が少しずつ伝わって来て、わかっていても不覚にも心を動かされてしまいます。

ちょっとだけ残念なのは、猫の演技があと少し頑張れていればよかったかなと(作り手の忍耐が足りないということ)・・・相手は動物ですから、あまり贅沢なことは望んではいけませんね。それと福士くんが、ちょっと元気すぎるかなとも思いました。

2025年5月23日金曜日

豆腐の蒲焼


これはYouTubeレシピです。さらに元ネタがあるのかもしれません。

使ったのは木綿豆腐。

まず含まれている水分を減らすため、まな板とまな板の間に挟んで1時間ほどかけて、水を抜きます。

もともとの厚みが3cmほどあったものが、半分くらいになれば良しとします。あとは1cmくらいの短冊に切ったら片栗粉をかけて準備OKです。

フライパンに油をひいて、あとはじっくり焼くだけ。両面がきつね色になったら取り出します。

醤油、みりん、酒、砂糖を同量に煮詰めて、ショウガをほんの少し加えて竹を作ります。豆腐を戻してタレを絡めたら出来上がり。

外はかりかり・パリパリで、中はじわーっとして、楽しい食感です。味は、まぁ想像通りですけど、おつまみにもご飯のおかずにもなりますので、リバートリーに採用します。


2025年5月22日木曜日

中島みゆき / 歌会 Vol.1 (2025)

中島みゆきは、札幌の出身で1953年生まれですから、もう今年73歳。初めて知ったのは、1975年のヤマハのポプコン(Popular Song Contest)ですから、もうデヴュー以来の50年の付き合いということになります。

荒井由実に代表されるニューミュージックや吉田拓郎らのフォークソング全盛の時期に、ニューミュージックのような甘い感じがしない、でも普通のフォークとも何かが違うという、まさに中島みゆきワールドが最初期からありました。大半の歌がかっこつけた色恋沙汰がテーマになりますが、中島みゆきが作る歌はラブ・ソングでも人間の業のような深みが感じられるところが「かっこいい」感じがしたものです。

ですから、中島みゆきの歌では歌詞がすごく大事。一つ一つの言葉を噛み締めるような聴き方をしないともったいないので、そういう意味ではややハードルが高いかもしれません。今のようなサブスク中心で歌が使い捨てのように扱われている時代だからこそ、中島みゆきの存在感はより際立ってきているように思います。

本作はコンサートのライブ映像としては、「歌旅(2007)」、「縁会(2012-13」、「一会(2015-16」に続く4作目です。2020年にラスト・ツアーとして初めた「結果オーライ」がコロナ渦により開始してすぐに中止となり、2024年1月~5月に、東京・東京国際フォーラムと大阪・フェスティバルホールで行われた4年ぶりのコンサートを収録しています。

ステージの袖から颯爽と登場する、凛としたみゆき姐さんのかっこよさは健在。「結果オーライ」ツアーのセットリストの最後だった「はじめまして」からスタートして全19曲が歌われてます。歌声や動きはまったく変わりなく、今回も期待を裏切りません。

ただし、さすがに70代となって、良くも悪くもやや年を取ったなという印象はあります。一番の変化はずっと眼鏡を使用していること。ライブだけのことなら眼鏡はいらないと思うので、おそらく歌詞などを表示するモニターを見るためでしょうか。近眼鏡なのか老眼鏡なのかはわかりませんが、これだけで年齢を感じさせてしまうのはもったいなかったと思います。

中島みゆきの映像作品の嬉しいのは、必ず字幕付きで歌詞を確認できること。何て歌っているのかわからない歌手はたくさんいますが、中島みゆきは比較的よく歌詞を聴きとることができます。それでも、文字として表示できるとその内容のより深い理解が可能になりますし、何よりも本人が歌詞を大事にしていることが伝わってきます。

もう一点、毎回ビデオを購入する上で嬉しいのは、収録曲の重複が少ないということ。誰もが知っている一部のヒット曲は何回か登場しますが、ほとんどの曲は過去の映像作品と被りません。ライブと言うと、やたらとベスト盤的な選曲になりがちですが、中島みゆきの場合は、ライブと言えども一つのコンセプト・アルバム的な選曲がなされているのだろうと思います。

小田和正は声が出なくなっているのは明らかだし、吉田拓郎は引退してしまったし、松任谷由実も新作のペースはかなり落ちました。自分の青春時代に色を付けてくれたアーティストたちも、さすがに年老いてしまったのは当然と言えば当然ですが、中島みゆき姐さんはまだまだいけそうな気がするし、いくことを期待します。今回もあえて「Vol.1」としているからには、Vol.2、Vol.3・・・とやって欲しいですね。

2025年5月21日水曜日

ささささんじゅうどぉ~


昨日は、昼過ぎに気温は・・なんと30度にたっしました。
ひぇ~・・・体感温度は34゚cと出ていますが、恐ろしや恐ろしや。

昨年は、5月の最高気温は26.9゚cで、5月中に30゚なんてことはなかった。30゚を初めて超えたのは、6月14日のことです(それでも!!ですが)。

でも、実は2023年は5月に1日だけ30゚越えの日があったんです。とにかく、やばいことに変わりはない。

沖縄より早く九州は梅雨入りしたというし、もう季節はどうなることやら。米が不作なのは、もう従来の栽培方法が通用しないということなんでしょうか。

2025年5月20日火曜日

犬と私の10の約束 (2008)

「犬の十戒」は、世界中で知られるペットの犬と飼い主の約束のようなもので、この映画での主要なテーマとして用いられています。映画に出てきたのは以下の通り。

1 私の話をがまん強く聞いてくださいね
2 私を信じて 私はいつもあなたの味方です
3 私とたくさん遊んで
4 私にも心があることを忘れないで
5 ケンカはやめようね 本気になったら私が勝っちゃうよ
6 言うことを聞かないときは理由があります
7 あなたには学校もあるし友達もいるよね でも私にはあなたしかいません
8 私が年をとっても仲良くしてください
9 私は十年くらいしか生きられません だから一緒にいる時間を大切にしようね
10 あなたとすごした時間を忘れません 私が死ぬ時 おねがいします そばにいてね

川口晴・澤本嘉光が原作と脚本、「釣りバカ日誌」や「超高速! 参勤交代」の本木克英が監督をしています。

函館に住む斎藤あかり(福田麻由子)は、大学病院勤務医の父、斎藤佑市(豊川悦司)と母芙美子(高島礼子)と三人暮らし。ある日、芙美子が病に倒れますが、ちょうど家に舞い込んできたゴールデンリトリバーの子犬をこっそり病院に連れて行きます。

芙美子は、「犬の十戒」を守ってくれたら飼ってもいいと言ってくれたので、ソックスと名付けました。しかし、芙美子はそれから間もなく亡くなってしまいます。あかりはずっと悲しくて寝込んでいたので、首が動かなくなってしまうのですが、ソックスとの遊びの中で回復するのでした。

しばらくして、佑市が札幌の病院に転勤することになり、当面の間は寮に暮らすためソックスを、幼馴染の星進(佐藤祥太)に預けることになりました。しかし、クラシックギターを学んでいた進はパリに留学することになってしまいます。出発の日に佑市は飛行場にあかりを連れて行きます。しかし、途中で病院からの緊急呼び出しのため、あかりだけがタクシーで向かいましたが、間に合いませんでした。

ソックスは進の家を飛び出し函館に帰ろうとしますが、市電に紛れ込んだところを保護されます。あかりと佑市は連絡を受けてソックスを迎えに行くのです。佑市は大事な家族を傷つけたことを深く後悔し、病院を辞めて函館に戻りクリニックを開業することにしました。

獣医学部の大学生になったあかり(田中麗奈)は、進(加瀬亮)が帰国していて函館でリサイタルを開くことを知り、久しぶりに再会するのでした。卒業後、あかりは旭山動物園に就職し、ソックスとは離れ離れの生活になり、忙しさから次第に家に帰る頻度は減ってしまいました。

そんな時に、あかりは進が交通事故にあい、指が上手く動かせなくなっていることを知ります。あかりは、かつて自分もソックスに助けてもらったことを思い出し、進のところにソックスを連れて行き預けるのでした。しかし、ソックスには残された時間はあまりありませんでした。

犬の十戒は、一度でも犬を飼ったことがある人ならば、身につまされる思いになるものだと思います。自分の場合は、最後の戒だけは守れたのですが、他は十分だったと胸をはる自信がありません。

最後にソックスがどうなるのかは、当然想像できるわけですが、それでも犬の演技はかなり泣かせる上等なものです。映画やドラマに登場する動物たちは、本当によく訓練されていると感心します。

ほぼ真ん中あたりで、あかりと進の配役が変わるのですが、どちらも似た雰囲気なのであまり違和感はありません。ちょい悪な役が多い豊川悦司が、むしろとても「お父さん」らしいところが微笑ましい感じがします。

こういう映画を見て素直に感動できる気持ちは忘れないようにしたいと思いました。